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狼のエピタフ  作者: 高橋 久緒
第一章 出逢い邂逅
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5.ギガパイソン

 苛立っていた。

「クソッ!」

蜘蛛の巣を顔に引っ掛けたヴォルクは呟きをを吐き捨てる。

 普段なら、こんなことで怒るようなヴォルクではない。狩りに集中していたら、そんなことで怒っている暇などないからだ。集中力を欠いていた。

 原因は獲物の少なさだ。この未開の原生林に入ってかれこれ2時間近く。この浅いエリアは新人冒険者が多く、獲物が狩り尽くされている、とは言え今日は少なすぎた。

 これ迄に狩れた獲物はゴブリン一匹だけ。それもたまたま遭遇したハグレゴブリン。ゴブリンはたいてい集団で行動する。一匹で活動することはない。しかも、そのゴブリンは片腕が無かった。おそらく何かの事故か、敵に襲われたかで失い、そのせいで仲間から役立たずと追放されたのだろう。

 ゴブリンは動物か魔物かでいうと一応、魔物に分類される。その分類は魔法が使えるか否かで分かれる。つまり、魔法が使えない動物はいわゆる『動物』で、使える動物は『魔物』だ。とはいえ、殆どのゴブリンは魔法など使えないのだが、時々、ゴブリンメイジと呼ばれる魔法を使う珍しいゴブリンもいるため、魔物に分類された。

 知能はあまり高くなく、やたら凶暴だ。容姿は醜く、人間の子供くらいのサイズしかない。そして、明らかに自分よりも強い相手にも平気で向かって行く。獣人を含む人類種と共存しようとする意思も無いため、人型であるにも関わらず、魔物として討伐対象になっている。

 まあ、その分類で言えば人類種も魔法を使うから魔物なのだが、一般的には人類種と敵対関係にあるものを『魔物』と呼んでいる。

 ヴォルクの苛立ちの原因は他にもある。ギルドに置いて来たピーが心配だったこと、それと出掛けに鑑定水晶に表示された『光魔法』だ。

 ヴォルクはがっかりしていた。数年ぶりにようやく覚醒した魔法が、よりにもよってなぜハズレ魔法の光魔法なのか、運が悪い、と。

 この世界には魔法がある。代表的なものは火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、精霊魔法などだが、それ以外にも光魔法、毒魔法、洗脳魔法、予知魔法、透視魔法、念力魔法などいろいろな魔法がある。中にはそれはただの手品だろうというものまであり、玉石混交のカオス状態だ。また、魔法の明確な定義もない。タネも仕掛けもわからない状態で『これは魔法である』と主張したら、それは魔法なのだ。タネや仕掛けがわからなければ本当の魔法と区別のしようがない。

 ただ、唯一方法があるとすれば、鑑定魔法で鑑定してみるということだけだ。例えば、目の前のコップに水を出した自称水魔法使いの人間が、鑑定水晶に触れても『水魔法』表示がされなかった場合、それは手品である確率が高い。飽くまでも確率が高いだけだ。なぜなら魔法と手品の区分が明確ではない上に、鑑定魔法そのものが手品である可能性すらあるのだから。

 かつて『爆炎の魔法使い』と称された人間がいた。手の平から殺傷能力の高い火炎放射器のような炎を出し、人や魔獣を丸焦げにした。鑑定水晶でもちゃんと『火魔法』と表示されていた。

 しかし、あるきっかけでそれがインチキだと発覚した。服の中から袖口に通したパイプで可燃性の液体を噴射していただけだったのだ。

 では、なぜ鑑定水晶は間違ったのか、検証してみればどうもその男、着火だけは念力でしていたようなのだ。その男は、重用されていた貴族の怒りを買い、すぐに殺されてしまったため真相は分からずじまいだが。

 このように鑑定魔法すら完全ではない。

 それとも、念力の有る、無しが魔法と手品の境界線なのか。案外、魔法とはただの念力なのかも知れない、とヴォルクは思った。

 考えてみれば、この世界は一狼の時代の10万年後の世界なのだ。だとすれば物理法則は同じはず。にも関わらず、この世界には物理法則を無視した魔法があるのは変だ。一狼の時代にも魔法に類するものがあったはず。超能力だ。サイコキネシス、テレパシー、予言能力、予知能力、透視能力、霊能力。それらの殆んどはインチキだったとしても、中には本物もいたはずだ。スプーン曲げが出来た!なんて話はよく聞いた。

 ただ、そのくらいの念力=サイコキネシスだったら、一狼の時代よりもこの時代の方が、ヴォルクの肌感覚として100倍くらい多いような気がする。一狼の時代よりも今の時代のほうが、世界人口は圧倒的に少ないためあくまで比率の話だ。

 そうであれば魔法の説明はつく。例えばヴォルクが使用できる水魔法。コップ一杯分くらいの水を空中から出せるというだけの魔法なのだが、それは空気中の水分を念力で集めて結露させたのではないか。確か湿度50%の空気であれば、六畳一間ぐらいの空間から出せたはず。

 一狼の時代には『空気整水器』として実用化、商品化されていた。それは念力ではなく電力を使ってだが。一般家庭にあまり普及しなかったのは供給力とコストの問題があったからだ。水道代よりも電気代の方が高くなってしまうのだ。だが、水道が使えず電気しか来ていないような被災現場では導入されていたはずだ。

 魔法とは念力の応用ではないのか?ヴォルクは考えた。そして魔法覚醒の条件とは念力をどのように応用すれば発現できるかを理解し、認識することではないのか。

 考えてみれば自分が水魔法を使えるようになったのは、冷えた飲み物のコップに結露する水滴を見て空気中には水分があるのではないかと理解した時だったように思う。最初は目の前の空中に薄い水蒸気を出現させるだけだったが、訓練でそれをさらに凝集させて水滴にできるようになった。今では何とかコップ一杯分ぐらい作れるようになった。それもつい最近の話だ。

 コップの水滴を見ても中の水分が漏れているとか、雨を見ても空の神様がおしっこしてるなどと考えている者には念力があっても水魔法は発動しない。理屈が違っているし、認識が間違っているからだ。

 今朝、突然発現したハズレ『光魔法』も偶然ではないはずだ。一狼時代の知識で光に対しての認識が深まり、物理的に集めることは可能だと、今なら解るからだ。

 そういえば昨日の夜中、ふと目が覚めて、ピーの寝顔を見てやろうとしたが、暗くてランプが何処にあるかもわからなかった。月の明かりを集めて照らせないかと考えたが、面倒くさくなってその時はそのまま寝てしまったが、それが『光魔法』発現のきっかけだったのかもしれない

 だが‥、『光魔法』はハズレ魔法だ。なぜならまるで役に立たないからだ。

 森に入る前にヴォルクは試してみた。気持ち意識した空間が明るくなったような気がしただけで、周りの明るさに掻き消されまるでわからない。昼間は役に立たない。

 では夜ではどうかと言えば、以前、珍しい光魔法の使い手に見せてもらったことがあるが、周りから集められる光の量が少なすぎて薄ぼんやりとしかならない上に、念じ続けなければすぐ光が霧散してしまう。せっかく集めた光は一瞬後に30万キロの彼方だ。

 そんなに長時間、意識を集中し念を出し続けるのは無理だ。松明の方がよっぽど役に立つ。

『火魔法』はどうか?ファイアボールとかファイアランスとか、派手で攻撃力が高そうに見えるが、実際はそんな魔法など出せない。瞬間的に火の玉を相手の近くに発生させるくらいで、殺傷能力など無い。精々、髪の毛を焦がすことができるくらいか?

 火炎放射器が、人を丸焦げにできるのは、可燃性の液体をジャバジャバかけて、それが長時間燃えるからである。

 従って、ファイアボールを実現しようとしたら、可燃性の液体を常時どこかから念力で集めてこなくてはならない。そんな強い念力があるなら、直接相手を念力で折り曲げるとか潰すとかしたほうが、よほど攻撃力が高くなる。

可燃性液体なりガスなりを近くに用意しておいてそれを念力ではなく直接噴射して瞬間的な火魔法で着火すれば‥先ほどの『爆炎の魔法使い』の誕生である。

『爆炎の魔法使い』も最初から貴族を騙そうとしていたわけではなく、純粋に自分の魔法を強化しようと工夫した結果なのかも知れない。

 火魔法が有用と判断されているのは、キャンプの焚き火に着火するのに便利というだけだ。同じように水魔法も有用と判断されるのは旅に出るときに重くて嵩ばる水筒を持たなくていいというだけだし、最も有用とされている風魔法も風を起こして、風上に立てば獲物に匂いで感づかれないとか、風で体を後ろから押せば歩くときに楽、船の帆に風を当てれば推進力になると言うくらいだ。

 決して、ウィンドカッターとか魔法攻撃力が凄いからと言うわけではない。ウィンドカッターなどという魔法もない。風で物体は切断できない。かまいたちなども物理学的に否定されている。

 土魔法も一応分類としてはあるが、それはただの念力とどう違うのかまるで分からない。足元の土を、ボコっとずらして、相手のバランスを崩すとか、砂を弾き飛ばして目潰しするくらいだ。人によっては、念力魔法の1種と分類する向きもある。

 攻撃力と言う観点で言えば、最も攻撃力が高いのは念力魔法である、というかただの念力なのだが。しかし、念力魔法でも、人をねじ切るほどの力は無い。せいぜい腕や脚を折るくらいだ。

 このように、この世界に魔法があるのか無いのかで言えば、魔法はある。しかしそれは決して夢のようなファンタジックなものではなく、科学的、物理学的な裏付けがある現実的なものだ。

 いくらエルフや獣人がいるファンタジー世界でも、世の中、それほど甘くはないということだ。『光魔法』が発現したといっても、指からレーザーが出るような事は無いのだ。

 と、そこまで考えた時、ヴォルクはやっと周囲の異変に気がついた。先ほどから、妙に静かなのは気になっていたが、今では、鳥の鳴き声どころか、虫の声すらせず、シーンとしていた。

 慌ててサッと身を屈める。

 やっちまった、とヴォルクは後悔する。致命的なミス。この雰囲気、気配。近くに大型の魔獣がいる。姿勢を低くしたものの、とっくに相手はこちらに気がついているだろう。一方こちらはまだ相手の位置すら確認できていない。考え事に夢中になって、魔獣が支配する未開の森を注意力散漫な状態で歩く。新人でもやらない自殺行為だ。

 たが、今やらなければならない事は後悔することではない。この危機的状況を生き延びることだ。

 ヴォルクは腰のバスタードソードをそっと引き抜く。微かな物音さえ聞き逃さないように、神経を集中させて。

 しばらくそのままじっとする。5分。10分。額から流れ出る汗が頬を伝い、顎からポタリと落ちる。ヴォルクにはその音さえ大音響に聞こえた。

 意を決し、今歩いてきた獣道をそっと引き返そうとしたその時、視界の端に映る巨大な倒木が、かすかに揺らいだような気がした。

 よく見ればそれは倒木ではなく、巨大な蛇の胴体だった。距離にして25メートルの位置。

 太さが直径1メートル以上ある。という事は、全長は20メートル以上あるだろう。魔獣のギガパイソンだ。Bランクの魔獣である。

 通常の蛇であれば、こんなサイズになってしまえば、自重で地上では動けない。水辺か水中にいるしかない。しかしギガパイソンは魔獣だ。魔法を使う。ストレングス(身体強化魔法)を駆使し、念力で体の動きをサポートする。驚くほど俊敏なのだ。

 その上、表皮には鱗がびっしりと生えかなり硬く、胴体の筋肉も丸太のように硬い。ヴォルクのバスタードソードではとても斬れない。ひとりでは勝ち目はなかった。

 Bランクの魔獣はBランクの冒険者が10人ぐらいでパーティーを組んで、キチンと計画を練って、罠を駆使して、ようやく倒せる魔獣なのだ。

 なんでこんなところにいやがる、とヴォルクは思う。ギガパイソンは森のこんな浅いところにいていい魔獣ではない。通常は、もっと森の奥にいる魔獣だ。

 太い枯れ木のような胴体の向こうから、ギガパイソンがその巨大な鎌首をゆっくりと持ち上げる。

 ギガパイソンの移動速度は人間が走る速度よりかなり速い。最早逃げる事すら叶わない。

 ヴォルクは死を覚悟した。

 だが、とヴォルクは思う。タダじゃ死なねえ。目玉の一つでも道連れにさせて貰う。

 そう決意し、身構えた時、ギガパイソンがゆっくりと動き出した。

 ヴォルクはその動きを、呆気に取られたまま、ただ見つめていた。

 ギガパイソンはその巨大な全身をゆっくりと丸め、大きなとぐろを巻いていく。そしてとぐろのてっぺんにその恐ろしい鎌首を乗せると動かなくなった。

 ギガパイソンの目には瞼が無い。透明な鱗が目を覆っているだけなのでわかりにくいが、おそらく寝たのだろう。

 ヴォルクは腰を抜かしたようにその場にへたり込むと大きく息を吐いた。

「‥た、助かったのか?どうなってやがる?」

 その理由は、落ち着いてギガパイソンを観察してわかった。

 胴体の中央より、首に近い部分が大きく膨れていた。何か獲物を捕食した後だ。腹がいっぱいだったのだ。それでヴォルクは見逃された。というより、危険性が無い小物と判断され、無視された。

 ヴォルクはバスタードソードをさやに収め、なるべく音を立てないように、ゆっくりとその場を後にした。

 

 九死に一生を得た。いや、九十九死に一生だ。しかしヴォルクは運が良かったと喜んではいなかった。悔しがっていた。

 運が良かったのは俺じゃねぇ。むしろ、お前だ。Bクラス魔獣、ギガパイソン、いつか必ず、いや近いうちに必ず前を狩ってやる。

 ヴォルクは何故か自信に満ちていた。以前のヴォルクだったら怯え、しばらくは森に入る事はなかっただろう。

 しかし、一狼の記憶が甦った今は負ける気がしなかった。一狼の転生でチート能力は貰えなかったが、ヴォルクは改めて考え直した。

 いや、チート能力、あるんじゃねえか?知識チートってやつならよ。

 ヴォルクの顔は不敵に笑っていた。


 冒険者ギルドに戻れたのは、夕方を過ぎてからだった。ピーのお迎え時間に少し遅れた。ギルドがざわついていた。新人冒険者が2名、昨日から行方不明らしい。多分だが、俺はその2人の居場所を知っている。まず間違いない。

 本来であれば、ギガパイソンの件は未開の森の異状事態として報告したほうが良いのだが、義務ではない。いずれあのBクラス魔獣は自分で狩るつもりでいるので、懸賞金がついたり、討伐隊が組まれたりしないように黙っていることにした。

「ヴォルクさーん!」

買い取り受付の美人窓口嬢、サラがカウンターの向こうで手を振っている。数年前から何かと面倒を見てくれ、世話になっている、頭が上がらない娘さんだ。

「今日の成果はどうでしたか?」

俺はカウンターの前に立つと、腰の皮袋から血まみれのゴブリンの睾丸を取り出しながら答える。

「いや、サッパリ。ハズレだ」

睾丸をカウンターの上のトレーにころがしながら俺は言った。死にそうな目に遭った事などおくびにも出さない。

 ゴブリンの討伐証明部位は睾丸だ。ゴブリンの肉は不味くて食えない上に弱い毒があるため無理して食えば必ず腹痛を起こす。売り物にならないため、討伐したらその場でキンタマを切り落として捨てる。ちなみにゴブリンのメスは討伐数にカウントすらされない。

 唯一売り物になるのがキンタマだけ。繁殖力の強いゴブリンのキンタマは毒抜き、乾燥して珍味として売られるか、粉状にして精力剤にされる。食べた事はないので効果のほどは知らない。

「ゴブリンのキンタマだけですか‥。不猟でしたね‥」

「女の子がキンタマ言うな」

「あはははは」

サラが愉快そうに笑う。

「買い取り金、用意しておきますので先にピーちゃん、迎えに行ってあげて下さい。寂しそうに待ってましたよ」

「分かった、すぐ行く。金は口座に入れといてくれ。ありがとう」

そう言うと俺は2階に続く階段へ向かった。

サラは立ち上がってお辞儀してくれていた。


 階段を駆け上がると俺はまっすぐ託児ルームに向かった。託児ルームの奥で、保母さんと二人きりのピーが寂しそうにしていた。他の子達はもう皆帰った後のようだ。

 俺の姿を見つけたピーは「ヴォルクー!」と叫びながら部屋を飛び出し、俺の腹に顔からタックルしてきた。目にうっすらと涙を浮かべている。初めてピーに自分の名を呼ばれ、俺は少し感動していた。

 保母職員さんもピーの後からゆっくり着いてきた。出掛けに銀貨を渡した保母さんだ。

「ヴォルクさん!大変です!この子、天才です」

内容を聞くと、ピーは物凄い勢いで単語を覚え、今ではカタコトではあるが日常会話くらいならできるようになったとの事だ。字の方は時間が足りなくてまだ10個くらいしか書けないらしいが、ちゃんと教えればすぐに本も読めるようになるだろうとの事。

「へえー!凄いじゃないか、ピー。偉いぞー」

俺はピーの頭を撫でる。

 ピーは俺に抱きついたまま、猫のように顔を俺の胸にスリスリして、クンクンと匂いを嗅いでいる。

「ただ、ちょっと心配なことが‥お昼ご飯、全然食べなかったんです」

と保母さん。

「ああ、この子、すごい偏食でサラダしか食べないんですよ。多分、エルフだからじゃないかな」

「いえ、私もそう聞いていたんでお昼はサラダを多めに出したんですけど、サラダも全然食べなくて‥」

うん?変だなと俺は思い、ピーに直接聞いてみる。

「ピー、どうした?お腹空いてないのか?」

「ピー、ハラヘッターー」

「じゃあ、今日も『豚の止まり木亭』に寄ってサラダ食べるか?」

「食べるーー!サラダー、さらだすきー」

保母さんは困惑した顔をしていた。

 その後俺とピーは、保母さんに重ね重ねお礼をしてその場を後にし、豚の止まり木亭で夕食をとってから宿に帰った。

 ピーは嬉しそうに大盛りサラダを食べていた。


 宿に帰った後、ピーは俺と自分の名前を交互に叫んでひとしきり騒いだ後、疲れてベッドで眠った。俺が少し叫んだだけでも怒鳴り込んでくる女将さんは、ピーが騒いでも何も言ってこない。何故だ、解せん!

 ピーの天使のような寝顔を見ながら俺は悩んでいた。託児所で保母さんが言っていたことが妙に頭に引っ掛かっていた。あの保母さんは嘘など言っていないだろう。託児所では昼食を食べなかった、そんな嘘をついたところであの保母さんには何のメリットも無い。と言う事は事実なのだ。

 ピーは俺と一緒でないと食事を摂らないのか?ただでさえサラダしか食べず、育ち盛りのピーの必要摂取カロリーを満たしているとは思えないのに。

 ピーは相変わらずガリガリだ。あの日、ピーは一晩で5歳から15歳まで急成長した。身体に急激な負荷がかかっているはずだ。本来なら食事を大量に摂取して身体に充分な栄養を送り込まなければならないはずなのに、サラダしか食べない。しかも俺がいないとサラダも食べない。

 これはマズイのではないか。とにかく、エルフの生態が謎だらけだ。取り返しが付かないことになる前にエルフのことをもっと調べる必要がある。明日、ギルドに行ってエルフの生態に詳しい人を誰か紹介してもらおう。そう、俺は決めた。


 その夜、ピーは俺のベッドに潜り込んできた。昼間、一人にされてよほど寂しかったのか。

 ギガパイソンから逃げ出したあの後、猛烈に腹が減ったのでゴブリンのキンタマ、食っちまおうかと思ったがやめといて正解だった。

 今はピーの身体はガリガリでまるで欲情などしないが、顔は天使のように可愛い。超美少女。顔だけならドストライク。

 キンタマ食ったら悶々としていたかも知れない、と俺は思った。

ちょっと変更。

パイソンに瞼は無かったm(_ _)m

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