『審判』、起床
「……あれ」
意識を取り戻して最初に見えたのは、見たことのない天井だった。
記憶が多少、混濁している。
俺はどこにいるんだっけ。
「よぉ、会長。お目覚めかいな」
「皇牙」
視界を巡らせると、どうやら病院のよう。
すぐそばの椅子に座っていた皇牙は、俺の顔を見るや、楽しそうに笑った。
「えらい目に遭ったなぁ」
「何があったんだっけ」
「三高で『極神』と戦って、最終的にはお互い貧血でぶっ倒れてんで」
「……あー……思い出した」
そう。『極神』だ。
屋上で戦っている間に、お互い血を流しすぎて。
『極神』が倒れたところは見ていないから、俺が先に倒れたのか。
「『極神』は?」
「入院まではいかんかったみたいやな。さっき帰っていくの見えたで」
「マジかぁ」
どうやら、完全に俺が負けたらしい。
『最強』がいない中で、まさか後輩女子にそんな負け方をするとは、思いもしなかった。
「会長が『極神』と戦ってた辺りでな」
「ん」
「見たやろうと思うけど、そのまま三高で完全に全面戦争始まったもんでな」
「ああ……人がいっぱい来たなとは、思った」
『極神』と戦っているさなかだ。
視界の端で、見るたびに人が増えていくのを見た。
思わず、笑ってしまうほどに。
「まあ、そんなこと、気にしてる場合でもなかったけど」
そう言って、首を動かして窓の方を見る。
いい天気だ。今日も、奇襲日和だったことだろう。
「強かった?」
「ん?」
「『極神』」
「……ああ」
思い出す。
意識を失う前に相対した、『極神』という存在を。
どんなに血を流しても、どんなに疲弊しても、膝をつかない強さを。
「人を超えた存在。神の領域を、恐れ多くも極めた存在」
「……何、それ」
「『極神』の由来や。えらい大仰なもんやろ」
「確かに。……まあ、でも」
確かに俺の前に『立ちはだかっていた』、あの姿。
そうか。
あれが、『極神』か。
「彼女には、そのくらいの大仰さがちょうどいいんじゃないかな」
「ほんまかいな。ただの小柄な女子やったやんけ」
「それを言ったら和樹ちゃんだってただの小柄な女子だよ」
「あの子はおもろいからええねん」
けらけらと笑う皇牙の声につられて、俺も笑う。
「で、どやった?」
「んー?」
「楽しかったんか?」
「……うん」
楽しかった。
非常に楽しかった。
敗因が貧血であることが惜しくてたまらないくらい、楽しかった。
「今までで一番、楽しかった」
機会があれば、また彼女と戦ってみたい。
次の機会にはぜひ、槍を使っていただいて、あと自我を保っていただいて。
もっと、話をしてみたいな。




