↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青藍の魔術師は陰に咲く  作者: RIM


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

2.初めての学園生活

 アルカナ学園は王都で最も格式高く、伝統ある魔術の学園である。


 現在流通している人工的に作られた魔石の開発も、この学園の卒業生により作られたという話であり、魔術の基礎から応用まで幅広く学ぶことが出来る。


 魔術というのは体内にあるオドが多い程有利であると思われがちだが、そうではない。


 簡単に言えば、バランスが大切なのだ。




 魔力量が多くても暴発してしまえば魔術にはならない。


 そのため、魔力量が多くなるほど強く制御しなければならない。


 魔力は人によって量と濃度が違い、体内のバランスもそれぞれ違う。




 入学式での校長曰く「魔力の強い奴が偉いのだと驕るな。魔力が強くても暴発しては命に関わる。魔力、身体能力、思考力を総合的にコントロールする力を磨きなさい」とのことで、生徒を前にしてその短い言葉を残して降壇された。


 この校長がなかなかしっかりとした方針をお持ちなようで、学園内での格差はそれほど気になりはしなかった。


 それも、魔術の点だけであればの話ではあったが。




 式が終わり、エルが自分のクラスへ向かう途中、女子たちの黄色い声が廊下に響いていた。


 それに驚いたエルは思わず両耳を塞いでその元を辿る。


 一体何なんだと思った先にあるのは、頭一つ分高い位置にある見覚えのある顔と知らない顔が女子に囲まれている姿。


 その二人が並んだ姿は確かに美しい絵画のようだったが、エルからしたらそこにその人がいることは都合が悪い。


 ここはエルの行くクラスに繋がる廊下なのである。




 ちなみにエルは最近王都へとやって来たばかりの為、この辺で見覚えのある顔なんてそうありはしないが、どう見てもあれは昨日見たばかりの顔だ。


 顔の格差はやはりどこにでもあるようだと思いつつ背を向けようとした所に、「待て、エル!」との声がかけられた。




(本っ気でやめてほしい、今話しかけられたらその視線で蜂の巣にされるじゃないか)


 早足で逃げようとしたところで叶わず、エルは肩にその手を置かれてしまった。


 手を置いたのはその声の主であるファルしかいない。




「紹介させてくれ」


「紹介……ですか?」




(あー。終わった、私の学園生活)


 睨みつけられるような視線が二人の後方から注がれる中、エルはそれでも態度に出さぬよう努めた。


 正直エルは、さっさと話を終わらせたい気持ちの方に傾いている。逃がしてほしい。


 肩に置かれた手をサッと振り落とすと、彼の隣にいる人が物珍しいものを見るように眉を上げる。


 昨日図書館で会った男……ファルは彼を示し、エルに顔を向ける。




「こちらはアルウィン。私の……幼馴染だろうか?」




 普段とは違う一人称に疑問を持ちながらも、エルは紹介された男を見上げると、そのまぶしさに目が眩んだ。


 そこにいるのは長い金髪をまとめた柔らかい笑みを浮かべた美男子だったのだ。




「そこは疑問形なのかな? ファル」


「人に紹介することがなかったからな」


「アルウィン・フロストと申します。以後お見知りおきを。エルさん」


「……エル・ガーデンです。よろしくお願いいたします」


「それで私はファル・アリゼ。よろしくエル」


「…………」




 正直、心の中ではよろしくしたくはないと思いつつも、エルは返した。




「よろしく、お願いします」




 エルはにこやかに微笑みながら、内心で舌打ちをしていた。







 ファルとアルウィンとは同じクラスになり、学園からは魔術訓練用の杖が配られた。


 午後は今後の寮生活の為の準備に追われ、荷解きが終わる頃にはすっかり窓の外で星が煌めいていた。


 寮は二人で一部屋であるが、エルの他に人が来る様子はない。


 エルはふと荷物の中から小箱を取り出すと、机の上に置いた。




「今日からアルカナ学園でお世話になるの。見守っていてね」




 母の遺した小箱は、エルに与えられたものだった。


 しかし、この小箱に合う鍵がわからないのだ。


 エルはこのアルカナ学園で、小箱の開け方のヒントを何かしら得たいと思っている。


 きっとこの小箱はただの小箱ではなく、魔道具なのだろう。


 ならば何か開き方があるはずだ……エルはそう考えていた。




 ところでルームメイトはどこに行ったのだろう?


 本当に来る気配がない……と思っていたその時。




「ここだー!!」




 その声と同時に開かれた扉に思わず驚きを隠すことも出来ないままに目を向ける。




「いや、迷った迷った……。あ、あなたルームメイトさん? 今日からよろしくね!」


「……よ、ろしく」




 エルは状況についていくので精一杯だった。


 突如現れたルームメイトはどうやらここに辿り着くまでに迷ってきたらしく、頭に葉っぱを付けて小さな箱一つ持っただけの身軽な荷物で登場した。


 荷物少なすぎない? 大丈夫? と他人ながら不安にさえなる。




「私、セレスト・アガットっていうの。あなたは?」


「エル・ガーデンです。よろしくお願いします」


「よろしくエル! 私お堅いの苦手なの、エルも楽に話してくれる?」


「えっと……じゃあ、よろしく、セレスト」


「よろしく!」




 凄まじく元気の良さそうなルームメイトが来たと思ったけれど、きっとそのうち慣れるだろう。


 エルはこうした集団生活が初めてである。


 しかしルームメイトがこの調子ならば、何かと大丈夫そうな気がしてきていた。




 セレストはもう一つある席に座ると、その箱を机に置いた。


 と思ったら、そこに手を突っ込み、何かを探すように動かすセレスト。


 エルは思わず声をかけていた。




「何してるの?」


「んとね、この辺に……あった! これがルームウェアで、こっちがカップで、えぇとペンとインクもいるかな?」


「それまさか魔道具?」




 そうエルは聞いてみるものの、どう見てもそれは魔道具でしかなかった。


 箱から物を取り出す魔道具を作るには、その箱に空間干渉魔術を付与する必要がある。


 この場合は物を小さくする圧縮魔術だろうか? 人間へはかけられない魔術だ。




「そう、これは魔道具なの。箱の中全体に圧縮魔術がかかってるから、この箱に出し入れすると自動で大きさが変わるんだけど、見つけ出すのにちょっと時間がかかちゃって!」


「あなた圧縮魔術が使えるの?」


「ううん、使えないからかけてもらった物を貰ってきたの」


「そうなのね」




 空間干渉魔術はかなり習得が難しい部類の魔術だ。


 圧縮魔術の他に、幻術や結界術、飛行術なども空間干渉魔術の中に入るが、中級魔術師以上でないと使えないとされている。


 さらに魔道具に術をかけるには上級魔術師程度のスキルが必要になるとされている為、ただの箱に見えてそれはかなり貴重な物だ。




「あ、そうだエル! これあげる!」




 そう言ってセレストが箱の中から取り出したのは、一つの時計だった。


 初めましてのプレゼントにしては豪華すぎる。




「……さすがにいただけないよ」


「えー、お揃いにしようと思ったのに。身に付けていてほしいなぁ」


「でも私がお返しできるものなんて……」




 そこまで考えてから、エルはハッと思い出す。




「ちょっと待ってて」




 鞄の中にある密封した箱を開け、さらにもう一つ箱を取り出す。




「これならあげられる」


「それは?」


「香水なんだけど……薔薇の香りって大丈夫?」


「え、薔薇の香水!?」




 それはエルが作っていた薔薇の香水だった。


 他にもエルはいくつも香水を作っている為、一つくらい渡してもいいだろうと、セレストの手に置いた。




「ありがとうエル、大切に使うよ!!」


「こちらこそありがとう。時計、ありがたく使わせてもらうわ」




 二人は顔を見合わせて笑い、初日の夜は深夜までおしゃべりをしてから眠った。


 気の合いそうなルームメイトでエルは安心していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。