26話 誰かの欲しい子・要らない子
ヴィハーンが串刺しになって動かなくなり、目の前の捕食型はこちらをじっと見つめたまま動かない。
先ほどまで缶の中のおやつ。もとい、檻の中のアンドロイド達を見つめていた頭部は、シャオを見つめていた。
「ヴィー!」
指輪との通信範囲を正確には把握していないシャオは少しでも近づくために駆け寄ろうとするが、ミウナインはシャオの手を掴んだまま離さなかった。
「バカ!早く逃げるのよ!」
そう言うも、周囲にはセキュリティロボットが続々と集まってきており、状況はかなり悪化している。
捕食型か、セキュリティロボット達の群れか。
どちらへ逃げるか悩んでいると、様々なタイプの機種が数体ほど、先ほどまでの追いかけっことは比べ物にならない速さで向かってきた。
かすりでもしたらシャオは一瞬で連れ去られてしまう。そんな勢いに、ミウナインはシャオごと檻の上へ飛び乗る。とっさの判断だったとはいえ、それにより逃げ場がなくなり、まさに絶体絶命になってしまった。
「ア……」
だがロボット達は二人にかまわず、そのまま走り去ってしまった。
どこへ?
走り去っていった先は捕食型の口の中。粉砕機の中に自ら入っていき、そのままバラバラになってしまった。
「なんで……」
シャオがそう疑問に思うも、すぐに判明した。
捕食したロボットの部品をもとに、頭頂部の赤い警報機をドームのように覆う。
そしてそのドームに様々な工具が取り付けられる。唖然と見ていると、ドームに穴が空き、中の警報ランプがちらりと見えた、次の瞬間。
「……! ごめん!」
何かに気が付いたシャオが、ミウナインに体当たりして、一緒に檻の下へと落下した。
「フグャ! 何スンのヨ!」
体当たりされ落とされただけでなく、そのまま下敷きにされたことで文句を言おうと睨みつけると、至近距離で、ものすごい風圧と共に何かが通り過ぎる。
そしてズシン、と長い管が落ちた。いや、管ではない。
「ナニ、アレ?」
「分かんないけど、カウボーイ的なやつかな。投げ縄で捕まえるやつ」
金属のホースのようなものが投げつけられたのだ。金属の爪が付いていて、開閉が可能なようだった。そのままゆっくりと引きずられながらドームの中へ戻っていく。するとまたロボット達が新しく粉砕され部品になる。そうやって調整を繰り返して改造をしているようだった。
それをみて、檻の中の割れた金魚鉢みたいな頭のアンドロイドが二人に話しかけた。
「シャオちゃんだっけか。お前を無傷で捕獲したいんだろうな、ちょっとずつ調整してんのね。プニプニしてら」
わははと笑うアンドロイドに、ミウナインが「笑い事ジャないわヨ」と切れ散らかす。そんな彼女に、その金魚鉢は落ち着けと言わんばかりに手を振る。
「まあまあ、俺としては提案があってだな。その子、あげちゃわない?」
そのアンドロイドが言う提案とはシャオにとって絶対に許容でいきない内容だった
だが、アンドロイドとしては、今まで同じことの繰り返しで耐え続けるしかできなかった日々が、その少女が来たことで確実に変わっている。
かばう事で不利益はあれど、差し出すことで自分達がようやく解放されるかもしれない、という事だった。
「私は嫌だよ」
「お前には聞いてないのよ」
シャオの事は一瞥もせずに切り捨てる。彼にとってはシャオはよそ者で、優先すべきは集落のアンドロイド達であった。
守ろうとしてもこちらがいたずらに消耗するだけ。それに差し出しても、この子どもは丁重に扱われこそすれ、死ぬことはないだろう。自分たちが感じる罪悪感など無い。
「アイツラにあげたトコロデ、ドウセ変わらないワヨ!」
「なら余計に邪魔物じゃないの」
シャオの保護者であるヴィハーンも死んだ今、どのように扱っても報復は来ない。そう言うと、檻の中のアンドロイド達が一斉にシャオを見た。
嫌な風向きに、シャオはせめてもの強がりとして不機嫌そうな顔をして見せるが、不安感でいっぱいで、心臓がバクバクする。
「その子。……要らなくない?」
その決定的な言葉にシャオは、胸がギュウウと締めあげられるような感覚に陥る。身を守るための反論をしなければと思うも、息苦しくて考えも回らず、頭が真っ白になる。
ただ場の解決方法が、悪い方へ決まりかけていることによる焦焦燥感だけが、シャオをその場に立たせていた。




