第38話 「勇者たち。」
巨大なゴーレムの右肩の上で並んで立つ5人分の人影が見える。
誰も見てないと思うが、彼らの頭のなかではカメラがズームアップして中央の赤いヘルメットに赤い全身タイツの人物にピントが会う。
「・・・天に変わって悪を打つ!勇者パーティ・ブレイバー参上。」
だから、そんな高いところで普通に話して誰が聞いているんだろう・・・あっ本人達か。
「行くぞ、みんなブレイバー・フォーメーション。」
「「「「おう!。」」」」
そう叫ぶとジャンプして飛び降りるんじゃなくて、ゴーレムの首のあたりから中に入った。
その後、巨大ゴーレム(全高50メートル)が轟音とともに動き出し眼下の町並みを踏み潰しだす。
逃げ惑う住民達、果敢にも立ち向かう騎士や冒険者達だが相手は勇者、しかも5人組とても敵うわけもなく一人また一人と倒れていく。
あるものは無残にも踏み潰されて内蔵を晒している者、下半身の骨を砕かれながらも広域ヒールで死ねない者、子供を庇う母親に死骸になった親や兄弟を守ろうとする年端もいかぬ子どもたち、そのすべてをなぎ払い踏み潰し焼き払う正義の味方いや勇者達。
「くらえ、ブレイバーっストリーム!!。」
背後に盛大な爆発音とともに火花が立ち上がる。
そうして巨大で醜悪な竜が倒れた、巻き上がる爆炎とともに悪の居城が崩れ落ちる。
全身タイツにメタルなヘルメットの色違いな5人組が操る巨大ゴーレムが決めポーズをとっている。その体内でまた誰に向かって話すのか?。
「悪の栄えたためし無し。」
すべてが終わったかと人型ゴーレムがその体型を組み替えて、連結型の巨大キャンピングカーに変形する。
その内部のリビングのような空間でくつろぐ若者が5人。
その外見は日本人にそっくり~というかまんま日本人である。
革張りの赤い3人がけのソファーで横になるのは西野 友加里(16歳)弓をメインに使うブレイバー・グリーンである。
彼女はあくびを噛み殺しながら言い放つ。
「あ~今日も手応えなかったわね~。」
カウンターキッチンでコーヒーサイフォンからコーヒーをカップに注ぎながら応対するのは、このメンバーのリーダーである川瀬 隆史(16歳)である。
彼はお決まりの熱血漢で正義感が強いそして醜いものが大嫌いだ、もちろん彼のカラーはレッドだそれ以外無い。
「まぁな、中ボスの奴も大したことなかったし。」
おや、彼らはゴーーレムから降りて戦ってたようですね、中ボスってなんでしょうか?。
「けどあの小さい悪魔の群れは中々エグかったな。」
おテーブルに置かれたバケットを手に持ち縦に(?)引き裂きながらそれに答えるのが、
イエローの荻窪 佳純(16歳)。
「そうそう、レッドなんて半分千切れながら掴みかかってくるのを両手で引き裂いて一言「アジの開き~。」なんて言うんだもの笑っちゃって力が抜けたわよ。」
「イエロー笑撃派なんっていいながら盾ですりつぶしてた奴に言われたくねぇよ。」
すかさず言い返すレッドこと隆史も中々にキツイことを言う、見たままを言ってるだけなのだが・・・。
でも酷いといえば、こいつしかないと窓の外を眺めながら物思いに耽ってる男を指差しながら追求する宮藤 月(16歳)白を基調とするワンピースを着こなしカウンターチェアに座っている。
「でも一番酷いのはブルーのメルトレインよね?「神の恩寵をもって大地に溶けよ
」って、あの数だけのMobに大技使うなんて・・・。」
「数が多かったからな、個々に当たるのは戦力の無駄だ。」
若干の後悔を漂わせながら答えるブルーこと高野 大智(16歳)だが、その後悔はMPコントロールとヘイト管理に対してだった。
さて、彼らの視点と現実の視点の違いを簡単に紹介しながら見てきたが彼らが召喚されてからの毎日がすべてこんな感じである。
彼らは召喚されたその日からボフラム帝国に属する人々以外はすべて醜悪で奇怪な悪魔に見えるのだ。
これは異世界の彼らの精神的な負担を軽減するために設定されたものである。
この処置によって、罪の意識を少なく召喚主の意のままに勇者たちをコントロールすることが可能になったのだ。
彼らが立ち去った後には、無残な死に様を晒した屍が累々と散らばっていた。
その中には幼子を必死で庇って上半身がすり潰されたような女性らしきものもや、
巨人の手で身体を縦に引き裂かれたしまった少年や、街の教会の中庭にドロドロに溶けた肉塊など見るに堪えない様な有様が連なっていた。
この日正義の名のもとにルーラン大王国の衛星国家の一角にある平和な街「ゴタカ」が隣国ボフラム帝国の侵略を受けて壊滅した。人口5千人の街だったが生存者はいなかった。
勇者たちが立ち去った後、どこからともなく現れた帝国の占領部隊がこの街の内外を浄化し駐屯部隊が翌朝到着して占拠した。
数日後、通報を受けて駆けつけた王国騎士団第3師団が目にしたものは翻る帝国旗と城壁、臨戦態勢の兵士たちであった。
師団長であるアルテースズ子爵が、使節を送り不当占拠であると通達したのち開戦したのだが移動直後かつ十分な糧食と武器弾薬に欠る第3師団はあえなく敗退することとなり、国境線は移動されることになる。
この時さらに王国の内陸にあたる地方都市「ツヌシ」は近づく勇者たちの存在も知らず平和な時間を謳歌していた。
勇者戦隊~にしようとしたら、もうあるんですね・・・。
安直な設定だったなぁ~反省。




