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哀れな決闘者  作者: MAPELS_MOTTS


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第11話 余裕無き心


ある日の夜の事。


私は、悪そうなヤツを見つけ、決闘を仕掛けた。


「なんだ女テメェ...俺は「真」を探してんだ!

邪魔すんじゃねぇ...!」


「私が「真」だと言ったら?」


「ぷっ...ぎゃっははは! お前みてぇな女が「真」なわけあるか!」


「真」が女だとは、皆思っていないようだ。


「じゃあ戦いなよ。その刀は飾り?

いや、女にビビって切れないようなヤツの刀は、そりゃ飾りか...」


「テメェあんまり舐めてると本当に殺しちまうぞ?」


「だからさっさとやってみなよ。

ビビってないでさ。」


男は怒り、切りかかって来るが、私は難なく弾き、男の首に刀を振り抜いた。


しかし――


ズチュ!


「ぎぁぁぁぁぁっ!!」


「う、うるさっ...!」


クソ...早く死ね...!


何度も刀を頭に叩きつけ、やっと黙らせた。


「チッ...人が来たらどうするんだよっ!」


ドカッ!


死体を蹴っ飛ばして怒りを発散すると、紙を仕込んだ。


そして、刀を盗んでさっさと逃げた。



首に刀を当ててもすぐに殺せなかった...


理由は明白だ。


「錆びてる...」


最近、具合が悪すぎて人を切った後の手入れが雑になってしまっていた。


昨日なんかちょっと拭いただけで寝てしまった。


もうこの刀はダメだ...


しかも最悪なことに、先程殺した男から奪った刀はかなり質が悪かった。


私を1度切ろうとして弾かれた時の衝撃で、もう欠けている。

リスクを冒して家まで持ってきたというのに...


次の朝、五郎の道場に行ったが、武器は全てなくなっていた。

死体が見つかり、全て回収されたのだろう。


クソ...師範の物を奪うなり、刀を確保しておくべきだった...

こんなに簡単にダメになるなんて...!


刀を得なくてはならない。


私は夜の仕事を終えると、かつての師範の道場に向かった。


門が閉ざされている。


だが問題ない、よじ登れば良いだけだ。

真夜中の月明かりの光る道場に、忍び込んだ。


思った通り、師範の刀は回収され、道場に戻されていた。


それを手に取ると、来た道を引き返した。


ふと、壁の掛札を見ると、まだ掛かっていた。


"切咲優"と書かれた掛札が


まだ 掛かっていた。



――――――――――――――



「ユウ。ほら、自分でここに掛けろ。」


「わ、わかりました、師範。」


"切咲優"の掛札を壁にかける。


「これでお前も、私の門下生だ。

すぐに技術は教えてはやれんが、まずは心を鍛え、優しき心を得るのだ。

さすれば、お前も優秀な剣士としてやろう。」


「師範...! はい!よろしくお願いします!」


この頃の私は、輝いた目をしていた。


――――――――――――――


「......師範...私は、あんたより強くなった。

あんたの教えって...なんだったの...?

何故、剣術を教えてくれなかったの...?

心って...なにさ...」


「ユウ。まだわからないか。」


声のした方には、この道場の一番弟子が立っていた。


「与太郎...!」


「まさに今、お前はその刀を盗もうとしている。お前に悪しき心が見える故に、師範はお前に剣術を教えなかった。」


「私は...必要になったから仕方なく...!」


「力を得た幼子は、善悪の区別なく欲望のままに使う。お前の事だ、ユウ。」


「何を根拠に...話のわからないヤツと話す気はない。さっさとその刀を抜きなよ。殺してあげるから」


「私はお前に対して師範のような思い入れはない。師範の仇......覚悟しろ」


お互いに刀を抜く。

やはりコイツに殺気は効かない。


剣術だけで勝つしかない。


キィィィン!


激しい火花が散る。


師範より攻撃的で、防御な隙間がない。

私は身軽さを活かして跳躍し、回転し、攻め続ける。


「死ね...死ねっ...!」


与太郎はより強い殺意にも動じない。

以前より明らかに成長していた。


「うぉぉォォォー!!」


「っ!」


一瞬だけ怯んだ隙を突く。


ガキン!


しかし今度は通じない。

彼もまた、覚悟を固めていた。


一進一退。

互いに一歩も譲らない死闘。


そのとき、また症状が襲ってきた。


「あっ...!」


強い目眩。

視界が揺れる。


与太郎は見逃さなかった。

一気に攻めを強めてくる。


「くっ...! げぽっ!ごほっ!」


嘔吐物を散らしながらも応戦する、相手にもその汚物がかかる。

しかし彼はそんなものを気にして攻めを緩める程甘くなかった。


「ぜぇっ...はぁっ...! けほっ!」


苦しい。

もう息が続かない、限界だった。


ドシャッ!


私はとうとう、酸欠で足がもつれ、倒れてしまった。

与太郎の刀が振りかぶられる。


「ひっ...! たすけてっ...!」


彼は動きをやめようとしない。


咄嗟に腰の袋に手を入れた。


毒粉塵玉。

激しい戦闘の合間に衝撃が加わったのか、割れている。


でも、使える。


バッ!


私は腰につけた袋の中身の毒粉を手で掴み、与太郎にぶちまけた。


「ぐっ...!? あぁぁぁぁっ!!」


目を押さえて下がる与太郎。


それを見た私は粉の舞う地点から少し下がり、勝利を確信した笑みを浮かべた。


「はぁっ...はぁっ...にひひっ...!

くっふふふふふ...! あっはははははっ!」


「ごほっ! すー...! ふぅ...!」


下がり、なんとか落ち着きを保つ与太郎。

だが、目がほとんど開けない状態だった。


「どうしたのかなぁ!? ほら! ほら!

ほらぁ! こっち! ほらこっち!」


殺されるかと思った。

怖かった。


それを隠すかのように与太郎を嘲笑い、弄び、いたぶった。


ザマぁみろ...ざまぁみろっ!


「くっ...! ふーっ...ふーっ...!」


「けっひゃははは! それで落ち着きを得てるつもりかぁ!? 可愛いねぇ!」


キィン! キィン!


見えないのを良いことにわざと周りを動き回り、攻撃して体力を奪って行く。


そして、近くの石を広い、彼の背後に投げた。


コン...


「っ!」


彼はすかさずその方向に刀を振り抜いた。


そこを私は背中から突き刺した。


「こっちでしたぁ...♪」


「師...範...申し訳...ございま...せ...ん...」


与太郎はついに、地に伏した。


「はぁっ...はぁっ...くっふふふ...

あーっははははは! 死ね!死ね!

私を殺せるとでも!?ざまあみろ雑魚がっ!」


倒れた彼の身体を蹴り飛ばし、嘲笑う。


「はっ...はっ...! 勝った...勝ったぁ...!」


勝ったぁぁぁ...!


快楽物質のようなものが脳みそを一気に浸す。

生きていることへの安堵、勝利の歓喜。


命を脅かした者を嘲笑い、冒涜することで、不安、焦り、恐怖をごまかし、傷付けられたプライドを回復させた。


死体の服に紙を仕込むと、道場を去る前に、掛札を見た。


これでこの道場は終わりだ。

私が潰した...


「...っ!」

ガン!


また、入門の時の思い出を浮かべそうになり、柱に頭を打ち付けた。


「これで...いいんだ...!」


道場の門をよじ登ろうとしたが、その体力すら残っていなかったので、内側から開け、開けっ放しのまま家に向かった。

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