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「カグヤと彼氏と日本史の謎」(セーラー服と雪女 第21巻)  作者: サナダムシオ


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㉙ 河合曾良

 松尾芭蕉の出身地が、三重県の伊賀上野である事は、良く知られている。


 だから、一日に50km歩いた事もあるという、"奥の細道"での彼の健脚ぶりは、例え当時45歳だったとしても、なんら不思議な事は無いのだ。

 だって彼は忍者の里の出身なのだから。


 しかし、河合曾良。

 コイツは怪しい。


 出身地は長野県諏訪市。

 幼くして両親を亡くし、養父母に引き取られる。

 しかし、その養父母も、彼が12歳の時に、両方他界しているのである。

 ……ほら、もう、怪しい。


 その後は、三重県伊勢市の寺に引き取られて、やがて、長島藩主松平康尚に仕えるようになる。

 その頃の名は河合惣五郎。


 1676年に「袂から春は出たり松葉銭」の句を詠んでおり、この時点で既に俳諧を嗜んでいたようだ…出来過ぎた既成事実に思える。


 そして、その後少し経ってから江戸に行き、松尾芭蕉に入門している……この経緯も良く分からない、アヤシイ。


 ……以上が、以前、真田雪子からカグヤが聞かされた、河合曾良のウワサだ。


 多分、私は、この先入観を持ったまま、成雪に歴史データを入力したのだろう…良くない事だ。

 そんな反省をしながら、彼女は、とある温泉郷の、女湯の湯舟に浸かっていた。


「やっぱり温泉は、日本文化の醍醐味よねえ。」

 彼女はつい、そんな独り言を口にしてしまう。


 実を言うとカグヤは、これが温泉初体験ではない。

 かつて輝夜姫時代と、宮本武蔵の追っかけをしていた頃に、何度か入った経験があったのだ。


 隣の男湯では、今ごろ成雪も、温泉を堪能しているハズである。

 果たして彼は、生まれて始めての温泉に、どんな感想を持つのだろう。とても興味深いわ。あとで必ず訊いてみなっくっちゃ。


 カグヤは、そんな事を考えながら、独りで「ふふっ」と笑った。


 一方、そんな上機嫌のカグヤとは裏腹に、成雪は先程から、要注意な事態に遭遇していた。

 なんと同じ露天風呂の湯舟に、あの松尾芭蕉と河合曾良が入って来たのだ。


 何もワルイ事はしていないのに、何となく、彼は岩陰に隠れる。

 耳を澄ますと、二人の会話が聞こえて来た。


「それにしても曾良よ……。」

「はい、何でしょう。芭蕉様?」


「お前さんは、余程その数珠が、気に入っておるのだのう。何時も肌見放さず首から下げて……風呂の中でも外さぬとは。」


「ああ、コレですか。コレは諏訪の我が家に代々伝わる、有り難いモノ故に……。」

「おお、そうか、そうか。信心深い事は良い事だな。」


 などといった、当たり障りの無い世間話をした後、先に芭蕉が風呂場を出て行った。

 しかし、事件は、その後に起きたのである。


挿絵(By みてみん)

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