1. 始動
「だからよお、ヴォルクは言ったんだよ。考え方によったらワイバーンなんて一番狩りやすい魔獣だって。な!ヴォルク!」
「なるほど!さすがっす。さすが、タイガーの姐御!」
ゴロンゴロが目を輝かせてリリーを見つめている。
「飛行系の魔獣なんてよ、光魔法で目潰しくれてやりゃ、飛べなくなって落ちてくるんだからよ。まあ、もっとも、俺なんかよ、光魔法が強すぎて、目潰しじゃなくて、13匹も丸焦げにしちまったけどな!な!ヴォルク」
「うひゃあ、パネェ!スゲエっす、姐御!」
「要はよぉ、魔獣狩りなんて、ここよ、ここ。ここ次第よ」
そう言うとリリーは自分の頭を指でコツコツと叩いた。
「うるせぇぞ!テメェら!」
クジュ王国スクルド領で発生した大規模スタンピード殲滅事件から一ヶ月ほどが経過した。
あのスタンピードは、またしても事件扱いされていた。やめてくれ!目立つから。
それよりも、ゴロンゴロ、お前、何で俺の個室でくつろいでんだよ?
スタンピード事件以降、ゴロンゴロはすっかり、リリーの舎弟に成り下がり、リリーの後を付いて回るようになった。ゴロンゴロが会長になって『タイガーリリー・ファンクラブ』の設立の動きもあるようで、ギルドに顔を出せば、タイガーが出てくることが多くなった。
リリーが出てくれりゃ、書類整理とか事務とか、そういった秘書的なこと任せられるのに。おかげで俺とサラが事務机で仕事して、バカ二匹が応接セットで大騒ぎ。いつから俺の個室は不良冒険者の溜り場になったんだよ!
かと言って追い出すわけにもいかない。以前、お前らうるさいから出て行けと、サラが追い出したことがある。リリーはゴロンゴロを引き連れてギルド中を徘徊しだし、職員事務室やロビーが大騒ぎになった。
タイガーを出さなきゃいいかと言うと、そうでもない。こんなこともあった。
サラ先生から書類が溜まってるから整理しに来いと命令を受け、ピー人格のリリーを連れてギルドに顔を出した。リリー人格を呼び出してやらせようか考えたが、リリーを便利屋みたいに使うのも気が引けて、自分で処理してた。
リリーが来ていることを聞きつけて早速ゴロンゴロがやってきてリリーの世話をし始めた。ってか、応接でリリーとおしゃべりしてただけだが。
そのうち、サラが新ギルマスと打ち合わせがあるからと退室した。俺は慣れない書類整理で異様に喉が渇いてきた。お茶を頼もうとしたがサラ先生いないし、自分で淹れるのも面倒くさい。
「ピー、ラウンジにコーヒー3つ出前頼んできてくれ。ゴロンゴロも飲むだろ?」
冒険者ギルドのラウンジならツケがきく、ってか、口座引き落としで現金はいらない。
「あ、『雷帝』のアニキ、それならあっしが行ってきますよ、リリー姐さん、待ってて下さい。すぐ行って来ますんで、いや、貰ってきちまうか。持ってきますよ」
ソファから立ち上がり、急いで部屋を出て行こうとするゴロンゴロの手をとってリリーは言った。
「ダメです!ゴロンゴロさん。このお仕事は私のものですよ。あげません」
「いや、でも姐さん‥」
「ゴロンゴロさんは座ってお待ちになって下さい。いつもお世話になっていますから」
「いやいや、世話になってんのはあっしの方で‥」
「ゴロンゴロさん、こういう時は殿方は腰を据えて待っているものです」
そう言うとリリーは、いそいそと個室を出て行った。
「‥‥‥」
ゴロンゴロはぽーっとして、リリーが出て行ったドアを見つめていた。
「‥雷帝のアニキ‥、あの方、リリー姐さんは人間ですかい?」
「いや、人間じゃなくてエルフだが」
「タイガー姐さんも人間離れした凄えお人だけど、リリー姐さんは‥天使ですよね?人間じゃねえ。天使だよ!ああ‥」
「いや、だからエルフだって」
ゴロンゴロは顔を赤らめてぼーっと天井を見つめていた。そして、突然立ち上がった。
「やっぱり、あっしも行ってきます!あんな天使がロビーなんか行ったら人だかりが出来ちまう!」
急いで部屋を飛び出して行くゴロンゴロ。
その後、ラウンジから俺の個室まで、コーヒーが載ったトレーを持ったリリーを先頭に、ゴロンゴロと大勢の男性冒険者の行列ができ、パレード状態になった。
そのゴロンゴロはスタンピード事件から1ヶ月経っても移籍する気配が無いので、俺はどうするつもりなんだと尋ねた。
ゴロンゴロは土下座しながら言った。
「雷帝のアニキ!すいませんっ!あの賭けは無かったことにして下さい。あっしは子分として、タイガーの姐御を御守りしなきゃいけないんです!タイガーの姐御『命』なんです!ランクをBに落としますんで、どうかここにいさせて下さい!」
「はぁ?何言ってんだ、お前。ベテランA級冒険者が」
ゴロンゴロはこう見えてもA級冒険者の中でも中堅クラスの立派なA級だ。『戦神』の二つ名は伊達じゃない。肉弾戦だったら俺などゴロンゴロの足元にも及ばない。地竜を戦斧一本で狩れる冒険者などゴロンゴロ以外に他のA級にもいないだろう。
本来なら、いや、現状でもすごい奴なのだ。強力な魔法を撃ってくる魔獣や飛行系はさっぱりだが。
賭けはチャラにすることにした。というのも、俺とリリーは長期遠征する可能性が出てきたためだ。暗黒竜絡みで。
「カスパールさんは、何の話でしょう?御主人様」
「ピー、その『御主人様』というのはそろそろやめろ。俺とお前もA級になって、これから公式な場に出ることも多くなる。俺とお前は対等なパートナーだ。周りに変な誤解をさせ、トラブルを生みかねん」
「分かったわ、ヴォルク」
リリー人格のリリーと俺は、新ギルマスのカスパールに呼ばれ、ギルマス室の前にいた。ドアをノックし入室する。
するとそこには、新ギルマス・カスパールの他に意外な人物が1人いた。この世界の最高権力者、冒険者ギルド総合本部ギルド長・メルキオールだ。
「ようこそおいで下さいました。『ルミナントブレイブ』ヴォルク様、リリー様」
そう言うとメルキオールはカスパールと共に、俺たちに深く一礼をしてから、部屋の中央にあるソファに着席するように勧めてきた。
よく見ると、ギルマス室の四隅をSPらしき人間が警護で配置されていた。
「ルミナントブレ‥?何だ、そりゃ」
俺はソファに腰を降ろしながら尋ねる。
それに対して、ギルド長、メルキオールではなく、リリーが答えた。
「ようやく認めたのね、メルキオール」
「どういうことだ?何なんだ、そのルミ何とかってのは」
「ヴォルク、ルミナントブレイブ、『光り輝く勇者』、いわゆる伝説の『勇者』のことよ」
「はあ?ゆうしゃ?何のことだ?何の話だ?」
この前のスタンピード事件では危うく『勇者』の二つ名をつけられそうになったが、それとはまた違うようだ。冒険者ギルドが?認めた?どういうことだ。
「ヴォルクは気付いてなかったのね。この前の総合本部でのギルド長との面談、あれはヴォルクが『勇者』としての要素を満たしているかどうかの確認だったのではないかしら?」
「さすがはリリー様。お見通しでしたか」
そう言いながら、メルキオールとカスパールもソファに着席した。
リリーはメルキオールとカスパールを睨みつけながら続ける。
「『勇者』には必ず三つの印が現れる。一つは転生者であること、二つ目は強力な従者を連れていること、最後は神からのギフトを持っていること。御主人様、いえ、ヴォルクは全てを満たしているわ」
「その勇者認定の秘儀は極秘情報なのですが、畏れ入りました、リリー様。エルフ国からのリークですか?」
「エルフ国?あるの?エルフの国、それは知らない」
メルキオールは答える。
「我々も詳しくは知りません。あくまで、伝説です。暗黒大陸の奥地、古代竜に守られし伝説のエルフの王国。リリー様はその末裔、もしくは女王かと推測しておりましたが」
リリーの顔が蒼ざめてきた。
「ヴォルク、どうしよう‥私のせいで、とんでもない未来を選択してしまったかも‥」
「ちょっと待て。混乱してきた。ギルド長、今日は何の話で俺たちを呼びつけた?」
「失礼しました。まず、その話が先でした。本日、勇者様に拝謁を賜りましたのは、先週開かれました正式な冒険者ギルド役員会で、全会一致でヴォルク様が勇者認定されました。その旨をお伝えすること。そして、冒険者ギルドは今後、ヴォルク様の指揮下に入ることとなります。そのため、今後の活動方針の擦り合わせができればと」
リリーが目を見開きながら言う。
「あの噂は本当だったの?」
「ピー、どういうことだ?俺にも分かるように説明してくれ。頭が混乱しっぱなしだ」
「ヴォルク、冒険者ギルドは、単なる職業ギルドとしては権力を持ち過ぎている。本当は職業ギルドではないのではないか。裏の目的がある。その実態は『勇者』を探し育てる組織なのではないか、という噂。噂ではなかったようね」
「その噂、いくら火消ししても消えんな、カスパール」
「少し、先代勇者、クジュ王国でやり過ぎましたかな」
「待て、ということは、冒険者ギルドとは、冒険者の為の職業ギルドではなく、勇者のためのギルドで、それが俺を『勇者』認定したという事か」
「その通りでございます。ルミナントブレイブ様」
「その呼び名はやめろ、メルキオール。まずいな‥俺が勇者なんてことになったら‥。それは対外的に公表されたのか?」
「ヴォルク様のご懸念はわかります。なので、まだ公表は致しておりません。勇者認定に関しては極秘扱いで、役員止まりの措置をとっております」
「そうか」
「ただ、それを匂わせる通達は各国に出しました。ヴォルク様は既にワイバーン事件、スタンピード事件で目立たれてしまいましたので、各国を牽制する必要がありまして」
「確かに‥やりすぎたか」
「既に暗殺の動きが出てきましたため、二つ程、処理しました」
リリーは驚いて言う。
「あれは、あなた達だったの!?」
「あれって?」と俺。
「ダンメルフィエスタ共和国の防衛大臣の暗殺とクジュ王国王太子殿下の病死、そうよね?」
「冒険者ギルドはクジュ王国を見限りました。バカが多過ぎます。今後、冬の時代が訪れるでしょう」
「‥‥もう、2つも‥俺たちを狙って?メルキオール、俺はどうでもいい。リリーは絶対に守れ!いいな?!」
「もちろんでございます。ヴォルク様とリリー様は絶対にお守りします。それなくして冒険者ギルドの存在意義はありません」
「まだ分かってないな、メルキオール。役員会で俺を『勇者』に認定したと言ったな。それは早計だったかも知れんぞ。もしリリーに何かあれば、俺は勇者ではなく『魔王』になる。この世界がリリーを殺したら、俺はこの世界の全生物を殺す」
「!!‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥ヴォルク、そんなことをしてはダメ」
「黙れ!この世界がお前拒むなら、俺はこの世界を拒む。お前がいないこの世界に何の意味がある!お前は絶対に死なせない!」
「ヴォルク‥」
リリーが俺に抱きついてきた。
「ヴォルク、それは逆よ。あなたは私が守る。あなたを守るために私は生まれてきたの。あなたのために死なせて」
「リリー、それは俺が許さない。お前は幸せになるために生まれてきたんだ」
「‥‥‥」
リリーはもうそれ以上、何も言わなかった。
メルキオールとカスパールは驚愕した。役員会では、ヴォルクは歴代最強の勇者ではないかと言われた。それがまさかの『魔王』宣言。
この勇者は最強ではなく『最凶』ではないのか?
ヴォルクを『勇者』にするか『魔王』にするのか、それはこの世界次第ということ。
キーは、勇者の従者だと思っていたリリーだ。この2人が揃っていないとヴォルクは『勇者』として機能しない。最悪、『魔王』になる。
いまだかつてないパターンに2人は戸惑っていた。ギルドの勇者戦略の見直しが必要だった。『勇者』よりも『従者』を優先して守らなければならない。
その後、ギルドからの公式の勇者宣言はしないということが決められた。しかし、リリーを守るためにS級の肩書きと権限はいる。そのために暗黒竜は討伐するが、暗黒竜を討伐した時点でも勇者宣言は無し。その後、大陸の統一、もしくは新たな国の建国に動くなら勇者宣言をした方が有利なのだが、そんな気は無く、暗殺リスクを高める『勇者』の肩書きは不要だということになった。
自分の国を作る、もしくは大陸を統一して、帝王として君臨することにヴォルクは興味も関心もなかった。リリーと2人で安心して平和に暮らせればそれで良いという。
これほど無欲な勇者も今までに無いパターンだ。
そして、暗黒竜討伐のスケジュールも話し合われたのだが、その前に、ギルドが把握している暗黒竜に関する全ての情報が開示された。
——暗黒竜。
それは30年前、突然、暗黒大陸から海を渡って現れた。
暗黒大陸とは、我々が今いる大陸の端から更に大海を隔てた彼方にある未知の大陸だ。わかっていることは、そこは、数千年の寿命を持つ古代竜といわれる巨大な地竜種が支配し、他からの人類種の入植を拒んでいることだけだ。
暗黒竜はそこから突然現れた。
かつて初代勇者の時代、我々の大陸と暗黒大陸は全面戦争の危機が訪れた。しかし、初代勇者の力を以ってしても古代竜には到底敵わぬ実状が判明し、戦争は回避され、その後、初代勇者没後、人類種代表『東方の十賢者』との間において、不可侵条約が締結された。
それを破っての突然の侵攻であった。
大海に面していたスリゼイ王国、当時、豊富な海洋資源に恵まれ、経済的に最も繁栄していた人類種の国は、たった3日で滅亡した。
暗黒竜が放つ、強大な魔法ブレスが都市を跡形もなく破壊し、抵抗する人類種を蹂躙した。
スリゼイ王国滅亡後、侵攻の矛先は、北方に位置するルミナリシス聖国、初代勇者によって建国された国に向けられたが、その手前で、暗黒竜は突如眠りについた。
古の条約ではあったが、『東方の十賢者』=冒険者ギルドは暗黒大陸、古代竜族に激しく抗議した。
古代竜族側の事情説明によると、こちらの大陸に攻めてきた暗黒竜は病気なのだという。古代竜の中でもかなりの高齢で、人間でいうアルツハイマー、つまりボケを発症してしまい、コントロールができないらしい。
徘徊できないように隔離していたが、隙をついて逃げ出してしまい、人類種側大陸に渡ってしまったとのこと。それに気付いて、慌てて遠隔で強力な睡眠魔法で眠らせたが、その時にはすでに国を一つ滅ぼした後だった。
眠った暗黒竜を古代竜側に引き取るにしても、大陸内部に行き過ぎてしまっており、ある程度、自力で歩かせなければ移動させることもできない。そのために睡眠魔法を解除すればまた暴れ出す。
かと言って、古代竜側で殺すこともできない。古代竜族には、その個体数の少なさから、かなり厳しい同族殺しを禁じる掟があり、それは条約を上回る。
従って現状、ただ睡眠魔法を掛け続ける以外、何もできない状態であり、出来れば人類種側に時々現れる、異常に魔法が強い個体、すなわち『勇者』に殺して欲しいと頼み込んでくる始末。
ただしその際には、睡眠魔法を掛けた状態で殺されてしまうと、こちらの『掟』に抵触するので、睡眠魔法は解除させてもらうとのこと。
そんな自分勝手な言い草があるかと交渉するも、滅亡した国と、暗黒竜討伐の際に生じる被害は賠償するので、それ以外に方法は無く、それがダメなら全面戦争になる。古代竜側にとっても、『勇者』の強力な戦力は脅威であり、出来れば全面戦争は避けたいという話になった。
交渉は膠着状態に陥り、冒険者ギルド、というより十賢者は実をとった。古代竜側から巨額の賠償金、暗黒大陸には貨幣経済は無いので物資としてだが、を受け取り、暗黒竜は眠らせたまま放置、その間に『勇者』の再臨を待つか、自力で暗黒龍を討伐できる冒険者、すなわちS級を育てることになったのである。
この交渉の盾にした古の条約は、当時の各国の了承を経たものであるのか、それとも当時の『東方の十賢者』が独断で締結したものなのかも定かではなかったため、この交渉による賠償金の受け取りは、各国に秘されたまま、冒険者ギルドが独占した。
暗黒龍討伐懸賞金の原資となり、S級を育てるための冒険者ギルド組織強化の原資となった。
こうして冒険者ギルドは国際社会を裏から牛耳る、国家を上回る存在になったのである。
こうした実状があるため、冒険者ギルドが暗黒竜を操りスリゼイ王国を滅ぼしたと噂されたのだ。スリゼイ王国はクジュ王国に戦争を仕掛けようとしていた、というのは、撹乱のために冒険者ギルドが流したデマだ。
S級冒険者はここ100年近く出ていない。暗黒竜出現以前の70年間は国家滅亡級の大災害魔獣が出なかったこともあるが、暗黒竜を討伐できるS級はこの30年間では育たなかった。
だがようやく待望のルミナントブレイブ、『勇者』が現れた。
やっと暗黒竜討伐の目処が立ったのである。暗黒竜にかけられた睡眠魔法はあと10年しか持たない。10年以内に討伐の戦術を立て、一度暗黒大陸に渡り、古代竜族から討伐の許可をとり、いつ睡眠魔法を解除するか、タイミングの擦り合わせをしなければならない。
兎にも角にも、ヴォルク達で暗黒竜を討伐できるのか、見て確認するしか無い。眠っている暗黒竜を視察するのが先決だ。
いつ視察に出発するか、すぐには決められないので、スケジュール調整して、サラを通して詰めていくことになった。
ヴォルクとリリーが退室してからも、メルキオールとカスパールはしばらく話し込んでいた。
「しかし、今上勇者様は異例づくめだな。まさか、この世界全てよりも従者1人をとるとは‥。欲がないのか?なのに、最強ときている」
メルキオールにカスパールは答える。
「欲が無いのではありますまい。勇者様は、既に全てを手に入れてしまったのでしょう。あのリリー様こそ、勇者様の全て。リリー様以外に欲しいものなど無いということでしょう」
「暗黒竜討伐の救世行動など、リリー様を守るついででしかないということか。まさか、『勇者』守護よりも『従者』守護を優先する事になるとは」
「役員会で揉めますな」
「勇者様のご指示だ。仕方あるまい」
「異例づくめのついでにもう一つ異例を入れてはどうでしょう。史上初の『聖女』認定とか。勇者様にご相談してからですが」
「ふむ、冴えておるな、『未来を視る者』カスパール。『勇者』認定同様、『聖女』認定も役員会内での話で、公的なものにならぬから、どうとでもなるな。良いアイデアであるな。未来を見たか?」
「ははは、老ぼれの戯言でございまする」
「妙に明るいな、カスパール。勇者様の『魔王』発言には驚いたが、未来は変わっておらぬか?」
「安心召されよ。勇者様は暗黒竜を無事討伐し、世に平和をもたらされた後、暗黒大陸に旅立っていかれます。伴侶を伴われて。魔王のまの字も出てきておりませぬ」
「理想的な勇者様であるな。建国だ大陸統一だとなればまた動乱に見舞われるからの」
俺とリリーは、いよいよ暗黒竜討伐に動き出すことになった。




