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童話についてアレコレ  作者: 七瀬みる


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55/65

写経:8

 ということでつづけております「写経」(≒好きな童話を書き写し&文字数確認)



・グリム「赤ずきん」(植田敏郎訳)


 一時期、赤ずきん赤ずきん言ってたので……さすがに、やっておかないといかんかな、と(笑


 文字数 3161 文字

 改行除く 3109 文字

 改行・空白除く 3081 文字

 原稿用紙 9 枚


 わりとしっかり「節目」ですね。

 子ども向けのマイルドVerだと、狼の腹から救出されて「あー、よかった」で終りかもしれませんが、ほんらいは、その後、赤ずきん自身が、狼の腹に石をつめこんで殺害するのですね。

 狼=グレートマザーだとすれば、自ら手を汚しての「母殺し」。魔女を焼き殺すグレーテルとかと同じライン上にあるモチーフかもしれません。

 となると、なおさら――

 物語の最後に、おかーさんのいいつけはまもりましょう、みたいなとってつけた教訓がのせてあったりしますが、深層における眼目は、そうした世間知レベルの話ではないのではないかなー、などと、あらためて思ったりもするわけです。



・新見南吉「狐」


 新見南吉といえば有名なのは「ごんぎつね」「手袋を買いに」「おじいさんのランプ」……

 それらにくらべればマイナーかもですが、個人的にはこちらのほうが好き。

 といっても、さいごの母子の会話はわりとどうでもいいというか、そこに主眼があると考えると、あまりおもしろくありませんが……

 とちゅうの子どもたちの夜道の場面。月があかるい祭りの夜、わずかな暗示から、迷信的な不安にとりつかれる子どもたちの心理のあやが、とても印象的。

 頭で考えてひねくりだしたような「母の愛」より、こうした繊細な心理の描出そのものを賞玩すべき作品かな……と個人的には思うわけです。

(ある意味、散文詩に近い味わい方かもですが……)


 文字数 6595 文字

 改行除く 6448 文字

 改行・空白除く 6363 文字

 原稿用紙 20 枚



・安房直子「沼のほとり」


 文字数 5853 文字

 改行除く 5721 文字

 改行・空白除く 5636 文字

 原稿用紙 18 枚


 黄昏は逢魔の時間。夕方のかくれんぼは危険。というのは、民俗学方面では有名な口伝え。そのみごとな形象化。

 子供を蛍に変えて袋に入れてしまう、というのですから、つまり文字通りの「おふくろ」。このおばあさんも、ホレおばさんのたぐいの、恐怖のグレートマザーの系統でしょう。

 しかし、主人公に対しては妙に好意的で、お茶にさそったり、環境破壊で追い詰められている境涯を語ったり……たんなる悪役にとどまらないキャラ性のもち主でもあり、そういう意味では、さきに「写経」した「野の音」の泰山木のおばあさんに、ちょっと似ているかもしれません?

 そういえば、グレートマザーにとらえられた子どもたちを救出する本作も、「野の音」と同様に、ヒーローズジャーニーとして見ることができるかもしれませんね。

 救出に失敗してグレートマザーにのみこまれた「野の音」とはちがって、本作の京子ちゃんは救出に成功、勝利しますけどね……。

 だから、ハッピーエンドのはずなのですが……ほっとすると同時に、何かおばあさんのほうにも未練が残るような、ふしぎな読後感。

 抑圧されたものは本来、欲望の対象だった……からこそ、やはり、夕方のかくれんぼは危険なのかもしれません?


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