初めての換金
アーリキタの街に着くと、戦利品を換金するために冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの建物をぐるりと回って裏側へ行くと広場になっており、ダンジョンから持ち帰ってきた鉱石やコアを査定してもらえるようだ。
山積みになった鉱石が広場のあちこちにあり、工事用の資材置き場みたいな雰囲気だ。俺たちが入っていくと、筋骨隆々の職員のおじさんが声を掛けてきた。
「あんたらもダンジョンで獲得した資材の換金だろ? ここに物を出してくれ」
クレアはコアの詰まった袋を手渡した。俺もアイテムボックスに収納してある岩を出さないとな。
岩を取り出そうと念じると、巨大な岩がいきなり出現して「ドスン!」と地面に落ちた。少しビビったが、職員のおじさんは慣れているのか微動だにしない。
スキルのアイテムボックスを持っている人は少なくても、大容量のマジックバックを持っている人は少なくないのだろうか。そうでないと、重たくてかさばる鉱石なんて持って帰れないからな。
おじさんは鑑定眼鏡を取り出して、コアと岩の鑑定を始めた。
「コアは低層のモンスターのだな、数は15個。岩の方は……、低層でこれは大当たりの岩だな。銅の含有量が多い。さらに銀も含まれている。ラッキーだったな」
職員のおじさんは紙にサラサラと何かの文字を書いている。描き終わるとその紙を俺に手渡した。何か文字が少し光っている? 俺が疑問に思っていると、ノエルが教えてくれた。
「勝手に書き換えたり不正できないように魔法が掛かっているよ。この紙をギルドの受付に持って行けばお金がもらえるよ」
ギルドの正面に回って建物に入り、受付に行って紙を渡すと換金してもらえた。差し出されたトレイに載っていたのは24万イェンだった。
「すごい……。初めてでこんなに稼げるなんて」
マユは金額に驚いているようだ。ここはやはり平等に分けるべきだよな。
「じゃ、三等分にしようか」
すると、二人は「えっ?」と上ずった声を上げた。
「私、明かりをつけていただけだよ? そんなにもらえないよ! 低層のモンスターのコアなんて二束三文なんだし、ほとんどあの岩の金額だからカイトの稼ぎだよ!」
「私はカイト様の奴隷です。 奴隷に報酬を等分するなんて聞いたことがありません」
「そうなの? まぁクレアは俺の所有物ということだから、クレアに必要な費用は俺が払うことになるのか。ならマユと半分こね」
「そんなに貰えないってば!」
「でも、マユのおかげで探索もはかどったし、これからもずっと一緒にやっていきたいからなぁ」
「そんな……、明かりをつけるだけのスキルでもいいの?」
「というか、マユがいいの! スキルはなんでもいいよ。なにも分からない俺に色々教えてくるし、美人だし」
「……。分かった」
マユは一瞬言葉に詰まったものの、結局は12万イェンを受け取ってくれた。
さて、お金も手に入ったことだし、お腹も空いた。
「テンプーレ亭行ってご飯食べよっか」
三人そろって、冒険者ギルドを後にした。
テンプーレ亭は、今日も多くの人で賑わっている。美味しそうな香りが店の外まで漏れていて、今にも涎が垂れてしまいそうだ。
足早に店内に入り、空いているテーブル席に座ると料理を注文した。
今日もお任せの定食だが、とても美味しそうだ。
早速、俺とマユは食べ始めるが、クレアは料理に手を付けない。肉とか好きじゃないのかな?
「勝手に俺たちと同じものを注文したけど、クレアの好みじゃなかった?」
クレアは慌てて首を横に振る。
「いえ、そうではなくて、奴隷の私がカイト様と同じものを頂くなんて……」
「ああ、そんなこと? クレアは仲間なんだから、遠慮しないでよ」
「ですが……」
クレアは、なかなか料理に手を付けようとしない。仕方ないなぁ。
「じゃあ、命令! この料理は残さず食べてね」
「は、はい……、ありがとうございます」
クレアは潤んだ瞳で俺を見つめ、小さく頭を下げると、ようやく料理を食べ始めた。
それを見届けてから、俺は肉料理に食らいつく。するとマユが、おずおずと口を開いた。
「カイトなら、もっと強いパーティーに入って活躍できると思う。本当に私と一緒でいいの?」
俺が食べる手を止めてマユを見ると、一度視線を落としてから、遠慮がちに笑みを浮かべた。
マユはパーティーを追い出されたから、色々不安なのかもしれない。安心できるような言葉をかけてなくては。
「マユのことは好きだよ。だから一緒にいたいんだ」
マユは一瞬目を見開いて、すぐにジト目に変わった。
「……簡単に女の子に好きとか言って、カイトって悪い男なの? いろんな子を泣かせてるんじゃないの?」
しまった、安心どころか警戒されたか?
「どうだろ? 善人ではないけど悪人でもないと思けどなぁ……。あと、女の子と付き合ったことはないよ」
「そうなんだ、カイトは女の子にモテそうなのにね」
俺のどこにモテそうな要素があるのかじっくりと聞きたいものだが、がっついてると思われると嫌なので流しておこう。
「とにかく、マユが嫌じゃないなら、ずっと一緒にやっていきたいと思ってるから」
「嫌だなんてとんでもない、カイトと一緒に冒険者をできるなら凄く嬉しいよ」
マユと話していると心が和むし、笑顔には癒される。おかげで楽しい時間を過ごせた。クレアは終始無言だったが、気を利かせてくれたのかな?
美味しい料理でおなかも膨れた。俺たちはテンプーレ亭を出ると、宿に向かった。




