『怪力』、笑う
「その異名は気に入ってないんですー」
翌日のこと。
二階堂高校の生徒会室を訪ねてきた女子生徒は、むくれた顔でそう言った。
「第一、か弱い女の子に『怪力』ってどうなんですかー? つけたやつ連れてきやがってくださいよー」
「敬語なのに口悪っ」
『怪力』、神川和樹。
彼女が『怪力』と呼ばれるのは、その言葉の通り彼女が怪力である故なのだが、本人は自分が怪力であるとは思っていない。例え建設中のビルから落ちてきた鉄筋を片手で受け止めたとしても、それは彼女にとって『普通』なのだ。
「えっと、神川さん」
「やだ、会長。和樹チャンって呼んでくださいー★」
「……和樹チャン」
「何ですかー?」
「君を『怪力』と呼んだ人物については、俺も知らないよ」
「何だー」
つまらなそうに足をプラプラさせながら、和樹は天井に視線を向ける。
「それで、和樹チャン。君を呼んだのは、一高と三高との全面戦争にぜひ参加してほしいからなんだけど」
「えぇー……だって私って普通の女子ですもん。戦えませんもん」
「いやいや、そんな謙遜しなくても。皇牙のお墨付きなんだよ、君」
「皇牙先輩の墨とかいらないですー」
つーん。
そんな効果音がつきそうな態度の和樹に、飛鳥は困ったように頭を掻く。
「参ったな……『極神』なんていう、よくわからない子まで出てくるかもしれないのに、これじゃあ」
「『極神』?」
ぴくり、和樹がわずかに反応を示す。
「『極神』が来るんですか?」
「かもしれない、の範囲を出ないけどね。出てくる可能性はあるよ」
「ふうん」
「? 和樹チャン?」
しばらく何かしら考え込んでいた和樹は、やがてむくれた顔のまま、口を開いた。
「『極神』は、今の高校一年の間じゃあ、『最強』に次ぐ有名人ですよー」
「え、そうなの」
「『極神』が出てくるなら、がぜん興味がわいてきましたー」
ちらり、飛鳥の方を見た和樹は、ようやく、楽しそうに笑って見せた。
「詳しい話、聞かせてくださいよ?」




