『幻影』、報告
「失礼しますよ」
ノックの後に扉を開ければ、何故か床でストレッチをしている人影が二つ。
「……何してんの」
「あ、浅宮じゃーん。おひさー」
「そんなに久しぶりでもないよ。何してんの」
「体がなまってしょうがないからストレッチ」
「安静にしてろ怪我人」
さて、場所は病院。
先日、ゲームセンターでの小競り合いで入院させられてしまっている『鏡像』斉谷五咲と『踊子』海原彩加。
その二人に、今回の全面戦争の報告をするために訪ねてきたわけであるが。
「おとなしくしてないだろうとは思ってたけど、まさかすぎて」
「いーじゃんか、別にここで突然手合せとかしてるわけじゃあるまいしぃ」
「それは始まった途端に看護師さんたちによって止められるやつ」
溜息をつきながら、適当な椅子に腰を下ろす。
二人は目を見合わせると、それぞれのそのそとベッドに戻ってきた。
ぎし、ベッドが軋んだ瞬間に飛んできた衝撃波は、すぐさま持っていたバインダーで防ぐ。
油断ならない。
「で、浅宮がお見舞い来るとか珍しいじゃん、何かあったの?」
「この間、たぶん会長から全面戦争云々の話があったと思うんだけど」
「あっ、聞いた聞いた! 日取り決まったの? メンバー決まったの?」
「終わりました」
「もう!?」
がたっ、という音が飛び、壁が一部へこんだ。
「うわー、マジかよ何でだよー、私が退院するまで待っとけよー!」
「何でそうなったの」
「一昨日なんだけどね」
それから、今回の顛末を説明。
二高が三高に奇襲を仕掛けたその日に、一高も二高に奇襲を仕掛け。
結果的に三高に精鋭たちが集合する事態となり。
そこに戦えるほぼすべての人員が集合し、そのままなだれ込むように戦争へ。
「……行きたかった」
「行きたかったー!」
しゅんとする海原さんと、悔しがる斉谷さん。
この二人というのは、何だかんだと戦うことがお好きなようだ。
「浅宮も参加したんだよね? どうだった? 楽しかった?」
「私はあまり楽しんでいる余裕などなかったよ……」
久々に会った親戚こと千里にーちゃんと戦って、三高に移動して、幼馴染たちの殴り合いを見ようとしている間に、人が集まっていて。
本当に、何が何だかわからない間に、全てが始まって終わったものだから。
「でも、会長は強い子と戦えて楽しかったみたい」
「え、会長が?」
「誰と戦ったの」
「一高の『極神』」
「マジかぁぁ見たかったぁぁあ!」
だんだんっ、悔しそうにベッドを叩く斉谷さん。
海原さんはその様子を見て、小さく溜息をついた。
「どっちが勝ったの」
「『極神』かな。最終的にはお互い貧血で倒れたんだけど、会長の方が重症だったみたい」
「……会長が勝てない相手なら、私たちに勝てるはずないわけだ」
「あぁー、なんか悔しい、えらく悔しい!」
なんだか悔しい思いを植え付けに来る結果になってしまったようだけど。
とりあえず、二人とも元気そうなんでよしとしよう。




