三人目
食事を終えると、宿へ向かった。
マユ、クレア、フィリスと共に受付まで行ってふと考える。一応、フィリスは俺の恋人になると言ってくれたけど、泊まる部屋はどうするんだろう。
「フィリス、今夜は同じ部屋でいいんだっけ?」
フィリスは頬を染めて、コクリと頷いた。
よしっ! いや、待てよ。今夜はフィリスと二人きりで過ごしたい気分だ。
ノエルに聞いてフィリスの事情は大体分かっているとはいえ、やはりフィリスの口から直接話を聞いておきたい。
「今夜はフィリスと二人きりで話したいことがあるから、今夜はマユとクレアで泊まってくれ……ませんか?」
言っている途中で、マユの表情がピクリと動き半眼になったので、つい敬語になってしまった。
マユは湿った視線で俺を見つめている。無言の圧力に押されて、俺は半歩下がる。やはり、怒らせてしまっただろうか?
ところが、マユはフッと軽く息を吐いて、普段の表情に戻った。
「……いいよ」
マユが髪を弄りながら視線を逸らすと、クレアは涙目で声を上げた。
「私のことも、きちんと可愛がって欲しいですー!」
「あ、そうじゃなくて、本当に話したいことがあって……」
俺が慌ててクレアをなだめようとすると、マユが横から言葉を挟んだ。
「話はあるんだろうけど、その気なんでしょ? ……いいよ。私はカイトのしたいことを手伝うって決めた。だから邪魔しない。でもフィリスだけに夢中になったら許さないからね!」
「はい……」
俺が首を縦に何度か振ると、マユは女将さんに二人部屋を二つ頼んだ。そして、女将さんから手渡された二つの鍵の片方を俺に差し出す。
四人は無言で宿の廊下を歩く。気まずいが、ほどなく部屋の前に着いた。
「マユ、クレア、おやすみ」
俺は軽く手を挙げて、二人に笑顔を向ける。
マユは、涙目で頬を膨らますクレアを引っ張って、部屋へ入っていった。
ふう、ちょっと緊張感があったけど、何事もなくてよかった。俺は胸を撫でおろし、フィリスと部屋へと入った。
部屋に入ると俺はベッドに座って、隣に座るようにフィリスに手招きをする。
フィリスは一人分の間をあけて腰掛けたので、俺はフィリスの手を握って体を寄せた。フィリスはビクッと体を震わせ頬を染める。緊張しているのか体がガチガチだ。
「フィリスの事、聞いてもいい?」
「……ええ」
フィリスは静かに自分の過去を話し始めた。
ノエルに聞いて知っていることばかりだったが、やはり本人の口から聞くことで、フィリスの人柄がより分かるような気がした。
一時間くらい話を聞いていた。その間ずっと指を絡めて手を握り、フィリスは俺に寄りかかっている。強張っていた体も緩み、多少は緊張もほぐれてきたようだ。
「そういえば、ダンジョンで最初に会った時、フィリスの口調はなんていうか凛々しい感じだったよね?」
「ああ、あれはザッコスに舐められたくなかったから、わざとあんな風に話してたんだ」
「なら今は?」
「……カイトに可愛いって思われたい」
そう言ってフィリスは俯いたので俺が顔を覗き込むと、潤んだ目を閉じ顎を上げる。俺は軽く唇を重ねるだけの口づけをして、そのまま抱きしめた。
するとフィリスも俺を抱きしめて、触れ合う唇に舌を差し込んできた。
その気になった俺は、抱きしめている手をフィリスの腰へと滑らせようとすると、彼女は俺の手を止めて、小声で言った。
「待って、先にシャワー行きたい……」
俺が「分かった」と腕を緩めると、フィリスは立ち上がりシャワールームへ行った。
高鳴る鼓動を感じながら、しばらく待っているとフィリスが出てきた。俺はその美しい姿につい見とれてしまった。
「カイト、どうしたの?」
「おっ、俺もシャワー行ってくる」
フィリスは口元に手を持っていきクスリと笑う。俺はそそくさとシャワールームへと向かった。
俺が戻ってくると、フィリスはベッドに横になっていたので隣に寝転ぶ。
フィリスは体を寄せて、俺の首筋に顔を埋めてきた。そして、首筋に軽く唇を押しあてる。
「部屋に入ったら、すぐに襲い掛かってくるのかと思ってた。話している間もずっとドキドキしてた。それなのに全然手を出してこないんだもん。なんだか拍子抜けしちゃった」
「俺だって、どのタイミングで手を出そうかってドキドキしてたんだよ」
「変なの。普段はハーレムがどうとか言ってるくせに。こういうことは分からないからリードしてほしいな……お願い」
俺は無言で頷いて、フィリスに覆いかぶさり唇を重ねた。フィリスの腕が俺の背中に回り、強く抱きしめられた。
密着する唇を舌先でこじ開けて入り込み、お互いを確かめ合うように、じっくりと唇を重ね合う。
心が蕩けて混ざり合うような甘い時間が流れた。唇が離れると、フィリスは瞳を潤ませて微笑む。
「カイト、大好き」
「俺もフィリスが大好きだ」
フィリスの体をきつく抱きしめると、彼女も俺にしがみついて熱っぽい声を上げる。
二人の乱れた吐息が重なり合って、夜は更けていった。




