『審判』、聞く
「そういうわけだから、あんまり期待しないでね。勝てなくても怒らないでね」
「いや、俺に怒る筋合いなんてないですよ」
病院からの帰り道。
困ったような笑顔を浮かべたまま、飛鳥と芹沢は言葉を交わす。
「とはいえ、何もせずに負けるつもりは毛頭ないからさ。一年生の中に強い子がいないか探してみようと思うんだよ」
「あっ、俺も友達に心当たりないか聞いてみます!」
「よろしくね。もし誰か思い当たる子がいたら教えて」
「わかりました! では、俺はここで!」
深々と頭を下げてから、角を曲がっていく芹沢。
その後ろ姿をしばらく見送ってから、飛鳥は小さく溜息をついた。
「さて、参ったな」
「ほんまにな。えらいこっちゃで」
「うわっ、いつの間に横にいたの」
「あっはは、いつもながらええリアクションやなぁ、生徒会長!」
ゲラゲラと笑うその男に、飛鳥はガシガシと頭を掻く。
西崎皇牙。戦えはしないが、漫才に対する愛は誰にも負けないと自負している……などと誇らしげに語る、飛鳥の同級生である。
「んで、なんやっけ。全面戦争?」
「そう。皇牙も行きたい?」
「行くわけあらへんやろ、俺まったく戦われへんもん」
「知ってる」
歩き出す飛鳥の後ろに続いて、皇牙も歩き出す。
「あーあ、誰かもう一人くらい、俺レベルで戦える子がいたらいいんだけどなぁ」
「お? 心当たりならあるで」
「えっ、本当に!?」
「俺の情報網なめんなや?」
にかっ、と楽しそうに笑う皇牙。
飛鳥は一瞬、皇牙の後ろから後光が差しているような錯覚を覚えた。
「ははぁ~……皇牙様」
「あかん、会長がご乱心や」
「それで、誰? どんな子? なんていう子?」
「ほんで一気に聞くんかい、ちょっと落ち着きや」
ポンポンと飛鳥の肩を叩いてから、皇牙は携帯を取り出す。
「確かこの間、連絡先交換を、と、と、おったおった。この子やこの子」
「神川和樹……男の子?」
「いんや、女の子や」
「え、嘘」
「いやいや、ほんまほんま」
そう言ってへらりと笑いながら、皇牙は言った。
「『怪力』いうて、呼ばれてるらしいで」




