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19話 ルールと置き土産



 時はさかのぼり、シャオがヴィハーンと離れた後の事。


 通信機との接続が切れる。と、同時にヴィハーンの視界では周囲の至る所で看板や標識が次々と現れた。

 先ほどまで免除されていたルールが、ついにヴィハーンも適用となったのだ。そしてそのうちの一つ。

 

【エリアルール:一切の暴力行為の禁止】


 その項目をチェックし、詳細な内容を確認する。集落のアンドロイド達も同じルールが適用されたのだろう。これで帰れなくなった理由が分かった。

 

「まさか、エリアルールまで免除されていたとはな。肉体との契約はここまで優遇されるのか?」


 

 首を傾けると、頭部があった場所に全長五十センチほどの金属の杭が通過し、遠くの建築物に突き刺さる。

 拘束用の武装の一種だ。あれに当たると機体が強張るように丸まり、一時的に動けなくなる。

 

「……厄介だ」


 大幅に弱体化したとはいえ、自身の機体は戦闘用アンドロイド。この程度の相手なら十分に対応が可能として、邪魔になるシャオを一旦遠ざけたつもりだったが。

 ルールの発動により、先ほどまで許されていた力での解決が、一切できなくなった。

 

「まあ、やりようはある、か。【抵抗の禁止】よりは余程マシだ」


 先ほどまでに破壊したセキュリティロボット達についてはルールの適用前の出来事なので問題ない。

 箱型は運搬用によくある頑丈さだったが、動きがのろい。残りの奴らは動きが早く初手こそ許してしまったが、十分対処は可能なはずだ。


 (直接殴ることが可能ならすぐに終えたのだが。まあ――)


 正面のセキュリティロボットのアイカメラのガラス面に、自身とその背後。腕を構えたロボットが映っているのが見えた。


 背後のロボットの腕が銃に変形したのを確認し即座に横へ跳んだ直後、打ち出された弾丸がヴィハーンの正面にいたロボットを破壊する。


(俺に暴力行為が禁止されているのなら――)


 避けた先でハンマーのような両腕を持つロボットにあえて近づき、振り下ろされ、突き出される腕を何度も避けながら相手の立ち位置を調整する。

 巨大なのこぎりを回転させたロボットに背後から強襲されるも、避けることでハンマーのロボットを破壊してもらい、そののこぎりのロボットは勢いを殺せぬままさらに進路先にいた先ほどの銃のロボットを破壊した。


(――こいつ等にやってもらえばいい)


 周囲には続々とセキュリティロボットが集まっており、それがかえって同士討ちを誘発させやすくなった。だがそれはある程度セキュリティロボットを知っている者にとっては異様な事でもあった。

 いくら思考能力の低い労働ロボットとはいえ、同士討ちが続けば相手も様子見をする。なのにひたすら突撃を繰り返す様はただ不気味だった。そもそも何の違反も犯していない自分たちが襲撃されたことがおかしいのだ。

 そして、先ほどのシャオを確保しようとした動き。方法は分からずとも、その動機にだけは心当たりがあった。


「ここにも来ていたのか。厄介な置き土産だ」

 

 脳裏に浮かぶは、シャオと出会う前に邂逅した一体のヒューマノイド。

 

『ヴィハーン。これは生き残った者たちの使命なのです。希少な戦闘用の機体を持つ、あなたにしか頼めない』


 機体に余分な負荷をかけないために、無駄な力みをしないよう気を付けてはいるが、込みあがる思いから声に忌々し気な感情が乗る。


「レイシン……!」


 吐き捨てるように呟いた名。それはすでにこの手で破壊し、この世には存在しない人物だった。だがそんなものに意識を裂いても無駄でしかない。

 周囲の状況は変わらず、次から次へとやってくる。のちの事を考えると、此処で数を減らしたほうが良いのは明白だ。

 だがいかんせん、想定していたよりも数が多い。


 そろそろ撒くかと思っていたころ、やけに騒がしい声が聞こえてきた。

 数人ほどだろう、やけに耳になじみのある罵声が聞こえる。

 そちらを見ると、こちらから見ても、はっきりと見える程、真っ赤な巨大ロボットがいた。

 それが中身を出すように上下に振っている檻の中には、見覚えのあるアンドロイドたちが檻に詰めこまれている。集落のアンドロイド達だ。

 遠目からだと、瓶の中にこびりついたオイルを、振って出そうとしているかのように見えた。


「あの馬鹿どもが!」


 先ほどまでの忌々しさは飛んでいき、別の感情に支配される。

 目の前のロボットを殴って発散できないことが酷く悔しい。

 状況の把握のためにも一度はあの周辺に行く必要がある。数を十分集めた後、一斉に同士討ちをさせ、混乱の最中、場を離脱したのであった。


 



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