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第四章 ⑥

「同じ一年が相手かぁ」

授業の合間、昼食のための休み時間。とうにご飯は食べ終えて外に出た二人は陽だまりのベンチに腰を下ろしていた。届いたメールを見返しながら、ルーミックが少し残念そうにつぶやく。本音を言えば上級生とやりたかったところだ。

「マリスさんね……」

「知ってるのか?」

「一応ね。彼女も中等部からの進学だし。実力は一年の中でも平均くらいじゃないかしら。……だからって気を抜いてると負けるわよ?」

「わかってるよ」

セフィアにアンドレ。調子に乗って油断や加減が出来るほど自分が強くないことはこの半月で嫌というほど叩き込まれた。

「でも、彼女のビデオは見ないんでしょ?」

フォーリティナでは在学中の模擬戦やランク戦などの公式の試合は映像で記録されており、デバイスを用いていつでも誰でも見ることが出来る。今回の相手が中等部の頃からいたということは、その頃の試合の映像が残っているということ。

対戦相手の能力や戦い方を事前に知っておけば有利になることは言うまでもない。だが、ルーミックはあえてそれを見ないことを選んだ。

「自分だけ相手のことを知ってるのはフェアじゃないだろ?」

決して相手を侮っているわけではなくて、あくまで対等な条件で戦うために。その考えにはエイリスも賛成だし、彼女自身そちら側の人間だ。しかし、少し前から彼女には思っていたことがあって。

「勝つために今できることがあるのに、やらずに挑んで、それを全力だって言えるのかしら……」

真剣に悩んでいる言うほどではない、なんとなくの引っ掛かり。

正々堂々とフェアに。一見かっこよく見えるかもしれない。だが、実際は? 

口では何と言おうと、相手を舐めてしまっているのでは?

少しでも取っ掛かりがあって、自分がアドバンテージを作る術があるのにそれを使わないで、果たして手を尽くしたといえるのだろうか。

エイリスの言葉に短い沈黙。やや間が空いて、ルーミックが頷いた。

「たしかにエイリスの言ってることも一理あるかもな。でも――」

それが彼の迷いとなることはなかった。

「でも、やっぱり、俺は見ない。本当に強いやつって言うのはどんな相手でも真っ向からねじ伏せられる力を持っている人のことだと思うから」

いつも相手の情報が手に入るとは限らない。むしろエイリスがさらわれた時のように、何もわからないことの方が多いはずだ。それに、と言葉が続く。

「俺がフェアであろうとするのはエイリスみたいな信念があるからじゃなくて、俺自身のためだから。自分が強くなるために余分なものを取っ払って、それこそ真っ向から相手をねじ伏せるためにそうしてるだけなんだ」

告げる声にははっきりとした意志がある。

納得したようなしていないような。エイリスが考えているのとはまた違う、一つの在り方。自分で言っておいてなんだが、結局答えなんて何でもいいのかもしれない。思わず笑みがこぼれた。

試合まで、あと三日。

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