追憶2
あの後。結局邪魔が入り、彼女に逃げられるが、その直前とあることに気づいた。追いかけた先で彼女が乗り込んだ馬車……それには見覚えのある紋章が刻まれていたのだ。
二匹の鷹が書物と剣をそれぞれ持っている紋章。この紋章は俺がこの国に来てまで会いに来ていた者……ロベールの――ガーランド公爵家のものだった。
そこからとある事を思い出す。昔、ロベールが2年ほどアルレイシャ皇国に留学しに来てた頃の事だ。アイツが疲れたり、中々物事がうまく進まなくて少し心が折れそうになる度に出していた名前……ヴィオレッタ。確かウィステリアに置いてきた大切な妹だと言っていた。飽きる程聞いていたために案外すんなりと思い出した。
先程の彼女の特徴……白銀の髪に金の瞳。それはロベールが説明していた妹の特徴と一致する。
髪や瞳の色が兄の方とは全く違うから会ってすぐには気づかなかったが、思い出してみると顔立ちもロベールにどこか近いものがあった。
「……行くしかない、か」
先程までは心が絶望に支配されて一歩踏み出すことすら辛かったというのに、目的地に先程の彼女――ヴィオレッタがいると思うと自然と足は動いた。
この出会いはある意味運命だったのかもしれない……。
***
そのままの足で公爵邸に訪ねると、俺の名を聞いた執事がすぐに応接間に通してくれた。応接間はまるで俺が来るのが分かっていたかのように準備が既に整っていた。
「やあ、ルシアン!久しぶりだね。死んだと噂されていたのに生きているとは……流石君だ。相変わらず害虫並の生命力だね!」
「あー、はいはい。生きてて悪うございましたね」
「いや。生きてると思って君を待っていた……再会できて嬉しいよ」
「……そうかよ」
軽口を叩きあう。ロベールの雰囲気や口調は数年越しの再会なのに、昔と変わらない……いや、敢えて変えてないのかもしれない。俺が国を追われたことを知っているから、俺の心情を慮って下手な慰めなどせず接する。その態度で確かに俺はこいつと話しやすくなっていた。
ロベールは昔から腹は黒いが、細やかな気遣いは出来る男だ。友人に対してまでこんな気遣いをするなど、相変わらずわざわざ苦労をしにいくタイプの苦労性だなと思う。
「それで本題だ。君は自分の国を取り戻す気はあるかい?」
「……正直、分からん。俺は今、もしかしたら叔父上がこのまま政権を握っていた方が全てが丸く収まって、上手くいくのではとまで考えている」
心からの答えだった。それになによりも取り戻せるような見込みもない。元々俺の味方は少なかった。
「――そうか」
「言わないんだな。責任感がないとか、情けないとか」
「君が決めたことだろう?それに私は君のようにアルレイシャ皇国の内情など知らないからね。口を挟むような資格はないさ……君自身の心に従えばいい」
正直ロベールのこういうところは苦手だ。こいつは他人を受け入れる優しさを持っているが、それは表面だけを見た場合だ。実際のところは真逆。迷っている時は助言ならするが、全部自己責任として処理させる。
”自分で自分の事は決めろ。他人に決めさせるな。自分で背負え”というタイプなのだ。
優しいが、厳しい。
「……分かった。でも少し時間をくれないか?」
「ああ。私は別に構わないが……生活する場所はあるのか?」
「一応。それなりの日数宿に滞在する程度の額はあるが――」
「ふむ。じゃあ君、ここで働かないか?」
「は……?」
あまりに予想外過ぎて、一瞬本気で意味が理解できなかった。思わず素っ頓狂な声を上げる。ロベールはたまにおかしな発想をするのだ。
けれど後々、この時のロベールの判断には感謝することになる。
これ以降はアルファポリスの方でも未投稿です。
そのうち書きます!
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