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哀れな決闘者  作者: MAPELS_MOTTS


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第7話 力を持ってはいけない者

「師範、あなたはいつも見ているだけ、あなたはどうなんですか?」


「ユウ...」


「戦いましょうよ。見せていただきたいのです。「清らかな心」というものの力を。」


師範は黙って静かに木刀を持ち、歩いてくる。


「し、師範...! 受けてはならない...!

そいつの力はもう、貴方を...!」


ガッ!


うるさい与太郎を一蹴りして黙らせ、私は師範と向き合った。


「お手合わせ...お願いします。」


「...いざ。」


やはり師範にも私の殺意が効かない。


腕で勝負するしかないようだ...


「ふっ!」


右からの横薙ぎと見せかけ、回転して左から切り込む。

師範はわずかに木刀を動かしただけで、それを受け止めた。



「やぁっ!」


袈裟斬りを空振りと見せかけての切り上げ。

これも簡単に弾かれてしまう。


搦め手が通用しない...

まるで心を読まれているかのようだ。


お前の見たことのない技ならどうだ...!


舞うように回転切りを織り混ぜた7連撃。


コン! コンコン! カァンッ!


しかし、全て防がれる。


「種は尽きたか。ならばこちらから行くぞ。」


来るっ...!


ブォン!


風を切る音が遅れて聞こえるほどの、重い一撃。

まともに受ければ、木刀ごと腕が持っていかれる。


間合いを外して避けた。


師範は左足を前に出し、すり足で黙々と距離を詰めてくる。



ククッ...師範...清らかな心だっけ...?


じゃあこれはどう対処する!?


ドン!


私は切りかかる動作をダミーとし、師範の足を思い切り踏みつけた。


その瞬間、私は体を低く沈めてスルッと移動し、一瞬にして師範の視界から消えた。


「なっ!?」


師範はその技を知っていた。


故に背後を取られたと判断し、振り向きざまに横薙ぎを放った。

だが、私はその軌道のさらに下にいた。


対策への対策。


低い姿勢のまま、木刀を師範の腹へ叩き込む。


「ぐっ...! なんと...!

その流派の剣術をどこで...!」


勝った...師範に勝った...!


やはりそうだ。

最強だ。


私は最強なんだ!


「ククク...くっふっふっふ...!」


少し不敵に笑ったあと、ゆっくりと顔を上げて微笑んで言った。


「お手合わせ、ありがとうございました。」


門下生達は皆、化け物でも見るような目で私を見ている。


「次は...誰がお相手してくれますか?」


その後私の相手をしてくれる人はいなかった。


門下生が1人、私に近づく。


「ユウ...どうしちゃったんだよ...!

お前はそんなんじゃなかっただろ...!?」


「いいえ? 私は元々こんなんでした。

ただ耐えていたのです。ずっと負け続ける屈辱に。貴方もなにも教えてくれませんでしたよね?」


「でも...俺は...お前を仲間だと思ってた...なぁ戻ってくれよ...前のお前に...!」


「仲間だと思うだけでその仲間の心が救えたら、どれだけ楽なことでしょうね。会いたいと言う、それよりも簡単な願いすら、思っても叶わないのに...!」


「ユウ...」


緊迫した雰囲気のまま、道場の稽古は終わった。


私は最強...これで、ユウスケさんをいなくした奴らを...



皆殺しにできる...!



帰ろうとすると、師範に呼び止められた。


「ユウ...なにがあったんだ...」


「貴方に話す理由があるんですか?

なにもしてくれない貴方に。

剣術を教える師範だと言うのにその責務すら全うしてくれない貴方に!」


「頼むユウ...今ならまだ引き返せる...

この先の道は...破滅だぞ...!」


「フッ...なーに言ってんだか。」


「お前の精神の未熟さに対して...

お前の才能は強大すぎる...!

引き返せ、ユウ!」


師範からは聞いたこともないほど、感情の乗った叫びだ。


師範に背を向けている私の身体が問いかけている。


行って良いのか?


これが最後の分岐点だと。


本当に...これでいいのか...?

もしかすると師範は、本当に私のために言ってるんじゃ...




...馬鹿馬鹿しい。なにを考えているんだ。

迷うまでもない。


ユウスケさんの仇を全て打ち負かし、私の強さを誇示するんだ!


私が最強なんだ!




見ててね、ユウスケさん...!


私、強くなったの!

貴方の敵を、殺すからね...!


前へ、進んだ。



「...すまない...ユウ...すまない...友人達よ...

私は師範として...なにもしてやれなかった...」



私は仕事に行くと、上客の相手をした。


そして2人目の上客を相手した後、ヤツを見つけた。


目立つ黄色い羽織を着た大男。


アイツが...アイツがユウスケさんを...!


「店主様。すみません、今日も早めに上がらせて頂きます。」


「お、おい! あの上客の相手は...

おい! ユウ!」


一旦家に帰り、笠を深くかぶり、「あるもの」を取ってきて、居酒屋の入り口でヤツを待つ。


そして出てきたところを尾行した。


数分尾行すると、やっと人通りのないところにヤツが入った。


「こんばんは。上客様。」


「ユウちゃんじゃねぇか!おい店でお前を待ってたんだぞ!なのに「もう帰った」なんて言われてよぉ!」


「はい、帰りました。「お前」の相手なんかしたくなかったからね。」


「あ...?」


「不細工、臭い、汚い、うるさい、気持ち悪い、ヘコヘコと腰を振ってる姿は、まるでブタだったな。あぁ気持ち悪かった。

まさか臭いブタの相手をさせられるとは...」


「股開くだけしか脳のない薄汚い娼婦が、俺にそんな口叩く意味、わかってんだよな?お前は気に入ってたから見逃してやってたんだぜ?」


ヤツはそう言うと、刀を私に向ける。


私は、腰につけてる物を手に持ち、引き抜いた。


シャキィィィン...


私は家から刀を持ってきていた。


「かっはっはっは! 娼婦が俺とやるってのか...仇討ちのつもりか? 舐めてんじゃねぇぞ、場数が違うんだよ場数がよぉ!」


切りかかってきた。


「あぁそうだよなぁ!仇討ちだよなぁ!?

お前、あの男と毎日ヤってたもんなぁ!

俺がぶっ殺してやったアイツとよぉ!」


体格がよく、力強い一撃だ。


だが大雑把。とりあえず殺してやるとしか思っていない。


一撃をかわし、相手を睨む。


私は違う。


私はそんな生半可な気持ちじゃない。


"絶対にお前を殺してやる"


特にお前は、ユウスケさんの仇...!


「うっ...な、なんだ...この女...!?」


怯んだところを低い姿勢で入り、切り上げた。


するとヤツの右腕が飛んだ。


「ぐぁぁぁぁー!」


許さない...絶対に許さない...!


「ま、待ってくれ!

アイツはまだ生き、がぇっ!」


「黙れ。お前の声は不快だ。」


「ごぽっ...!」


しばらくいたぶっていると、動かなくなってしまった。


「あれ...結構すぐ死んじゃうんだなぁ。こんなデカい身体してるのに...」


そして天に向かって叫んだ。


「見て!見てよユウスケさん!仇を討ったよ!

私、こんなに強いんだよ! ねぇ!」


涙が流れてきた。


「ねぇ...褒めてよ...撫でてよ...

抱きしめてよ...! また、繋がりたい...

会いたいよぉ...!」


抑えの効かない悲しみが、心に重くのし掛かる。


足音が近付いてきた。


「こっちで争うような声が!」


「っ!」


そして一目散に、その場を逃げ出した。



――――――――――――


次の午後、道場に行くと、師範と与太郎は私を青ざめた顔で見ていた。


「一線を...越えたか...」


「なんのことでしょうか。」


周りの門下生は、かつてユウを仲間だと思っていた。だが、今はこんな会話をしていた。



「なんで来るんだよ...もう来んなよ...!」


「なんで師範は早く破門にしないんだ...あんなヤツ...!」


稽古が始まると、誰も私の相手をしなかった。


「すみませーん。誰か相手をしてくれませんか?」


皆が私を無視する。


「ハッ...下らない雑魚共め。まぁ師範があのざまじゃ、雑魚しか育たないのも当然かぁ?

くふふっ...あっはははははは!」



「師範...ユウは...どうするので...?」


「...あやつは...悲しんでいる...

なんと、哀れな子だ...」


「ふふふふっ! くふふふっ!

あっはっはっはっはっは!!」


私は......最強だ!

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