第46話 「商人になる。」
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王城の奥深く、その周囲を堅牢な黒曜石で囲まれ、その外側はあらゆる魔法を阻害するミスリル重水が覆っている。そんな異質な部屋で再び会議は行われていた。
「誰が、手配書などというものを回したのだ?。」
「どうやら、海軍の事務総監らしい。」
「あ・・・あの男か、数字ばかり見て目の前のものが見えないという。」
「なんでそんな男が彼らと?。」
「官僚意識?というよりもあの男の見栄かもしれません。」
「困ったものだ、今から取り消せないのか?。」
「現場が混乱します、それよりもこのまま捕まえる方がよいのでは?。」
「捕まえれればな、ただこの手配で彼らが我々に対して敵対するかもしれないぞ。」
「その時は彼には責任をとってもらいましょう。」
「「「当然だな。」」」
「それより直ちに国境を封鎖した方が良いのでは?。」
「そうだな、限定的に封鎖しよう。ただちに連絡してくれ。」
「間に合えばいいが。」
「他国がなんと思うかだな、それも考えなければならん。」
「やはり、事務総監は更迭すべきだな。」
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「ミントはライオネルの回収後、国境側の出入り口の様子を伺っております。」
「カカオはヴァリアスとともに山岳峡谷方面に、私たちは商業ギルドで手続きをする。」
ダコタの街は国境に近くここを出ると馬車で半日ほどのところに砦があり、その先の川でムーラン大王国になる。川の向こうには大王国の砦がありそこは町としての機能も兼ね備えているそうだ。
王国側の砦はそこまでの機能がない、シンプルな防衛用のもので兵士の為の施設しかないが、ダコタが近いのと戦時下でないためかそれほど不便はないようだ。
それゆえか出国の手続きもこの町で行われることが多い。
冒険者としての出国がなぜか難しい現在、それならば貿易商として出国を計るために商業ギルドで商人登録をするつもりだった。
この国で生活してからわかったことだが、冒険者ギルドが比較的安価に登録ができ審査も甘く登録後の上納金もないなどに対して(実際は買い取り価格から引かれてたりするのだが)商業ギルドはまず登録料が高い、扱う商品の申告がいる。毎月の更新料がいる(これには保証料やある種の保険が含まれる)ので、当初はこの国の通貨もないために気にも止めてなかったのだが依頼をある程度こなして余裕ができたときに検討したことがあった。
商業者ギルドは商業区画の片隅にあり3階立ての煉瓦づくりの建物で入り口には天秤をシンボライズしたような看板がかかっていた。
中に入っていくと銀行の窓口のようにカウンターがあり、その中には職員の女性が座っていた。
パイアと二人で近づいていくと途中で小太りの中年のおっさんに止められた。
「順番があるんやで、お嬢ちゃん。そこの番号が書いてある木札があるやろ?それ持って番号を呼ばれるのを待ってや。」
そのおっさんが指さす先に番号が書いた木札が積み重ねられている。
下の方に取り出し口があり一枚引くと次の札が落ちてくるようになっている。手にした番号は125とある、パイアと顔を見合わせ傍にいるおっさんに礼を言い周りを見回して空いてる椅子を探して座って待つことになった。
カウンターの中では職員が動き回っているが冒険者ギルドのような怒声や争いの物音は聞こえてこないが、図書館のように静かなわけでもない。
聞こえてくる声は数字が多い、あとは取り扱う商品の名前だったりする。
パイアに周りの警戒をまかせて、私はポシェットから本を出す最近は新しい仲間を呼び出す項目がなかなか出てこない。
品切れなんだろうかと思いつつ、ページをめくっていく・・・
[125番の札をお持ちの方、5番窓口にどうぞ。]
どれくらい経ったのかようやく番号を呼ばれた。
パイアと共に指示された窓口に行く、係員は見た目二十歳前後の女性だったちょっと胸は残念な仕様だったが。
「本日はどのようなご用件でしょうか?。」
「ギルドへの登録を。」
「はじめてでしょうか?。」
「初めて以外の登録もあるのですか?。」
「ええ、再登録とかいろいろと。」
「はじめてになります。」
「では、簡単に説明しましょうか?それとも・・・。」
「お願いします。」
では、と職員は語り始める。まずは登録にかかる費用から、これは商いの内容によって異なり店を構える場合とそうでない場合で異なる。
仲買とかもあるらしい、我々は国から国へと移動しながら商いをする形を取るから貿易商になるらしい、これも従業員の数や取り扱う商品によって異なる。
一人の場合は証明書も当然一人分しかでないがその分登録料や毎月の加入費も安い。
我々は最低3人分の証明書を必要としている、2人から5人のEレベル6人から10人以下のDレベル11人から20人のCレベルと人数が増えるにつれて金額は倍々に増えていく。
私と蘭人とパイアは外せないとしてあとヴァリアスとカカオにミントとなると6人でDレベルにするか、一人帰してEにするかで迷うところだったが
パイアはカカオとミントは外してEレベルで登録するようにと進言してきた。
Eレベルの登録料5Gと初回3ヶ月分の加入維持料の30Sのところを6G払い、ここにいないメンバーの登録証の発行ができないか聞くと商業ギルドの証明書は個人ではなくその事業者に対してのものなので問題がないとのことだった。これは従業員が辞めたり特に貿易関連の場合旅の途中で死んだり行方がわからなくなったりした場合や急に雇い入れたりした場合に一々登録の抹消や加入の手続きがわずらわしかったり、悪用を防ぐためだったりするらしい。
私が事業主として登録する分にも問題はないらしいので、用意された金属のカードに私の血を垂らすと怪しく輝き、そこに私の名前を刻印して手続きが終わる。
ギルドに付属する各設備についての説明がそのあとあり、各地の政治情勢や交易路の情報や治安に各商品の相場や知識もここで手に入れることができることを知る。
ただしこれらの情報は有料であり交換でもあるつまり自分が旅して得た情報を対価として知らせることが義務付けられているわけだ。ちなみに偽ると事業資格の停止やら取引停止やらの罰則がある。
我々の場合初めて外に出るので交換する情報がないので、必要な情報は買い取ることになる。
ギルド会館を出る頃にはすっかり日が落ちていた。
他のメンバーと宿に付属する酒場で合流し情報を共有する。
どちらの出口も警戒が厳しく、とくに冒険者や傭兵に対するチェックがきついらしい。もっとも緩やかなのが巡礼中の教徒であり、その次が商人らしい(ただし規模による)。そこで明日一番に馬車を召還し出発する事にした。
日を追うごとに検閲が厳しくなってるという情報もあるのだが夜間に町を出ることは後ろめたい事をしてるのではと余計に疑われることをおそれたという面もある、その点早朝の出発は急ぎの荷物という面でも不自然さがなさそうだった。
翌朝、日が出る少し前に宿を出て周囲を警戒しつつ馬車を召喚し、ミントとカカオが馬に化けて馬車を引くなるほどこうすれば身分証はいらないわけだ。
馬車が向かう方向はあえて国境側の出口(ムーラン大王国方面)にした。
逃げる側の心理としては警備の厳しい国境を避けて山岳峡谷側に向かいそこから越境すると考える追手の裏をかくことにする。
兵士の詰め所が見えてきた、馬車の荷台に召喚される取引に使われる商品の箱を出していく。
馬を御するのはヴァリアス、その横にはパイアが並び荷台の方にライオネルこと蘭人と私が商品の箱とともに座る。
「止まれ、身分証はあるか?。」
「スレイブ商会?貿易商か積み荷を改めるぞ。」
そういう兵士の声が聞こえて馬車の後ろ側の幌が開けられる。
開けた兵士と目が合うとその兵士の顔を見つめる。
「御役目ご苦労さまです。」
「積み荷の中味はなんだ?。」
「魚醤の入った樽と干物や海産物などになります。」
荷台に入り樽の中味や箱を開けて確認する、ライオネルは黙ってその作業を見入っている。
「班長、問題ありません。」
「行ってよし、気をつけてな。」
「はい、おおきに。」
ヴァリアスが鞭を入れると馬が歩き出す。
ダコダの街の城門を出て街道を北に向かい国境の砦に向かう。
砦を抜けて両国を分ける川にかかる橋を渡ってしまえば大陸最古の国ムーラン大王国に入ることになる。
朝早く街を出たこともあって昼前には砦が見えるところまで進んできたのだが、
行き違う人や馬車がここ数時間見られないーこれは・・・。
「封鎖されましたかな?。」
パイアは先行して砦の様子を見に行ってもらってる為に、今御者台には私とヴァリアスが並んで座ってる。
「砦についてしまうと身動きが取れなくなるぞ。」
「マスター馬車を止めてください。」
いつの間にか戻ってきたパイアが、荷台から声をかけてきた。
「不味いですね、朝から封鎖が始まったようです。ムーラン大王国側からの入国は出来るようですが、出て行くことはほぼ無理なようです。」
「面倒くさいから、パイアが攻撃してその隙に突っ切るか。」
なんかスライムが万能的な魔物と化していますけど、まぁレベルアップした末の結果ということでお許し下さい。




