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GLAY GHOST 〜赫焉のジャンゴ  作者: DDDog
ただ一欠片の人間性のために
15/31

Preparati la bara!

 BRATATATATATATATATATATATATATATATAT!

 ジャンゴの手に握られたコルトモニターが、押し入ってきた兵士たちが銃を撃つよりも早く唸りをあげ、銃弾が雨あられとなって降り注ぎ彼らを出迎える。


「がぁぁぁぁ!」「あ、い、ぎぃぃぃぃ!?」「げ、ぇ……!?」「ごぼ、ぼぉっ!」

 多種多様な悲鳴が不協和音のように重なって鳴り響いていく。それに合わせて、真っ赤な鮮血が、廃ビルの白い壁を赤々と彩っていく。

 殺風景だった部屋は瞬く間に鮮やかな赤色に染められ、鼻を突くような匂いが一気に充満した。


「さん、よん……ふぅん、五人か」


 ジャンゴは硝煙をもくもくと吐き出すコルトモニターを下げると、「持ってろ」とカグヤに手渡した。

 カグヤはその銃の想像以上の重さ(ジャンゴが軽々と持っていたため)に少しバランスを崩しかけたが、なんとか踏ん張って堪え、しっかりと保持した。

 ジャンゴは次に、ニューフロンティアをホルスターから抜く。


「おれが部屋から出たら後に続け。それと、後ろは任せる。……それなりに、期待してるぞ」

「は、はい」


 ジャンゴはカグヤにそう告げると、すぐさまひゅっと風めいて走り出した。彼はものすごい勢いで廊下へと一直線に向かう。

 そして、部屋から廊下へと出る直前で身を捻り、横飛びに躍り出ると、部屋の外で待ち構えていた兵士たちの姿を捉え……素早くファニング!

 BANGBANGBANGBANGBANGBANG!

 その凄まじい早撃ちに、六人の兵士はばたばたと呆気なく倒されていく。

 彼の銃撃はただ早いだけではない。神がかって正確でもあった。一瞬にして相手の位置を把握し、狙いをつけ、そこへ銃弾を的確に撃ち込む。

 眉間。心臓。首。股間。急所に吸い込まれるように強力無比な45口径弾が命中し、為す術なく兵士たちは死んでいく。

 何人かは飛び出てきたジャンゴへ向けて咄嗟にサブマシンガンやアサルトライフルなどの引き金を引いていたが、銃弾はジャンゴの上を掠め、ジャンゴの後方で挟み撃ちにしようと待機していた仲間に流れ弾が命中し、フレンドリーファイアしてしまう。


「ジャンゴさんっ」


 そこへ、言われた通りジャンゴの後に続いて部屋を出たカグヤが姿を見せる。

 BRATATATATATAT!

 彼女はジャンゴから手渡されたコルトモニターを即座に乱射し、ジャンゴの背中を守るようにして敵を倒していく。

 フルオートの大きな反動は非力な女性であるカグヤには重く厳しく、その狙いはややブレていて正確とは言えなかったが、筋はいいのか、制圧射撃で何人かの兵士を倒してみせた。

 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!

 そして、撃ち漏らした兵士はジャンゴがスタールアーミーで処理していく。


「なかなかいい筋してるぜ」

「ええと……ありがとうございます」


 人殺しで誉められても、あんまりいい気はしませんけど……。とは言わないでおいた。

 カグヤは撃ち終えたコルトモニターの弾倉を少し苦労して外すと、次の弾倉をジャンゴに要求する……よりも先に、ジャンゴは言われる前に彼女に弾倉を差し出した。


「そいつの予備弾倉はそれだけだ」


 ジャンゴは立ち上がり、ニューフロンティアの排莢を片手のみを使い手慣れた様子で素早く行う。そして、新しいカートリッジをシリンダーに滑り込ませるように滑らかに装填。

 次に、スタールアーミーのシリンダーを取り外し、撃たなかった一発は回収して既に装填済みのシリンダーと交換する。


「六と、四……十人。さっきのと合わせて、十五人。いいペースだな」


 スタールアーミーとニューフロンティアをホルスターに戻すと、次にイサカM37を取り出した。


「階段を突破する。一気に行くから頑張ってついてこい」


 ジャンゴはイサカを抱えて保持し、勢いよく駆け出す。

 カグヤもそれに遅れまいと、重たいコルトモニターを両腕でしっかりと抱えながら駆け出した。


「ファッククオフ!」


 廊下を走り抜け、階段へ通じるドアめがけて突入しようとしたとき、正面にふたりの兵士が飛び出てきた。


「敵……!」

「止まるな!」


 BANGBANG!

 ジャンゴはすぐさまイサカの引き金を引く。散弾銃の重い反動などものともせず、続けざまに三発撃ち込む!

 兵士ふたりは呆気なく吹き飛び、体が千切れてそのまま絶命した。


「にぃ!」


 ジャンゴは数を数えながら立ち止まることなく突き進み、ドアを強引にも体当たりで吹き飛ばし、廊下から階段の踊り場へと飛び込む。

 BANG! BANG!

 階段の先の状況判断をするまでもなく、振り向きざま強力な12ゲージの散弾を叩き込む。


「げ、ェ……!」


 階段でターゲットが来るのを待ち構えていた兵士がクルマに撥ねられたように吹き飛び、肉片をあたりに撒き散らして弾ける。死体は階段をごろごろと転がり落ち、そのまま壁に張り付くように倒れた。

 カグヤはさすがにその陰惨な光景に顔を(しか)めたが、ジャンゴはそんな無惨な死体にいちいち目はくれない。

「さんっ!」ただ数を数えるだけで、そのまま素通りして階段を駆け下りていく。カグヤもそれに精一杯続く。

 BRATATATATATAT!

 しかし、まだ階段に敵兵士は待ち構えていた。

 数名の兵士が、勢いよく駆け下りてくるジャンゴとカグヤにアサルトライフルの応酬を浴びせる。


「ちっ、下がれ」


 ジャンゴは後方のカグヤを押すように腕を出して後ろへ下がらせ、身を隠す。

 BRATATATATATAT! BRATATATATATAT! BRATATATATATAT!

 反撃の隙を与えまいと、不断なく続く銃撃の雨にジャンゴとカグヤは身動きが出来ずにいた。

 それに加えて、ダメ押しとばかりに兵士のひとりがジャンゴたちのいる方へ向けて、丸く小ぶりななにかを投擲する。

 ……破片手榴弾(グレネード)だ!


「危ない……!」

「慌てるな」


 カグヤはグレネードの脅威に体を思わず退かせ、危険を告げるが、ジャンゴの方はまるで驚きも慌てもせず、いたって冷静そのものであった。

 彼は飛んできたグレネードをサッカーボールをパスするかのようにこつんと軽く蹴り飛ばした。

 グレネードは跳ね飛び、壁に反射、そして下でジャンゴたちを待ち伏せする兵士たちのもとへ帰ってきた。


「……! 退避ーッ!」


 逆に兵士たちの方が慌ててその場から撤退する。

 その直後、

 KABOOM!

 グレネードが弾け、爆発が起きる。その衝撃に脆くなっていたビルがあわや倒壊するかと思ってしまうほど揺れた。

 爆発したグレネードは容赦なく破片を撒き散らして、逃げ遅れた兵士のひとりが餌食となった。彼は哀れにもズタズタの死体と化した。

 もうもうと煙が上がり、被害を避けようと身を低くしていた兵士たちはその煙にごほごほと咳き込んだ。

 そこへ、


「──Blast!!」


 BANG!

 階段から飛び降りてきたジャンゴが兵士たちの正面にしなかやかに着地し、イサカを至近距離で撃ち込んだ。

 ほぼゼロ距離の位置で頭部に散弾を受けた兵士は、防具のヘルメットなど意味をなさず、スイカが割れるようにボンッと頭が爆ぜ、弾け飛んだ。

 首から上をなくした兵士はそのまま糸が切れた人形のように力なく後方へ倒れた。

 ジャンゴは次の獲物に銃口を向けると、心臓の位置に銃をつきつけ、

 BANG!

 容赦なく引き金を引く。

 悲鳴を上げる間もなくその兵士は一瞬にして絶命し、彼の死に様を見届けることなく、ジャンゴは残る最後のひとりに対して振り向く。


「……Bastardo!!」


 しかし、その最後のひとりは爆発の衝撃からの復帰が早く、果敢にもアサルトライフルをジャンゴへ向けて引き金を引いた。

 BRATATAT……!

 ジャンゴを狙って、7.62ミリの銃弾が放たれる。

 しかし、ジャンゴはそんな攻撃にやられるような男ではない。

 彼は撃たれるよりも早く機敏に反応し、イサカを両手で握り込むと、それを手頃な鈍器として扱いアサルトライフルの銃身に叩きつけていた。

 それによりアサルトライフルの銃口は狙いから大きくそれ、白いコンクリート製の壁を削り、穴を開けた。

 続けて、ジャンゴはイサカのグリップを男の鳩尾めがけて思い切り叩きつけた。

 次に胸。そして、とどめにフルスイングで男の側頭部を強か叩く。

 その衝撃に軽い脳震盪を起こした兵士は、その場で舞うように回りながら後退り、壁に激突してもたれ掛かるように倒れ込んだ。

 くらくらとする意識の中、目の前の死神がショットガンを構えるのを呆然と見つめる。

 ──殺され……る。

 彼はそう達観するように悟った。

 しかし、

 CLICK!

 銃声は鳴り響くことはなく、また銃弾が放たれることもなかった。

 ……弾切れだ!

 それは干天の慈雨だと彼は思った。

 咄嗟に残された力を振り絞り、兵士はサブアームのハンドガンを抜こうと試みる。

 だが……そうは問屋が卸さない。

 ジャンゴはもう使い物にならないと思い切りよく判断して、すぐさまイサカを兵士めがけて思い切り投げ捨て、叩きつけた。

 続けて鋭い踵落としを胸に振り下ろし、そのまま足蹴にして体重をかけ、彼の動きを押さえつける。

 そこでジャンゴはダスターコートの袖口から銃を取り出す。それは非常に小ぶりで口径も小さく隠匿性に優れた、コブラデリンジャーだ。

 BLAM!

 脳天に一発。反撃の機会は虚しくも不意になり、兵士はそのまま絶命した。


「これで、二十二。しかしまぁ、慣れない得物は使うもんじゃないな」


 ジャンゴはため息をつくと、階段を仰ぎみる。


「はぁっ……はぁっ……ふぅ」


 階段を駆け下りて走り疲れたのか、カグヤは随分と息が上がっていた。顔も朱に染まっていて、こんなときに場違いだとは思うが、やたらと色っぽく感じられた。


「おまえ、大丈夫か?」

「大丈夫……です。ちょっと……体力が……ふぅ。その、お恥ずかしながら……元々引きこもりみたいな……生活を、して、いましたから……」

「……無理するな、と言ってやりたいとこだが、そんなふうに甘やかしてやれるような状況じゃない」


 とはいえ、先程から抱えているコルトモニターの重量のことを考えれば、仕方ないと言ったところだろう。女性というのを抜きにしても、そう軽々と持ち運べるものでは無い。


「だが、いったんそこで待機してろ」


 ジャンゴはガンベルトの後ろに携行していたメアーズレッグを引き抜くと、それを構えて前へ進み始めた。


「この先の状況を確かめてくる。すぐ戻る」

「は、い……」


 どうやら、それまでに息を整えておけ、ということらしい。彼は素っ気ない態度でもっともらしく言っているが、彼なりの気遣いが感じられた。


(やっぱり……優しいひと)


 軽く休憩をしながら、カグヤは思わずくすりと笑ってしまう。ベルも言っていたが、本当に不器用な人間なのだ。


(それに、なんだか……)


 ()()()に似てるな──と。そう思ったとき、


「……!」


 カグヤは迫り来る殺気にハッとした。

 ……後ろだ!

 カグヤは咄嗟にコルトモニターを盾替わりにして突き出した。

 その反応の良さと咄嗟の判断は、賞賛に値するものだった。

 ──盾にしたコルトモニターが、飴を切るように容易く真二つに切断される。

 もし、少しでも反応が遅れれば……殺気に気づかなかったとしたら。カグヤは目も当てられないほど無惨な死体を晒すことになっていただろう。

 カグヤは突如切りかかってきた敵の勢いに押され、また手にしていたコルトモニターの重量が左右に分散して逃げたことでバランスを失ってしりもちをついた。


「ぃ、つ……!」


 カグヤは、目前に現れた敵の姿を確認する。

 撃たれ、血を大量に流している、グロッキーと言っても差支えのない状態の兵士だ。

 どうやら先程ジャンゴかカグヤに銃で撃たれた際に、幸か不幸か即死には至らず辛くも生き延びていた兵士らしかった。

 怒り狂った彼はすっかり錯乱し、捕獲対象であるはずのカグヤに対してさえ見境なく攻撃を加えようとしている。

 彼の手には、一振のナイフ。それもただのナイフではない。非常に切断力の優れた、高周波ブレードの一種。刃を目には見えない微小な動きで振動させることで破壊力を高めた恐ろしい武器である。

 兵士は荒い息を吐きながら、消えかかる己の命を振り絞り、死にかけの体に鞭打って、せめて目の前のカグヤを道連れにしようと試みる。

 ナイフを振り下ろし、カグヤを深々と突き刺そうとする。

 まずい。

 カグヤは死を予感した。

 その瞬間、周りの時間の流れがひどく遅く感じるようになり、目に見える景色もスローモーションになる。

 殺される。このままでは、殺される。

 助けを呼ぶ? ジャンゴに対して、助けてと情けなく悲鳴をあげる?

 ……否。否、否、否!

 それはダメだ。そんなことをしてはならない。

 今ここにいるのは、自分だけだ。自分のことを守れるのは自分だけだ。ここで戦えるのは自分だけだ。戦うと決めたのは、自分だ!

 戦え!


「あ、あぁぁっ!」


 そこで、カグヤの体感時間は元に戻る!

 カグヤは己に叱咤激励し、ほとんど悲鳴に近い叫びを上げながら、全身に活力を漲らせる。

 不格好ながら横に転がってそのナイフの刺突をすんでのところで回避すると、両手に持っていたコルトモニターの残骸を投げつけた。

 右、左。それぞれ片方ずつ力任せに思いっきり投擲する。二回、鉄の塊が体に直撃した兵士は、その衝撃によろめき、後ずさる。

 そして、その隙をついてカグヤは体勢を立て直しすぐさまオートマチック拳銃を抜いた。そして、


「……ごめんなさい」


 BLAM!

 銃声一発。銃弾は見事に兵士の心臓を撃ち抜き、彼はついに事切れる。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」


 緊張が解かれ、荒い息を吐き出しながら、カグヤは自分がまだ死んでいないことを認識する。

 わたしは、生きている。

 彼は死んで、わたしが生きている。

 それが正しかったか、間違っていたのか。

 自分はあそこで死ぬべきだったのか。それは分からない。

 けれど……。


「……ごめんなさい。でも、わたしは生きないといけないんです。ただ、せめてもの償いとして……あなたの分まで、わたしは生きますから」


 それで許して欲しいとは言わない。

 だが、もう迷わないと決めた。

 自分が生きるために。生き残るために。

 エゴを貫き、振り返らないで前に進む。

 これからのわたしにできることは、それだけだ。


「カグヤ」そこへジャンゴが戻ってきた。「……無事か?」

「はい。……なんとか、無事です」


 ジャンゴはカグヤと彼女の近くに倒れる兵士の亡骸、そしてカグヤの手に握られた硝煙を立ち上らせる拳銃をそれぞれ見て状況を確認した。


「……大したもんだ」

「死にたくは、ありませんから」

「そうか。……それでいい。おまえは間違っちゃいない」


 ジャンゴはカグヤに手を差し伸べた。カグヤは、それをきゅっと握りしめて、立ち上がる。

 彼の鋭く曇りのない瞳と目が合う。


「さぁ行くぞ。次でラストだ」

「……はいっ」


 ジャンゴとカグヤのふたりは、廃墟ビル一階の最も広いスペース、エントランスホールを目指して走り出す。

 走りながら、ジャンゴはカグヤにエントランスホールの状況を説明する。

 そこには残存するグリゴリ探偵社の兵士たち全員……その数十八人……が大挙して押し寄せており、こちらが来るのを待ち構えているという。

 おそらくは、下手に突入するよりも、目標がやって来るのを待って総戦力で袋叩きにした方がいい……これまで送り込んだ兵士がみなジャンゴによって返り討ちされたことを鑑みて、そう考えるに至ったのだろう。


「どうするんですか? 正面から行けば蜂の巣です。かといって迂回するにもそんな道は……」

「いや、真っ正面から行く」


 ジャンゴは迷いなくそう言い放った。

 そのおよそ正気とは考えられない判断に、カグヤは思わず驚いてしまう。


「奴さんの期待を裏切っちゃあ悪いんでね。おまえは不服かい?」


 問われ、しばらく考えたのち、


「……いえ」カグヤは首を横に振る。「どこまでも、あなたについていきます」


 意を決して、カグヤは答える。

 この人は、そういう型破りなひと。

 いちいち驚いていられない。このひととともに生きて戦うと決めたのだ。

 それに……彼がそうする、と言うのなら、それができる、ということだ。

 ならば、わたしは、それを信じる。

 カグヤは強く決断し、ぎゅっと拳銃のグリップを握り直した。


「オーライ。って言っても、さすがにこの局面はおまえさんには荷が重いだろうしな。ま、後ろに隠れてな。あんまり必要じゃないが、できるんならちょいと援護でもしてくれ」

「わかりました」


 ジャンゴはメアーズレッグを腰だめに据え、エントランスホールの入口、その扉の前に立つ。

 この扉の先には、十八人の敵とその数以上の大量の銃弾が待ち受けている。

 しかしてジャンゴはその状況においても変わらず飄々とし、口の端を歪める。

 彼は……笑っていた。


「さて……それじゃあ景気よく暴れるとしようか」


 ジャンゴはソフトパックからタバコを一本取り出し、それを口にくわえた。

 ジッポライターで火をつけ、煙を吐き出す。

 そして──


「|Duck, You Sucker!!《行くぞクズども!》」


 勢いよくドアを蹴破って突入する!

 BRATATATATATATATATATATATATATATATAT! BRATATATATATATATATATATATATATATATAT! BRATATATATATATATATATATATATATATATAT!

 その瞬間、待ってましたとばかりに、大量の銃が火を吹き銃弾が降り注ぐ!

 この情け容赦のない銃弾の雨あられに、哀れジャンゴは蜂の巣に……。


「Yeahhhhhhhhhhaaaaa!!」


 ──なるはずもなく。

 歓喜するような叫び声とともに彼は跳躍する。高く。高く!

 天井スレスレまでのとてつもない飛距離を、人間サイズのバッタかと思うほどに飛び上がり、ジャンゴは空中でメアーズレッグを腰だめに構える。

 BLAM! レバーを操作! BLAM! レバーを操作! BLAM! レバーを操作! BLAM!

 レバーアクションを巧みにこなし、フルオート射撃顔負けの凄まじい連射で兵士たちの頭上から30-30ウィンチェスターの強力な弾丸を放つ。

 次々に仲間が倒れていく中、その銃撃の洗礼を逃れた兵士は銃を上へ向け狙いを定めようとするが、そんなことをしている間にもジャンゴは地上へ舞い降りるかのようにしなやかに着地。

 ……大胆にも並び立つ兵士たちのド真ん中に!

 ジャンゴはメアーズレッグを片手に持ち、大道芸人が技を披露するかのように鮮やかにスピンコックして、引き金を引く。BLAM!

 さらにもう片方の手にはスタールアーミー。

 ダブルアクションの連射性能の高い機構を余すことなく活用し、シングルアクションよりも重い反動とトリガーをものともせず軽々と銃弾を発射する。BLAM!


「L!」


 ジャンゴは腕をクロスさせ、メアーズレッグをスピンコックさせ、再び引き金を引く。BLAM!

 それと同時にスタールアーミーの引き金を引く。BLAM!


「クソッ! クソッ!」「化け物か……!?」「いやだ、死にたくないっ!」「くたばれよぉ!」


 BRATATATATATAT!

 兵士たちは悲鳴とともに反撃を試み、ジャンゴを狙って引き金を引くが……まるでかすりもしない。

 気が動転し、狙いも定まっていない銃弾など、攻撃の意味はなく、そもそも攻撃にすらなりはしない。

 ジャンゴは悠々と銃弾の中を縦横無尽に掻い潜り、避け、的確に兵士たちをその手にかけていく。


「I!」


 ……死神の舞踏。

 今のジャンゴは、手のつけようのない恐ろしいキリングマシーンであった。

 触れれば殺される。触れなくとも、殺される。その様はまるで災害のようでもある。


「T!」


 ジャンゴは手頃な敵に狙いをつけると、メアーズレッグをさらにスピンコック。そして撃つ。BLAM!

 同時にスタールアーミーを撃つ。BLAM!

 それはまさに鬼神がごとき戦いぶりだ。

 ジャンゴという怪物を相手にする兵士たちの間に瞬く間に混乱と恐慌が駆け巡り、伝染病めいて感染する。

 そして、そんな風に恐怖に精神を支配され、戦意を失った者を屠るのは、あまりにもたやすいことだった。

 BLAM! BLAM! BLAM! BLAM! BLAM! BLAM! BLAM!

 放たれるジャンゴの二丁拳銃の銃弾に、兵士たちは為す術もなく倒され……メアーズレッグとスタールアーミーの弾丸が同時に尽きるときには、兵士は残りひとりとなっていた。


「やめろ……やめてくれ!」最後の兵士は、立ち向かうことすらせずただただ情けなく懇願する。「頼む、もう十分だろ? み、見逃してくれ……」


 ジャンゴは今にも無様に泣き出しそうな兵士を退屈そうに眺めながら、弾の尽きたメアーズレッグとスタールアーミーをガンベルトに戻した。

 それから、風が吹くように涼やかに、そして静かに言った。


No way(ダメだね)


 BANGBANGBANGBANGBANGBANG!

 一瞬にしてホルスターからニューフロンティアを引き抜くと、容赦ない六連ファニングショットで最後のひとりを始末する。

 そのとき、ぽとりとジャンゴが口にくわえていたタバコの灰が落ちた。

 十八人。そのすべての兵士が彼ひとりによって倒され、廃ビルのエントランスホールが死体と鮮血で溢れかえり、死屍累々の地獄絵図の様相を呈する。

 ──ジャンゴがタバコを吸い切ったとき、ほぼ一方的な虐殺と言って差支えのない戦闘はちょうどよく終わりを迎えたのだった。

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