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哀れな決闘者  作者: MAPELS_MOTTS


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第12話 破滅への片道切符

朝になると、あまりの身体のだるさに動けなかった。


仕方なく再び寝て、昼に起きて外へ出た。


「田楽、2本。」


「...おう。」


すぐに出てくると思っていた。


「ん...?」


いつもの屋台。

いつも通りに田楽を2本。


しかし、今日は少し出てくるのが遅かった。


屋台の店主は、私の豆腐田楽になにやら仕込んでいるようだった。


「嬢ちゃん、ほら、これを...」


いつもの気前の良い感じがない。

すこし暗い。


なにを仕込んだのかと、豆腐田楽を見た。


豆腐の一部に、不自然な傷がついている。


これは文字だ、なにか書いてあるんだ。


"にげろ"


「っ!?」


バッと店主を見ると、隣の客にも話すかのように店主が言い出した。


「そういや、知ってるかい。最近のここの辻斬りを奉行所が本格的に問題視し始めたみたいでな。」


驚いて目を見開き、なるべく動揺を隠す為に、震える手で田楽を口にした。


「町奉行がここに来ててよ、今朝、話聞かれたぜ。なんたってよ、犯人はよくここに来てるって話で、もういろいろ情報が割れてるんだとさ。」


「そう...なんですね...

それは...怖い...話ですね...!」


どうしてもカタカタと震えてしまう手で、田楽をもぐもぐと食べる。


急いで食べ終わり、席を立つ。

そして、店主に一言だけ聞いた。


「どう...して...?」


「お嬢ちゃんは俺の作ったモンを、いつもうまそ~に食ってくれた。それが、俺にとってどれだけ励みになってたことか...」


「...店主さん...ごちそう...さまでした...

いままで、本当に...美味しかった......!!」


「なに急に泣いてんだ、これから戦地にでも行くのか?」


「...っ!」


少しでも正体を悟られぬように下を向き、歩き去った。


「嬢ちゃん...捕まるなよ。

.........元気でな。」



――――――――――――


「なっ...!?」


家に帰ると、戸が開いている。

そして中からは人の気配。


家にも帰れなくなった。

笠を取ることすらできない。


その日から私は、逃げ回って過ごした。




そうして過ごし、3日後。


町奉行らしき人間を警戒しつつ町を歩くと、高札場で衝撃的な物を見た。


私の手配書が、そこに貼られていた。


周りの人間が私を見ている気がする。

今にも飛びかかられそうな気配がする。


すぐにその場を後にした。


――――――――――――――


手配書が貼られてから、さらに2日が経った。


町を歩くことすら難しくなった私は、五郎の道場に潜伏していた。



結局、見つかるのが怖くて昼に食べ物を探すことはできなかった。


もう4日間、水以外口にしていない。。

私の空腹は、もう限界だった。


「あむっ......」


生えていた草を食べてみる。


「ぶっ...げぇっ...!」


あまりの苦さに、すぐさま吐き出した。

元々の吐き気に上乗せされ、嘔吐したが、もう胃液しか出てこなかった。


胃酸で喉が焼けて痛む。


お腹空いた...苦しい...


真夜中、限界が来たユウは、食べ物を求めて町へ歩き出した。



だるい...めまいがする...

本当にまずい...


こんなことになっていなかったら町医者に診てもらっていた。


でももう、医師を頼ることも出来ない。


ドシャッ...


目眩で倒れる。

だが、すぐに起き上がり、また歩き出した。


道端の萎びた大根の葉に群がる羽虫を払い、口に運ぶ。

不味くて仕方ないが、わずかな栄養になった。


家に隠した刀は奉行所関係者に見つかっていなかった。


刀を回収し、さらに食べ物を探すと、人の気配がして、さっと身を隠した。


数人が見回りをしている。


数人が刺股や、先端にトゲのついた長い棒、袖搦を持っている。


見つからないように行動し、食べ物を探す。


ふと、頭によぎる。


人も、食べられるのだろうか。


なりふりかまわず、暗い道を確かめると、ちょうどよく1人で歩いているヤツがいた。


アイツを殺せば...


もう決闘などする余裕もない、暗殺を試みる。


しかし――


「見つけたぞ! 辻斬り犯だ!」


罠だった。


物陰から数人が出て来る。



一目散に逃走すると、当然のように追いかけられた。


「はぁっ! はぁっ!」


「逃がすなっ!」


ダメだ...!


逃げ切れない。


曲がり角で待ち伏せし、最初の一人を斬る。


「気を付けろ! 囲い込め!」


そしてすぐに包囲される。


袖搦と刺股が衣服に絡んだ。


「はなせっ......殺すぞ...!」


殺気を込めて睨むと、相手の動きが一瞬鈍る。


その隙に衣服を自ら切り裂き、押し退けて走り出す。


ひたすら、ひたすら走った。

足がもつれ、息が焼け、視界が揺れる。


それでも止まれば終わりだと、ただ走り続けた。



――――――――――――――



その前日――


ユウの住む町から少し遠くの町に、一人の男がいた。


その男、"ユウスケ"は身分を隠し、肉体労働をして稼いで暮らしていた。


「はぁ...やっぱ肉体労働はキツいな...」


夕方に銭湯で、明日も働く為に身体の疲れを癒していた。


ユウ...元気でいてくれ...

俺がいなくても、お前は幸せになれる...


彼はユウを巻き込まない為に、あの町から完全に離れていた。


だが彼は、勘違いをしていた。

剣術を習っていると言うイメージから、ユウを強い子だと信じてしまっていた。


彼女が誰よりも、弱く脆い心の持ち主であると、ユウスケは気付いていなかった。


銭湯を上がると、住み込み先へ戻る。

その最中、高札場をふと見た。

そこで見た物に、彼は目を疑った。


連続辻斬り犯 "切咲優"


手配書には、確かに彼女の名前と、特徴が記されていた。


「俺の...せいだ...」


気付いてやれなかった。

彼女には、自分しか拠り所がなかったのに。

一人にしてしまった。


後悔している暇はない。


祐介は、すぐにかつての町へと走り出した。

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