表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

勇者と盗賊の王子退治4

 ヤマアラシに慰められている王子を見ながら、アニマルな盗賊たちのうち良心をもつ者は、これから王子に降りかかるお仕事の仕上げを思って、ほんの少し同情した。


 自らの半生を語り終えた青猫は、哀しみがぶり返してきたようだったので、さりげなく荷物と一緒に緑のタヌキが転移させている。桃色……とまではいかないが、微妙に薄桃色の雰囲気に包まれている王子は気づかない。さっさと猫を退場させたタヌキは、少し引きながらもそんな王子を見守っている仲間に声をかけた。


「赤いキツネさん、王子さん流されてませんか?」

「そうみたいだね、緑のタヌキさん…。なんて情けない。一国の王子ともあろうものが……」


「赤いキツネさんよ、ありゃあどうしようもねえってもんだ。なんせ、相手はプロだからな…」

 ピンクのウサギが、がっくりきているキツネを気遣う。蛍光イエローなヌ―と、真っ黒なカモノハシが静かに頷く。


 あの雰囲気作りと、人の心の隙間に入っていき、よくわからない感動を与える手際は、まったくもって見事としか言いようがなかった。


 そんなスペシャリストなヤマアラシさんが、ちらりと集まっているアニマルたちに視線を向けた。無意味にぞっとして鳥肌の立った彼らは、この時心に決めた。


(ヤマさんにだけは、逆らわない)


 こうしてヤマさんは、新たな信者を手に入れたのだった。


「……えっと、ウサギさん?仕事も終わったし、とんずらします?」

 このままでは、王子がとんでもないものまでヤマさんに奪われかねない気がして、緑のタヌキはピンクのウサギに提案した。まさしく同じ危惧を抱いていたウサギは、全力で同意した。あとでヤマアラシに睨まれそうであるが、下手をしてこの国の未来のトップが変な道に走ってしまったら、自分たちの将来が不安すぎる。

 というか、そんなんなったら責任とれない。なにより、王子に身近な人物が危険すぎる。誰とは言わないが、今は仲間で恩人なのだ。そんな恩を仇で返す真似ができるわけがない。


 そこで、やっと王子の頭が職務放棄から戻ってきた。つまり、普通に働きだし、現状を認識し始めた。


「……ま、待て。お前ら、これは犯罪……!」

 しかし、言葉がスラスラ出てくるほどには回復していない模様。それまでに受けたダメージが大きすぎたようだ。


「さて、そろそろ拙僧の出番ですかな?」

 おもむろにそう言った蛍光イエローなヌーが、ピカピカと輝き始める。その姿は、蛍光イエローではなく、まさしく発光イエローなヌーだった。発光イエローなヌーは、厳かにその輝く蹄を王子に向ける。


「なっ……!?」


 それは一瞬の出来事のようでもあったが、なぜかとてもゆっくりとして見えた。

 発光するヌーの蹄から、その光が束ねられ、まるでホースから水が勢いよく噴き出すように王子に降り注ぐ。王子はあまりの眩しさに、思わず目を閉じた。


 そして、すぐにそのことを後悔した。


(これは目潰しか!?しまった、逃げられる!)

 たとえ今目を開けたとしても、この眩しさではなにも見ることはできないだろう。目を開けたときには、部屋からなにもかもなくなっているだろうことは想像するまでもなかった。


(くそっ!あの時避けるか、初めに人を呼んでいれば!!)

 王子は悔しかった。こうも簡単に手玉に取られたことが。それもわけのわからないメルヘン世界の動物なんかに!

 王子のプライドは、夢の中の登場人物(と、まだ思い込んでいる)に対しても、絶好調で発揮されるようだった。


 やがて、徐々に光が弱まっていき、王子は覚悟を持って目を開けた。自分の未熟さを噛みしめ、しっかりと向き合うために。

 そして、視界を取り戻した彼の眼に映ったものは。



 自らのストレートな予想を、ホームランのように場外にかっとばしてくれる程の、信じがたい現実であった。

あと二話。

 長引いても三話で決着させます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ