『発端』、再考
「さて」
全面戦争の収束から数日たった、駅そばの喫茶店。
テーブル席に収まった三人は、顔を突き合わせて睨み合う。
「今回の全面戦争に関しては、一高の勝ちだ。認めよう」
「つまり坂凪最強は一高というわけで」
「それは聞き捨てならん」
「ああ?」
一高・三崎拓史。
二高・芹沢悠馬。
三高・桧山颯太。
各校の『発端』と呼ばれるその三人は、しばらく睨み合った後、三人同時にコーヒーをすすった。
「あんな不意打ちみたいな勝負の付き方、納得できねーに決まってんだろ」
「そうだぞ。しかもこっちは敷地内めちゃくちゃになってんだぞ、どう落とし前つけてくれんだコラ」
「いや、その件は理事長同士で話し合ってちゃんとなったじゃねーか……」
ことん。
コーヒーカップを置く音が三つ、綺麗に重なる。
「その前にちょっと確認してーんだけどいい?」
「はい、二高」
「一高お前、何で髪黒くなってんの?」
「あ、これ? いや、弟たちのためにも少しは落ち着こうかなと……」
「へー、弟いんの? いくつ?」
「小六、小三、小一」
「三人! すげー、兄弟いっぱいいんの楽しそうだな!」
「結構大変だけどなー」
世間話にシフトチェンジしてしまった。
「いや、その話は今いいんだよ、俺たちが今日集まったのは……」
「そういや三高お前」
「んだよ、一高」
「全面戦争の時、戦う振りして逃げ回ってたろ」
「ぎくり。いや、んなことねーよ? ちゃんと戦ってたよ?」
「なんで今『ぎくり』って言ったのお前」
「過ぎたことはどうでもいいんだよ! ほら、次の戦い! 再戦について!」
バシバシ、桧山がテーブルに広げた紙を叩く。
三崎と芹沢はそれぞれその紙に視線を落としてから、顔を見合わせた。
「あ、はいっ!」
「はい、二高」
「次は一高で何かすればいいと思う」
「はぁあ? いやいや、よく考えろよ? 二年前の大乱闘って一高でやったんだろ?」
「じゃあ順番的に場所は二高か」
「ああっ」
桧山がペンを持ち、紙にメモを取る。
『場所:二高』。
「何でだよ! 長い歴史を振り返れお前ら!」
「何かあった?」
「六年前、当時の三年が好奇心で開催したトーナメントバトル! 十年前、当時の二年の小競り合いが原因で起きた五対五のバトルも! 会場、二高だった!」
「少なめじゃね?」
「じゃあやっぱり次の会場は二高で決定」
『場所:二高』のメモをグルグルと丸で囲む桧山。
「あとは何で戦うかだなー」
「あっ、はい三高!」
「何だ、一高」
「二高が会場ならバイクレースとかでよくね?」
「どういう意味!?」
「あー、あそこグラウンド広いしな」
「いやダメだろ!落ち着こうぜお前ら!」
この後、何度か『発端』三名による話し合いは繰り返されることになる。




