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勇者と盗賊の王子退治5

 あと二話ですね!…多分。

「……なんでまだいるんだ?」


「えっ?」


 茫然と問いかけた王子に対し、目の前に当り前のように突っ立っているまるで戦隊もののような色彩のアニマルたちは、なんで?と言いたげに首を傾げた。残念ながら戦隊には欠かせないブルーは先ほど早退してしまっているが、レッド、グリーン、ブラック、ピンクに(蛍光)イエローとメジャーどころはそろっている。

 ちなみに、発光イエローなヌーは、とっくに元の蛍光イエローのヌーに戻っている。


「え?だって今の、逃走用の目潰しじゃ……?」

「…え?目潰し…って、あー……ごめん。なんか勘違いさせちゃったか?そういう意図はなかったんだけど…」


 思ったことがそのまま声に出てしまっていた王子は、大変申し訳なさそうに緑のタヌキに詫びられた。その他のアニマルたちも、いたたまれないような様子で、王子から微妙に顔を逸らしている。

 悲壮な顔だった。自分たちが勘違いさせたせいで、なにを思ったのか分からないが、一人の少年が何か覚悟を決めたのを、完璧に台無しにしたのだと、悟らずにはいられなかった。


「あ、あの、大丈夫ですよ?目潰しではないだけで、一応これもちゃんと逃走用の小細工というか、そんな感じですから」

 焦ったヌーは慌てて王子をフォローしたが、その話の内容は全く持って『大丈夫』ではなかった。

 色々と打ちのめされた王子は、その場にがっくりと膝をついてしまった。


「……ちょっと、これどうしましょうウサギさん…」

「いや、俺に振られても困るんだが、タヌキさん」

「…とんずらしましょう、頭にぼっちゃん。ヤマさんがこれ以上本気にならないうちに…」

 カモノハシは、ヤマアラシの王子を見つめるその視線に何か非常に危険なものを感じたようだ。ウサギの腕を掴む力が本気である。彼らは、自分たちの国の未来が、綱渡り状態であり、なおかつ強風にビュウビュウ吹かれている危険な状態であったと思いだした。


「カモさん、幼馴染的にあれはヤバそうですか?」

「かなり」

 ウサギは思わず敬語で聞いたが、ヤマさんの長年の被害者(善き理解者)カモノハシからの返事は短く、言い知れぬ戦慄を覚えた。


「そうだな。なんだあのザマは。情けなさすぎる。性根を入れ替えないといけないね?」

「ちょ、地が出てる地が出てるからっ。ちょっと落ち着こうかキツネさん」

「……はっ」

 一方、赤いキツネからは怒りのオーラが立ち上っていた。タヌキが必死に宥めてはいるが、まったく聞く耳を待たない。他のアニマルと同様に無表情だが、その全身から滲み出る気迫はもはや視認できないのが不思議なほどだった。


「タヌキさん、キツネさんはヤバそうですか?」

「もう無理」

 ビビりまくったヌーが緑のタヌキに聞くが、返ってきた返事は手遅れだった。


 色々と想定外のことで疲労を溜めつつ、ピンクのウサギは撤収を決めた。元々仕事はとっくに終わっていたのだ。部屋の隅の方では、のんびりお茶をしている者までいる。ハシビロコウとか、コモドドラゴンとか、アルマジロとかが。

 ウサギの視線に気づいたコモドドラゴンとかは、手まで振ってきた。余裕だな!?と思いつつ、手を振りかえしているあたりウサギも大物である。


「タヌキさん、頼むわ」

「はいはい了解ですよっと」


 タヌキの指示によって、カラフルすぎるアニマルは、一部を除いて一か所に集まった。無表情でリアルな動物たちが固まってじっとしているのはなかなかにホラーな光景なのだが、これだけはわかる。

 彼らは、非常に、わくわくしていた。


 赤いキツネが、仲間たちの期待を一身に背負い、恥ずかしさのあまり立ち直れない王子の前に、ゆっくりと膝をつく。それに気付いた王子がのろのろと顔を上げ、赤いキツネと見つめ合い―――――――――。



「というか、そもそも!どうして、こんな穴だらけの防犯対策なんだ?」


 説教を始めた。

 まったくもって、正論であった。


「本来、王族の暮らす場所に賊が入り込めること自体がおかしいのだ!魔術への対策はしてあるのか?ここの警備はどうなっている!?お前は死にたいのかっ!」

 今回は、盗賊側に灰芽という裏技的存在がいたので侵入が容易かったのだが、まあ、確かに普通にあり得ない事態ではある。一応ちゃんとそれなりの対策はしてあったのだが……。


「そうは言うがな!普通王族の生活スペースに入ってこようとするアホはいないだろう!?」

 王子は存在を知らなかったらしい。しかも、方向性を遙か彼方にふっ飛ばした言い訳を喚いている。


「…ほーう?お前は、王族ゆえに暗殺とかにさらされるということも知らんのか?」

「単なる王族ならそういうこともあるだろう。だが、私は父上の唯一の息子だ。次の国王を害して何の得がある?返り討ちにされて終わりだろう」

「……っ」


 周りで、固唾を呑んでそのやり取りを見ていたアニマルたちは思った。

(え、なにこのアホの子……?)


 王子は黙り込んだキツネを見て、なにを勘違いしたのか勝ち誇った顔をしているが、この場にいる王子以外の全員が、キツネの気持ちを理解していた。

 ああ、言葉も出ないほど怒っているんだな……と。

 

 ついでに、緑のタヌキはもう一つ思っていた。

 王子がこれだけの人数の前でアホの子披露しちゃったから、恥ずかしいのだろうとも。


 赤いキツネが赤いのは、怒りゆえなのか、羞恥ゆえなのか、はたまたそれとも両方か。


「……おバカもいい加減にしなさいっ!いいか、王子がお前一人ならな、お前をしいして新たな子どもを作らせればいいだけなんだよ!王子なんて存在の代わりはいくらでも作れんだよ甘ったれんな!」

「…な、なにを…!」

 ついに爆発したキツネに、気押されながらも犯行をあきらめない王子。そして呆れる周囲のアニマル。


「つか、馬鹿なの?馬鹿だよね、ごめんわかってたけど馬鹿だって。あのさ、魔術で近寄られたらあんたすぐ死ぬでしょ。なんで鍛えてないの。訓練してんの?してないよね、ああごめんね。知ってたわ」

 怒涛の正論及び真実に、王子は反論できない。涙目になりながら、正座でキツネに説教されている。


 キツネによる王子の糾弾は、屋敷の警備にとどまらず、はては仕事のやり方、心持ち、生活態度にまで言及されている。終わらないプライバシー暴露にすでに涙の止まらない王子。若干引く周囲。


「大体、あなたは……」

「はい、すいません…」


 終わらない説教。現在、過去に王子の書いたラブレターの添削、もとい駄目出しに突入している。


「大体なんだ、これは?女を褒めるのに、『巨大合体ロボが如きその力、封印するは愚か故、我がもとに来て存分に役に立て』?どこの中二病患者だお前は。何様のつもりだ?」

「私はこの」

「王子様とか、何の価値もねえもん引っ張ってきて威張ったら王子じゃなくてお前王女にすっぞ」


 どうやってそうなるのかは分からなかったが、キツネが本気だということだけはわかった。できればこれからも男として生きて行きたかった王子は、じゃあ俺様とか一瞬言おうと思わなくもなかったが、賢明にも実行に移すことはなかった。

 そして、その後に続く壮大なポエムを聞いてしまったアニマルたちは、色々な意味で腹筋及び表情筋と必死で戦うはめになったのだ。


 説教が終わるころには、王子は少なくない同情を集めていた。だが、しかし。


 復讐は仕込みを使い終わるまでは終わらないのだ。

 イエローとかレッドとか打ち込んだせいで、某ポケモンの漫画熱に再罹患しました。


 ちょっとイエロー補充してきます。


 なので、盗賊さんの頑張る話は明後日になるかもです。

 なるべく早く終わらせるつもりですが……。

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