表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

売られた喧嘩は買う主義なので

御子柴聖 十七歳


赤髪の男の子が教室に入って来た瞬間、また違う意味で重くなって行くのを肌身で感じていた。


「マジかよ、もう任務を終わらせて来たのかよ…」


「弍急の妖怪達の群れを退治しに行ったんじゃ…?」

 

急にクラス全体がザワザワしだしたけど…、この赤髪の男の子は一体…。


そんな事を考えていると、ふと赤髪の男の子と目があった。


前髪と襟足は長く血色のない青白い肌、少し長い前髪から見える目尻の上がったオレンジの瞳、綺麗な鼻筋、耳には光り輝く沢山のピアス。

 

改めて正面から見ると、綺麗な顔をした男の子だなぁ…。


ギロッっと赤髪の男の子は眉を顰め、あたしの事を睨み付けてくる。


えー、むっちゃ睨んで来るんだけど。


あたし、何かした?


何もしてないのに、何故に?


「おーい!!!隼人(はやと)。もう、任務終わったのか?流石だなぁ」


この男の子は隼人と言うのか。


「おい、早乙女(さおとめ)。職員室に寄って、報告は済んだのか?」


佐和先生は、赤髪の男の子を見ながらそう言った。


へー、早乙女と言うのか。


ん?


早乙女…、早乙女!?


え、え、え?!


えええええええええええっ!!!?

 

もしかして、智也さんが言ってた早乙女家の坊ちゃんって…。


この男の子の事か!!?


早乙女隼人とまさか同じクラスだったとは…!?


あたしは慌てて早乙女隼人から視線を逸らし、顔を合わせないようにする。


智也さんっ、早乙女隼人が同じクラスって聞いてないよっ!!!

 

まぁ、あたしが御子柴家の人間って分からないだろうし…、慌てなくて良い筈。


あたし、御子柴家の参加に入ってる三家の人達と会った事ないし。


うん、関わらないようにしよう。


うん、そうしよう。


それが一番良い。

 

そう思い、あたしは静かに気配を消す事にした。


あたしは空気。


そう、空気だ。


「終わったから、教室に来たんだろ。ほら、印鑑付きの書類」


早乙女隼人は不機嫌な声を出しながら、佐和先生に書類の束を乱暴に手渡す。


「何だ?今日は一段と機嫌が悪いな、早乙女。反抗期か?」


「あ??」

 

「うわー、隼人の機嫌がかなり悪い」


ポリポリッと前田大介が頭を掻きながら、佐和先生と早乙女隼人の会話を聞いていた。


「機嫌が悪いと、何かマズイの?」


「いやー、アイツさ、機嫌が悪いとすぐ喧嘩売るから」


前田君は苦笑いしながら、あたしの質問に答えてくれた。


成る程、機嫌が悪いのか。


まぁ、誰だって機嫌が悪い時だってあるよね。 


ツカツカ!!!


乱暴な足音があたしの目の前で止まり、頭上から不機嫌な声が降り注がれる。


早乙女隼人が歩いて来ているのは分かっていたけど、まさか声をかけれるとは思ってもみなかった。

 

「おい」


「…」


聞こえないふりをしていたが、早乙女隼人は更に声を大きくして声をかけてくる。

 

「おい、聞こえねーのか」 


これはさすがに、反応しないとまずいか…。 

 

「えっと…。もしかして、あたしに話しかけてます?」


「何言ってんだ、お前しか居ないだろうが」


話し方からして、あたしにイライラしているのが分かる。


いやいや、何故に?


さっきからあたしに対して、敵対心を剥き出しにする?


「お、おい、隼人!!!女の子に喧嘩売るなよ!?」


前田君が早乙女隼人を止めようと、慌ててあたし達の間に入って来た。


「お前、本当に鬼頭家の人間か?」


「は?」


ドキッ!!!


何で、いきなりそんな事を聞くんだ?


「え、え!?それって、どう言う意味?」


そう言って、前田大介が早乙女隼人に尋ねていた。 


「本城家の車にコイツが乗ってたから」


もしかして、智也さんに会いに行った時に車の中を見られたって事?


だとしたら、めちゃくちゃ視力良過ぎるでしょ!?


本城の家紋が付いていた車に乗っていたから、御子柴家の参加に入ってる三家の人間が見たら分かるな…。

  

いや、あたし達は校舎の裏側で降りたから誰にも見られてないはずだ。


だとしたら、正面を通った時に見られたのか。


「隼人は目が良過ぎるんだよ…。そんな、車の中なんか見ないって…」


前田大介の問い掛けに答えずに、グイッと乱暴にあたしの髪を掴み顔を近寄せた。


「お前、何者だ?」


誰にも聞こえないよう、わざわざ小声で尋ねてくる辺り、早乙女隼人はあたしの正体には気付いていない。


だけど、明らかに疑っている。


早乙女隼人が何でか分からないけど、あたしに敵意を向けてるのは確かだ。


「おい、隼人!!!やめろって!!!」


「何やってんだ、早乙女!!!」


前田大介と佐和先生が止めに来る前に、あえてコイツの挑発に乗ってみようか…。


こう言うタイプは、すぐに乗るだろう。


何かしてくるのは分かっていたし、わざと避けないであげたんだからね?早乙女隼人。 


喧嘩を売って来たのは、早乙女隼人なんだから。

 

そう思いあたしは、早乙女隼人の手を勢いよく振り解いた。


パシッ!!!


静かな教室内に手を叩いた音が響き渡り、あたしは早乙女隼人を睨み付けながら口を開く。 


「初対面で、いきなり髪の毛をつかまないでくれる?喧嘩売ってるの?」

 

あたしの発言で更に教室が静まり返り、早乙女隼人の眉間に皺が入り始める。


「な、なぁ、やばくない?」


「ちょ、ちょっと佐和先生、止めてよ…」


ヒソヒソヒソ…。


あたしの行動を見たクラスメイト達が騒ぎ出す。


そりゃそうだ、女子が男子に喧嘩を売る事なんて滅多にないし。 


「へぇ、面白いな」


「「「はぁ!?」」」


生徒の言葉に耳を傾けずに、佐和先生はあたしと早乙女隼人を見てニヤリと笑った。


ふと、あたしの背後から蓮の気配を感じた。

 

「おい、早乙女。喧嘩を売るなら、公平なやり方にしろよー」


蓮の声がしたので後を振り返ってみると、気配を消して静かに教室に入って来ていたらしい。


早乙女隼人の反応を見る限り、蓮の気配に気付いてなかったようだ。


それはクラスの子達の反応を見てもそうだけど…。 


「田中っち!?いつの間に?」


「た、田中っち?」


前田大介の呼び方が独特過ぎて、思わず声に出して反応してしまった。  


「僕はちゃんと後ろに居たよー、前田。早乙女さ?鬼頭の事が気に入らないなら、決闘を申し込めばいいじゃないか」


「決闘って…?」


あたしがそう言うと、蓮はニッコリと笑った。


蓮はきっと、考え無しにこんな事を言わないし、何か考えがあって言った事だろうから。 


「お互いの能力を高め合う事を言いますね。手合わせと言ったら早いね。自分より高い級の相手に勝てば、自分の級も上がるシステムなんだよ。モニター室で級を取るより早いしね?」


蓮の話を聞きながら、あたしはチラッと早乙女隼人の胸元を見た。


右胸に赤い札のバッチが貼られていおり、壱級と書かれていて前田大介は…、青い札で弐級と書かれてあった。


決闘で早乙女隼人に勝てば、あたしは壱級になれるって事か。


確かに、試験を受けるよりかは早く取れるな。


「あたしは良いけど、向こうがね…」


そう言いながら、あたしは挑発するように早乙女隼人をチラ見をする。


案の定、早乙女隼人は眉毛をピクピクさせながら言葉を放った。 

 

「女に俺が負ける訳ねぇだろ、俺はお前に申し込むぜ」


「「「えええええええええええええ!!!!!??」」」


早乙女隼人の言葉を聞いたクラスの子達の大声が重なり、佐和先生は頭を掻きながらあたしに近寄ってくる。

 

「おいおい!!?話を勝手に進めるなよ…!ったく仕方ねぇな…。昼休みに体育館で行う。放送かけるから来いよ。田中先生に案内させるからな鬼頭」


「分かりました」


佐和先生の言葉を聞いて、蓮は礼儀正しく頭を軽く下げながら答えた。


「ほら、そういう事だから。早乙女、自分の席に戻れー」


佐和先生にそう言われると、早乙女隼人は渋々席に戻って行く。


「あの転校生…、ヤバくない?」


「でも、面白そうじゃん?」


生徒達のザワ付きが治る事は無かった。


「ごめんな聖ちゃん。隼人の奴、本当は悪い奴じゃないんだよ」


「前田大介が謝る事じゃないじゃん。それに…、あたし売られた喧嘩は買う主義なので」


あたしがそう言うと、前田君は吹き出した。


「あははは!!!聖ちゃん男前過ぎ!!!前田大介って…、謎にフルネーム呼び!!!それと大介で良いから!」


「分かった。そんなに面白い?」


「うん!!!それに隼人が、女の子に興味を持つのも初めてだからさ…」


「へぇー、その辺はあんまり興味ないかも」


「おい、大介。俺の事ベラベラ喋んなや」


大介の隣の席が早乙女隼人だったらしく、あたしとの会話が丸聞こえだった様だ。


「悪い悪い」


大介は早乙女君と仲良さげに話し出した。


その後は普通に授業を聞いていたら、あっという間にお昼休みの時間なっていった。


キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーンッ。


昼休みのチャイムが鳴り、鞄からお弁当を出していると大介が声をかけてくる。

  

「聖ちゃんっ、良かったら一緒に昼食べない?」

 

「いや、あたし一人で食べる。大介は早乙女隼人と食べて」 


「え、聖ちゃん!?」


あたしは慌てる大介を放置し、お弁当を持って足早に教室を出て行く。


廊下に出た途端、他のクラスの人達から噂話をされながら見られたけど、本家でも不快な視線を向けられていたからなぁ…。


視線を無視しながら階段を降り、人気のない裏庭に向かった。


何故なら、そこでお昼休みに蓮と会う約束をしていたからだ。


体育館につながる通路を通り、右側に抜ける。


確か…、ここが裏庭かな? 


そう思いながら曲がると、ベンチが数個配置された小さな公園のような敷地に出た。


どうやら裏庭に到着したらしい。


「お嬢。お疲れ様です」


眼鏡を外した蓮が、お弁当を持ってベンチに座っている。


「お疲れ様、と言うか、蓮!!!朝の発言は何?」


「決闘の事ですか?」


「そうそう。蓮の意図は何となく分かったけどさ」


あたしは蓮の隣に腰を下ろして、ジッと顔を見つめながら問い詰める。 


「お嬢が負ける筈ないからですよ、それに早乙女隼人は何か勘づいている可能性が高いです。感が鋭いですよ、彼」


「確かに…、あたしが鬼頭家の人間じゃないって言ってたしね」


「この決闘で、力の差を見せ付ける良い機会です。女の子に負けてしまえば暫くは大人しくなるでしょう。髪の毛、大丈夫でしたか?早乙女隼人に引っ張られてましたけど…。すいません、止めに入りたかったのですが…」


蓮はそう言って、優しくあたしの髪の毛に触れながら謝ってきた。


早乙女隼人に掴まれた所を優しく指で撫で、大切な物を触るように丁寧に触れてくれる。


「大丈夫だよ、蓮。そんなに痛くなかったしさ」


「お嬢の大事な髪ですよ、許せません」


「ふふっ、蓮がそう言ってくれるだけで、嬉しいよ」


蓮があたしの事を気にしてくれるだけで、嬉しいんだから。


高鳴る胸を押さえながら、蓮が朝に作ってくれたお弁当の巾着袋の紐を解く。


「美味しそうっ、作ってくれてありがとう蓮」


「凝った物じゃないですが、食べましょうか」


「そんな大したものだよ!!!いただきます」 

 

両手を合わせてから、卵焼きを口に運んだ時だった。


ピンポンパンポーン♪


「えーっと。二年零組の鬼頭聖さんと早乙女隼人君は、至急体育館に集まって下さーい」


佐和先生の声が、学院中に響き渡った。


どうやら、決闘の時間が始まったようだ。


「楽しみですねー。久々にお嬢の戦いぶりが見れます」


「買い被り過ぎだよ、蓮は」


「お嬢は自分の実力が分かっていませんよ。早乙女隼人の驚く顔が想像出来るな」


「早乙女隼人も壱級なんだから、それなりの腕だと思うけど…。まぁ、手合わせしてみないと分からないよね」 


話しながらおにぎりを一つ食べ、あたし達は急ぎ気味に体育館に向かった。


裏庭から体育館は近った為、遠目から見ても入り口が人で溢れ出しているのが分かる。


あたしと早乙女隼人の決闘を見に、わざわざ集まったの!?

 

入り口付近にいた金髪の男子があたしの存在に気付くと、目を丸くさせながら大声で叫び出す。


「おい、例の転校生が来たぞ!!!!」


ザワザワザワ…。


金髪の男の子の声を聞いた周りの生徒達が一気に騒つく


「この人の量は…。多過ぎでは?」


「皆んな、鬼頭さんの決闘の噂を聞いて見に来たようだねー」


あ、蓮の口調が先生モードに切り替わった。


本当に切り替えが早いな…、蓮は。


「退け」


蓮の横顔を見つめていると、早乙女隼人の低い声が体育館に静かに響き渡る。


ギャラリー達の話し声が止んだ。


それ程に、この早乙女隼人の威圧感が凄いのだろう。


あたしから見てもオーラが他の生徒達と違うし、場の空気を変える力を持っている。


早乙女隼人は大介と一緒に、先に体育館の中に入って行った。


「行きましょうか、お嬢」


蓮があたしの耳元で囁きながら、ポンポンッと背中を叩く。

  

「うん、行こうか」

 

あたし達も続けて体育館の中に入り、佐和先生と早乙女隼人が立っている中央に向かう。


「よし、二人は前に出ろー。後ろの二人は下がってろ」


佐和先生に言われて蓮と大介は下がり、あたしと早乙女隼人は前に出ると、早乙女隼人と対面する体勢になった。


「これより決闘を行う、ルール上で式神の使用は二回まで。武器は木刀を使って貰う。相手から一本取った方が勝ちとする。また、勝者には級の昇格がある」


へぇ、木刀で戦うのか…。


佐和先生から木刀を貰い、軽く木刀を一振いし、体の感覚を呼び覚ます。


ブンッっ!!!

 

うん、体が覚えてるみたい。


最近は妖怪銃の訓練をしてたから、刀での戦闘は暫くぶりだ。


「アンタ、慣れてんだな」


「慣れてるって、何が?」


「木刀を使う事にだ。俺が勝ったら、お前の正体を教えて貰うからな」


早乙女隼人はあたしに対して睨みを効かせた。


「普通の人なんだけどな。じゃあ…、あたしが勝ったらあたしの犬になって貰おうかなぁ。それぐらいの事はしてくれるよね?寧ろ、そのぐらいして貰わなと割に合わないし」


ザワザワザワザワッ。


あたしの爆弾発言で、ギャラリーが騒ぎ立てた。


「あははは!!!やっぱり、聖ちゃんは面白いなぁ…。もし、隼人に勝てたら凄いよ?」


そう言って、大介はお腹を抱えて笑った。


「早乙女隼人に勝よ?あたしは」


「へ?」


「あたし、負けた事って一回しかないの。人相手には一度も負けた事がないし」


あたしの言葉を聞いた大介は、目を丸くさせながら固まる。

 

「ハッ、上等だ!!犬でも何でもなってやる!」


「それでは、両者構え!!!


佐和先生の号令で、あたしと早乙女隼人は木刀を構え、周りが静まるのを確認してから、佐和先生は手を挙げた。


「始め!!!」


ダンッ!!! 


号令と同時に先に動いたのは、早乙女隼人だった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ