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狼のエピタフ  作者: 高橋 久緒
第二章 飛翔
20/23

9. 王都観光

「君は『転生者』かね?」

冒険者ギルド総合本部・ギルド長の最初の質問はこれだった。


 ここは、王都クジュロニアにある冒険者ギルド総合本部ビル最上階にあるギルド長室である。

 総合本部ビルは、クジュロニアの最奥、荘厳な王宮がある北部から少し離れた西部にあり、ある意味、王宮より立派な建物だ。近代建築の粋を極めたそのビルは、世界最高層の20階建の人工石と高価な透明ガラスを大量に使用し、凝った意匠で冒険者ギルドの権勢を物語っていた。

 クジュロニアでも、この地域一帯が最も栄えている、繁華街だ。


 冒険者ギルドは他の職業ギルドとは違い、自治権を持っている。つまり、ギルドの名を騙った、領土を持たない国だ。そして現在、この大陸にある主要4ヶ国で最も強大な国がクジュ王国だが、実質の最強国家は冒険者ギルドなのだ。

 そのギルド長ということになると、一狼の時代で言えばアメリカ大統領にあたる。

 この世界の実質的リーダー、最高権力者と面会している。


 ギルド長室に呼ばれたのは、俺とリリー、そしてサラの3人だ。入室の許可を得て中に入ると、ギルド長の執務机から少し離れた、ほぼ部屋の中央に椅子が2脚並べてあった。そして、入り口近くに1脚、サラの分だ。

 世界最高権力者でありながら、ギルド長室自体は極めてビジネスライクな作りで質素であった。どこぞの王様のような金ピカに飾った謁見の間のような作りでは無い。

 入室すると、すぐにサラは椅子の配置から、自分の椅子を見分け、その前に立つと着席の許可が下りるのを待った。

 俺とリリーは中央に並べられた椅子まで進み、その前に立ったのだが、リリーは着席の許可が下りる前に座ってしまった。ちなみに今日はピー人格だ。一言、言っておいてやるべきだった。でも可愛いからOK。

 ギルド長もすぐに着席の許可を出してくれたのだが、リリーは慌てて立ち上がり、一礼してから座り直した。そういう素直な仕草にはほんと癒される。

 

「遠いところをわざわざ呼び出して済まなかったね。私がスクルドまで行ければよかったのだが、何分忙しくてね、申し訳ない」

ギルド長が会話を切り出してくる。

「いえいえ、とんでもない。こちらこそ、出頭まで時間が掛かってしまい、申し訳ないです」

「さて、この後A級認証式のセレモニーも控えててあまり時間もない。あ、ヴォルク君もリリー君も出席して行くんだろ?」

「ええ」

「はい」

「じゃあ、早速。何点か聞きたいことがあってね。まず一つ目は、ヴォルク君、君は『転生者』かね?」

 冒頭の内容である。俺は少し驚いた。が、表情に出してはならない。ギルド長が敵か味方かもわからない。どう答えるのがベストなのか、判断できるような情報も無い。

 俺が転生者である事は、リリー以外には誰にも話してない。ギルド長はどこからこの情報を掴んできた?それともカマかけか?

 俺は取り敢えずとぼけてみることにした。

「てんせいしゃ?何ですか、それ」

「ああ、知らんかね。世の中にはね、稀に自分の過去世を思い出す者がいるんだよ。生まれながらに以前の人生を憶えている者、あるいは何かの事故やきっかけで思い出す者、様々だが、そういう者たちを我々は『転生者』と呼んでいる」

「へえー、そうなんですか。じゃあ俺は違いますね。生まれてからのことしか記憶にありませんし、過去の人生を思い出したなんてこともありません」

「‥ふむ‥」

ギルド長はあからさまに残念そうな顔をしている。

 回答を間違えたかも知れない。少し修正を入れる。

「ただ‥、妙にリアルな夢なら時々見ますね。科学が発展してた時代の」

 その時、ギルド長の机の左手にあるカーテンで仕切られた奥から、誰かが小さく「おお」と声を漏らしたのを俺は聴き逃さなかった。

 奥に誰かがいる気配は感じ取ってはいた。魔力が強い者もいるようで、リリーもとっくに気付いているはずだ。

 ギルド長は小さく咳払いした後、続ける。

「ふむ、それは過去世の可能性が高いな。人類は2万年くらい前、古代だな、高度な科学文明を築いていたらしい。ダンジョンなどで時々その時代の遺跡がドロップするからな」

 2万年前?俺は一狼の時代を勝手に10万年前と思い込んでいたが、そんなに近いのか。この世界が一狼時代のファンタジー要素が強いのも納得できる。別の文明を挟んでいないなら。

「次の質問に移ろう。君の例の『転移魔法』についてだ。うちの魔法職の学者に言わせると、そんな魔法は、かなり魔力が高い魔法使い100人集めたってできないそうだ。失礼だが、君の魔力はそれほど強くないと聞いている。なぜそんな魔法が使えるのかね。それは、君の過去世、というか、よく見るという夢の世界と何か関係があるのかね」

 俺が転生者であることがバレたな、と観念し、正直に話すことにした。

「そうですね‥、あります。その世界の知識を応用して、魔力が弱い俺でも強力な魔法が使えるようになりました」

「‥やはりそうか‥。わかった。よくわかった。済まなかったね、君の秘密を探るようなマネをして。冒険者にとって、その辺の秘密は極秘事項だ。命に関わるからね」

「いえ、大丈夫です。それより、もう能力は解放してもいいんですかね?A級になりましたし」

「ああ、構わんよ。気付いた国はもう気付いたろうからね。ワイバーン、13匹はやりすぎたね」

 やっぱりかー、俺もそう思ったけどね。リリーを早くA級にする必要があったから仕方ないが。

「それと最後に、君、移籍する気はないかね?総合本部付きに。もちろん、リリー君も一緒に」

 総合本部付き!?何だ、それは。聞いたことがない。いや、何十年か前にそういう例があったという話だが、ここのところそんな例は無かったはずだ。

 冒険者は基本的にどこの支部、本部に移籍しようと自由だ。だが、各国本部ギルドになると国レベルの依頼しか無くなるため、依頼の数がぐっと減るし、強制依頼も多くなるため、冒険者としての自由度も狭まる。そのため、本部に所属する冒険者は少ない。

 だが、同じA級、B級、C級冒険者でも本部所属だと支部冒険者よりワンランク上に見られるため、稼ぎよりステータスを求める冒険者が所属する。貴族等が多い。

 そして、総合本部には基本、冒険者は所属していない、というか、できない。稀に総合本部からの要請でA級のトップクラスが所属する程度で、ここ10年くらいそんな冒険者は出ていない。

 俺のようなA級になりたての冒険者に要請が来るなどあり得ない。ギルド長の思惑が読めない。

「いえ、遠慮しておきます。スクルド支部が好きなんで」

 もう邪魔なA級、追い出しちまったよ。これで俺たちも移籍したらギルマス、泣くわ!

「そうか。しかし、そうか‥残念だが諦めよう。もう、時間だな。面談はこれで終了しよう。後で、認証式でまた会おう。最後にリリー君、ヴォルク君を頼むよ。しっかり支えてあげてくれ」

「はい!任せて下さい!」

 ここでもまた違和感を覚える。呼び出されたのは確かに俺だが、同行したリリーの方が、魔力量や昇格スピードから言っても冒険者としての資質は上だろう。なのに、ギルド長はリリーを俺の従者程度にしか見ていない。どういうことだ?わからねー。

 面談は終わったが、何のための面談だったんだ?今後のギルドの動きもさっぱりわからん。ただ、敵では無さそうだ。それで今は充分か。


 ギルド長との面談終了の1時間後、総合本部1階の、半地下にあるホールでA級冒険者認証式のセレモニーが始まった。セレモニー参加の新A級冒険者は俺たち以外に3名いた。皆、新調した、高そうなピカピカな装備で着飾っており、普段の薄汚れた冒険者装備で参加してるのは俺たちだけだった。

 せめてリリーにだけは綺麗で優雅な装備を新調してやれば良かった。金はあったんだから。C級時代が長かった俺の貧乏性が出て、リリーに恥ずかしい思いをさせたんではないかと思うと申し訳なかった。

 リリー、ごめんよ。父ちゃん、貧乏性で。

 セレモニーでは、新A級冒険者各個人にA級認定証がギルド長から手渡された。まあ、大事なのはA級のタグなので、こんなのはただの紙切れだが。

 順番は他の3名に続いてリリー、そして俺が最後だった。

 ギルド長は俺に認定証を手渡す時、涙ぐんでいたような気がするが、気のせいだ、多分。

 そう言えば、こんなただのよくあるセレモニーにギルドの9名の役員が全員、貴賓席に並んでた。役員は各国本部のギルマスを兼任してることも多いので、わざわざ他国から帰京して来たのだろうか。ってか、面談の時、カーテンの向こう側にいたの、こいつらだろうと思って、後でリリーに確認したら、魔力の波長が同じなので、間違いないとのこと。

 この後、ギルドの楽隊の演奏を聴いてから、立食パーティーだったのだが、1人気になる奴がいた。

 新A級冒険者3人のうちの1人だったのだが、一番立派な金属製の鎧を着込んで、ガシャガシャ音をさせながら、やたらリリーをナンパしまくってきた。

 リリーは、ピー人格の時は相変わらずサラダ大好きなので、美味しそうなサラダや、甘い珍しい都会ならではのお菓子を食べたがったのだが、そいつに邪魔されて憤慨していた。

 そいつがあまりにしつこいので、俺が割って入ったのだが、そいつは悪びれもせずに言った。

「しつこいって言われたって無理だよー。これだけ素敵なレディは千年、いや一万年探したって巡り会えないんだから、しつこくもなるって!」

「悪いな。俺のパートナーなんだ。諦めてくれ」

「そっかー、君の彼女なんだー」

 そう言うとそいつは俺の目をじっと見てから言う。

「あー、ダメだ。君には敵いそうにないや。リリーちゃんとは魂で繋がってるね。こりゃ無理だ。諦めるよ。あんましリリーちゃん泣かせないでね。君はしょっちゅう泣かせてそうだから」

 そう言うと、今度はサラをナンパしに行った。なんか憎めない奴だった。

 それがシンとの初対面だった。後に総合本部ギルド長になる奴だ。この世界で俺の盟友と言えるのは後にも先にもこいつだけだ。ちなみにタイガーはこいつを毛嫌いしてる。


 立食パーティーも終わり、一休みしてから俺はリリーを誘い、夜のデートに出掛けた。

 パーティーが終了したのは夕方になってからだ。黄昏に染まった王都は、魔石をふんだんに使った街灯やイルミネーションで昼よりも幻想的で華やかな雰囲気になる。

 サラに先にホテルに戻るように言ってから、2人で王宮前広場の公園に散歩に出掛けた。

 

 馬車に揺られて一週間、スクルドの街からこの王都まで掛かった。

 王都に着いたのも夕方だったので、初日は何もせず、ホテルでゆっくり休んで長旅の疲れを癒した。

 2日目はサラと3人で王都の街中を観光した。ちなみにサラも王都は初めてで、3人ともお上りさん状態だった。

 そして3日目の今日、王都での全てのスケジュールをこなし、もう1日王都を観光してから、5日目に転移魔法で帰る予定だ。

 明日の観光にはサラは来れないそうだ。総合本部で打ち合わせがあるそうで残念がっていたが、多分、嘘だ。俺とリリーに気を使って、2人きりのデートをさせてくれるつもりなのだ。ほんと、サラ先生には足を向けて寝れない。

 また、何かで埋め合わせしないといけない。

 あと、今回の旅行?出張?にはリリー人格もタイガー人格も一度も出てこなかった。

 ここのところ、狩やA級会議などではリリーやタイガーが出ていることが多かったので遠慮してるんだろう、とのこと。誰が出たって全部私なんだから遠慮する事ないのに、とピーは言っていたが、俺が一番癒されるのはやっぱりピーだ。

 どうして俺のあんな適当でいい加減な子育てでこんないい子が育ったんだ。天使か?天使だろ本当に!明日はこの天使と一日中デートだ。

 考えて見れば、ピーはまだ3歳の子供なのに、どこにも遊びに連れて行ってあげたことなどない。たまに街の外に出れば、魔法実験や狩ばかりであった。

 明日は1日遊ばせてやろう。明日はどこに行きたい?何をしたい?そんな会話をしながら、公園散歩をし、ホテルに帰った。


 翌日の観光デートは、ホテルでゆっくり朝食をとった後、あちこちを見て回った。繁華街を歩き回り、都会の田舎には無い、ハイセンスな衣服やドレスを何着も買った。

 リリー用にも少しセクシーなもの、タイガー用には活動的な男っぽいパンツスタイルの服を選んだ。

 全てピーに着させて確認したが、本当に美人は得である。何を着せても似合ってしまう。

 アクセサリー類も、ピー、リリー、タイガー用にそれぞれ何点か買って、ピーにはその場で着けさせた。やはり、衣服と同じで美人は何を付けても似合う。

 サラやミアにもお土産として購入するのは忘れない。

 昼はおしゃれなカフェで軽く済ませ、繁華街の出店で買食いしながら色々なお店を見て回り、最後に王宮の見学できるエリアを見た後、王都一と評判の高級レストランで夕食。

 最後にバーでお酒を飲もうかと思ったが、エルフは肝臓が弱く、アルコールがダメなので、王都で一番高いビル、冒険者ギルド総合本部の屋上に行き、王都の夜景を楽しんでから。ホテルに戻った。

 総合本部の屋上で、2人きりになった時、ピーに今日は楽しかったか、感想を聞いたら、幸せ過ぎて泣きそうだと言って、本当に泣いてしまった。

 また、ピーを泣かせてしまったが、これはしょうがないよな?


 翌日、王都の正門から徒歩で外に出て、街道を外れた、人目の無いところで転移魔法でスクルドの街に帰ってきた。

 そういえば、認証式の後から俺たちに監視が付くようになった。多分、ギルドの者だろうが、監視を付けるなどという話は聞いていないので、遠慮なく王都に置き去りにした。一週間もすればスクルドにやってくるだろう。



 さて、ギルド長との面談の後、ギルド長と役員たちはギルド長室でこんな会話をしていたらしい。


「‥確定か」

「おおお!‥まさか、まさか我らの代で盟主様にお会いできるとは‥おおお‥」

「全てのピースは揃った。『転生者であること』、『強力な従者を従えていること』、『神のギフトを持っていること』。間違いない」

「それより見たか!あのエルフの魔力量!歴代S級すら凌駕しておるぞ!」

「‥盟主、ブレイブマスター、ルミナントブレイブ‥様々な名称で呼ばれているが、ようやく巡り会えましたな‥『勇者』様」

「だが『統べる者』よ、あの者は強力なギフトは持っておるのか?」

「何を言っておるのだ、『紡ぐ者』よ!転移魔法を持っておると聞いたであろうが!」

「‥う、うむ、『転移魔法』は確かに神の魔法。しかし空間転移で暗黒竜を斃せるのか?」

「ふむ、聞いておらぬか、『紡ぐ者』よ。勇者様は転移魔法を応用した雷の魔法を開発したと聞くぞ」

「な!なんと、それは真か!勇者のみが扱えるという、伝説の神の攻撃魔法ではないか!」

「うむ、しかも、勇者様はまだ披露しておられぬが、一万のモンスターの軍勢を一瞬にして屠る、『轟雷=テスラ』という最上級雷魔法、広域殲滅魔法も持っておられるらしい」

「も、モンスターを一万匹も。し、信じられぬ。それはもうS級を凌駕しておるではないか!もはや『勇者』は確定!すぐにでもS級認定しても良いのではないか」

「それはならぬ!勇者殿には暗黒竜を倒してもらわねばならぬ」

「それにの、『紡ぐ者』よ。ぬしがゆうた『強力なギフト』、それは神のアイテムや強力な攻撃魔法ばかりではないぞ。最も強力な神からの『ギフト』は、智慧、あるいは超古代文明の知識こそが最強のギフトぞ」

「た、確かに」

「それにヴォルク殿を特別扱いし、後に勇者と判明した場合、我らの素性も悟られかねん」

「うむ、我らは今上勇者様のみの組織ではない。次代、次々代勇者様もサポートしていかねばならぬ。この組織を連綿と残してゆかねばならぬのだ。故に、我らの本質が日の当たるところに出てはならぬ。影から勇者様をお守りするのだ」

「十賢者の諸君、永きに渡り、我らも不本意な業務、政治ごっこばかりを強いられてきたが、ようやく本来の業務に戻れることを喜べ。冒険者ギルドなど世を忍ぶ仮の姿。我ら組織の本質は『勇者』様の守護、育成のためのサポート機関」

「で、では、あれで良かったのか?総合本部お抱えのA級冒険者にすべきではなかったか」

「『過去を識る者』よ、我らの盟約に『勇者様の自由な活動を妨げてはならぬ』、とあるぞ」

「う、うむ。そうであったな」

「『未来を視る者』よ、まだ泣いておるのか。もうお前には見えておろう。勇者様は無事、暗黒竜を斃せるのか?」

「うむ、問題は無い。少し手傷を負われるかも知れぬが、あの従者の光で癒される」

「あのクソ忌々しい、ボケ蜥蜴が!我らとの条約を違えて国を一つ滅ぼしおって」

「それより、『統べる者』よ。わかっておるか?作用があれば反作用ぞ」

「自然の摂理か‥、『調べる者』よ、ぬしが危惧しておるのは勇者再誕に伴う反作用、『魔王』の復活であろう。しかし、それは無いな。『未来を視る者』よ、どうじゃ?」

「ない」

「やはりか」

「どういうことじゃ?」

「わからぬか?此度の勇者再誕こそが『反作用』。暗黒竜の暴走が『作用』じゃ。暗黒竜がスリゼイ王国を滅ぼしたのが約30年前。ヴォルク殿の年齢は確か25、6歳。摂理は4、5年ズレるからの」

「またしても、符号の一致か」

「『調べる者』よ、調査室から手練れを2名くらい、ヴォルク殿の護衛に出してはどうじゃ?気付かれぬように」

「もう出した。気付かれぬようにというのは無理じゃ。あの従者、相当の手練れぞ」

「さもあらん。そうでなければ勇者様の従者など務まらんよ」

「各国に通達を出さねばならんな、勇者様の再誕は伏せるにしても」

「A級冒険者ヴォルク殿、リリー殿の引き抜きはまかりならぬ。また、両名に仇なす国、害する者を出した国は冒険者ギルド総力を以って叩き潰す、くらいの表現でよいかの」

「良いのではないか。バレバレだがの。特にクジュ王国は気が付くのではないか?」

「問題はそれよ。クジュ王国は気付くであろう。『勇者』が再誕したと」

「先代勇者様が建国した国であるからな。我らの素性も察しているであろう」

「先代勇者、『クジュウ・ヒロシ』様か。もう、代を重ね、建国の理念もだいぶお座なりになっておるがな。もう、良いのではないか?我らの助力があればこそ、勇者の国、クジュ王国もこの大陸一の国に成長したのだ」

「『未来を視る者』よ、今上勇者様は暗黒竜を斃した後はどう動かれる?大陸を統一されるのか、新たな国を建国されるのか」

「見えぬ。未来は揺れ動いておる。勇者様は自由に動かれる。その振り幅が大き過ぎる」

「クジュ王国次第か。動乱となるか、平和となるか。そういえばヴォルク殿の血筋はどうなっておる?今上勇者様もこの国の生まれであろう?」

「わからぬ。徹底的に調査したが、スクルドの街の孤児院までしか辿れぬ」

「あの特徴的な灰色の髪、クジュ王家の血筋とは関係ないのか?」

「クジュウヒロシ殿も晩年は灰色の髪だったと聞くぞ、『過去を識る者』」

「それは老化現象であろ。若かりし頃は真っ黒であったと聞く」

「血筋はあまり関係無かろ。勇者殿は血筋に関係無く再誕される」

「血筋と言えばあのエルフの従者、あの魔力量は異常ぞ。伝説のエルフの国の王族ではあるまいな?でなければ説明がつかんぞ。あれで実年齢は3歳くらいだという。野生のエルフであんな異常個体が産まれるものか!『過去を識る者』、どうなのだ」

「わからぬ。調べても出てこず、視ても揺れ動いておる。こんなことは初めてだ‥‥」

「過去が揺れ動く?あり得ぬだろうが!」

「わからぬ‥わからぬ‥まるで、まるで‥今代の勇者様は過去を変える能力があるような‥」

「勇者様とて神ではないぞ!それでは、神そのものではないか」

「『過去を識る者』よ、鼻血が出ておるぞ」

「‥‥‥」

「今上勇者様は一体、神の能力をいくつ持っておられるのだ?」

「歴代最強の勇者様であることは間違いないようだの」

「今上勇者様に巡り会えた僥倖、万劫末代の巡り合わせを神に感謝する以外なかろ」

次回、第二章、最終話です。

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