写経:8
ということでつづけております「写経」(≒好きな童話を書き写し&文字数確認)
・グリム「赤ずきん」(植田敏郎訳)
一時期、赤ずきん赤ずきん言ってたので……さすがに、やっておかないといかんかな、と(笑
文字数 3161 文字
改行除く 3109 文字
改行・空白除く 3081 文字
原稿用紙 9 枚
わりとしっかり「節目」ですね。
子ども向けのマイルドVerだと、狼の腹から救出されて「あー、よかった」で終りかもしれませんが、ほんらいは、その後、赤ずきん自身が、狼の腹に石をつめこんで殺害するのですね。
狼=グレートマザーだとすれば、自ら手を汚しての「母殺し」。魔女を焼き殺すグレーテルとかと同じライン上にあるモチーフかもしれません。
となると、なおさら――
物語の最後に、おかーさんのいいつけはまもりましょう、みたいなとってつけた教訓がのせてあったりしますが、深層における眼目は、そうした世間知レベルの話ではないのではないかなー、などと、あらためて思ったりもするわけです。
・新見南吉「狐」
新見南吉といえば有名なのは「ごんぎつね」「手袋を買いに」「おじいさんのランプ」……
それらにくらべればマイナーかもですが、個人的にはこちらのほうが好き。
といっても、さいごの母子の会話はわりとどうでもいいというか、そこに主眼があると考えると、あまりおもしろくありませんが……
とちゅうの子どもたちの夜道の場面。月があかるい祭りの夜、わずかな暗示から、迷信的な不安にとりつかれる子どもたちの心理のあやが、とても印象的。
頭で考えてひねくりだしたような「母の愛」より、こうした繊細な心理の描出そのものを賞玩すべき作品かな……と個人的には思うわけです。
(ある意味、散文詩に近い味わい方かもですが……)
文字数 6595 文字
改行除く 6448 文字
改行・空白除く 6363 文字
原稿用紙 20 枚
・安房直子「沼のほとり」
文字数 5853 文字
改行除く 5721 文字
改行・空白除く 5636 文字
原稿用紙 18 枚
黄昏は逢魔の時間。夕方のかくれんぼは危険。というのは、民俗学方面では有名な口伝え。そのみごとな形象化。
子供を蛍に変えて袋に入れてしまう、というのですから、つまり文字通りの「おふくろ」。このおばあさんも、ホレおばさんのたぐいの、恐怖のグレートマザーの系統でしょう。
しかし、主人公に対しては妙に好意的で、お茶にさそったり、環境破壊で追い詰められている境涯を語ったり……たんなる悪役にとどまらないキャラ性のもち主でもあり、そういう意味では、さきに「写経」した「野の音」の泰山木のおばあさんに、ちょっと似ているかもしれません?
そういえば、グレートマザーにとらえられた子どもたちを救出する本作も、「野の音」と同様に、ヒーローズジャーニーとして見ることができるかもしれませんね。
救出に失敗してグレートマザーにのみこまれた「野の音」とはちがって、本作の京子ちゃんは救出に成功、勝利しますけどね……。
だから、ハッピーエンドのはずなのですが……ほっとすると同時に、何かおばあさんのほうにも未練が残るような、ふしぎな読後感。
抑圧されたものは本来、欲望の対象だった……からこそ、やはり、夕方のかくれんぼは危険なのかもしれません?




