第37話 「対策ができたが」
ギルドカードには種族名は記載されてなかった。
所有者の氏名、性別、専門職業、出身地、冒険者クラス、レベル、所属チームと発行支社名しか記載されていない。
パイア達の登録も考えたが手の内を晒すようなのでやめておく、それよりも今は海の安全の確保だな一応協力しておかないといけないから王様達と半魚人達の襲撃方法や遭遇したおおよその位置を元にその対策を検討した。
海運国家であるゾエルデン王国にとって海上交易路に出現する海賊や魔物は憂うべき敵であり排除せねばならない対象なのだ。
その為、私達が遭遇した半魚人達の襲撃方法はゾエルデン王国としては初めて聞くもので、ここ半年ほどの交易船や海軍艦船の喪失の原因が明かされた形になる。
襲撃方法がわかったからといって即対処できると言うものではなかったが、対策を考えることができることでこれからの展望が見えてきた形になる。
空中からのシーワイバーンと海中からの半魚人達の兵士の攻撃、船の甲板を生半可に強化したところでそれでは重量増加で船足が落ちる結果になるし、船の外壁の構造を変えることも容易ではないわけだが軍人の会議に船大工も加わり連日の協議が始まった。
その間、私達は王都周辺の依頼を受けて日銭を稼ぐということをして冒険者としての実績を作っていた。ただ王都周辺では治安が悪いはずもなく、その依頼内容がクラスにあったものがないことが問題だった為に、すぐに内陸の方向国境に近い城塞都市「ルエード」を拠点にすることになっていた。
それでもこの国を離れなかったのは一応の対策が立案された場合に私達が検証することを約束していたからである。
それをなして初めて国王が他国への紹介状を用意してくれる手はずになっていた。
ゆえに私とライオネルこと香坂蘭人も対策を考えていた、この件に対しては本も召喚した魔物たちも役には立たない。
そもそも彼女たちは半魚人達もワイバーンも脅威に感じてないからである。
そして、今日もライオネルとの不毛な会話が続いていた。
「どうだろういっそ外輪船にしては?外装を鉄で覆えるし開口部を減らすこともできるしそもそも風に頼らないから燃えやすい帆を必要としないぞ。」
「・・・却下だな、蒸気機関なんてないぞ?そもそもそんな発想すらしないと思うぞ、魔法がある社会なんだからな。」
「太閤さんが鉄で装甲した船があったよな?。」
「おまえね確かに私も日本からの転生だけれど、そこまでちゃんと記憶があるわけではないのだよ?。」
「あ、信長が先に鉄甲船を作ってるのか。」
「聞いてないな、というかおまえ誰かと話してるのか?。」
傍で私達の会話を聞いているのは召喚した魔物達のみだったりする。
ここは宿屋ではなく王宮の我々に充てがわれた一室である、ちなみにやたらと広い。
前回ドッペルを召喚したのもこの部屋の一角にある窓際の私のお気に入りの場所だったりする。
「マスター、魔力の波動が次元に干渉しています。」とはパイアの言だ。
「魔法?つかえるのかラント?。」
「あ~まったく攻撃とかには使えないんだが、なんかネット検索はできるんだな繋がってるみたいだ。」
なんだって?いつからそうなったこ・・この・・・
「・・・チートめ。」
思わず声に出た、いや何れ出てたと思うどういうからくりだネット検索だと、魔法の一言で片付けていいのかこれ?。
「なんか一番言われたくない言葉だな。」
まぁ奴からすればそうかもしれんが、そうたしかに私は戦闘において、日常生活においてありとあらゆることをその7回以上の人生経験という理由付けで、さらっとこなすチートかも知れないが、しかしその及ぶ範囲はこの世界だけだ。おまえは異世界と何しらっと接続してるんだ~便利だけどな。
あっそれなら対策調べれるんじゃないか?上は上として下はあの方法が使えるんじゃないかな。
「ラント、検索してみてくれ。」
「何をだ?。」
「プリンターはないからヴァリアス、紙とペンを用意しろラントが調べた結果を書き留めるんだ。」
検索結果を書き写し、ヴァリアスやパイアに相談したのちに対策会議を開いてもらうよう打診したら翌日の午後に関係者が召集されて会議が始まった。
「ブレスが防げればいいんだよなぁ?。」
一番厄介なのはシーワイバーンの攻撃で船が燃えないかということだ。
魔法でシールドでもいいんだろうけどなぁ、本気で燃やすと襲撃する意味が無いだろうしな荷物が燃えちゃあだめだろう何やってるのかわからなくなるよなうん。
「せっかくある帆が防炎加工できれば燃えないし、帆の向きを上に向ければ広範囲をカバーできるんじゃないかな?。」
「機構的には不可能ではないかと、加工だけで済めば早急に対応できる船が揃いますな。」
「船体にも金属板を貼ればそれなりによじ登ってくる者共も防げますし、砲門などの開口部も開閉式にするべきでしょうな。」
「一度私達の船を加工しましょうか?。」
そのあと元とつけ加えたベネッタに視線が集まった。
ここは王宮の一部にある航路安全検討対策室と名付けられた区画で、
海軍の提督や船大工の棟梁達に魔道士達に士官が集まって知恵を絞っていた。
「加工ですか、時間がかかるのではないでしょうか?。」
「帆の防炎加工されたものを用意したり、マストや索などの加工金属板の用意には・・・。」
「そんなかかりませんよ、帆は今のものを魔法で処理しますし、まぁ試作ですからそれをもとに量産に向けて検討すればいいじゃないですか?。」
そこで手を上げたのがラントだ。
「上がってくる前に処理できたら、砲門の開閉機構まではいらないんじゃないかな?。」
「それは今までも話しましたが、具体的な最善策が出ておりませんが。」
「爆雷を使おうと思うんですがご存知でしょうか?。」
「ばくらい、ですか?なんですかそれは。」
「対潜兵器と呼ばれるもので、俺の国で使われている海中の船を攻撃するものですよ。」
「それは我々の技術で作れるのでしょうか?。」
「一応昨日工房の方に聞いたら出来ると仰ってましたが、海軍の方か王室の方の許可がないととのことでしたので。」
「シーワイバーンが頭上から攻撃をかけてきたら、その爆雷を船の周辺に投下します。水中で爆発して海中を兵士を乗せて進む船を攻撃しますから半魚人達が船の側面を登ってこれなくなりませんか?。」
「それは名案だ、早速制作をさせましょう。協力をお願いしますライオネル殿。」
「では、その完成を待って一度海上でテストしてみましょう。」
3日後完成した爆雷と投下装置を設置した船に乗って港を後にした。
今回はテストだからそんなに遠洋に出ることはないが人目につくのも困るので一般の航路から少し離れたところで行うことにした。
結果は・・・・。
大漁だった。ノラーナ港開港以来の1回の漁獲量だという、その量の多さに漁業長が乱獲で明日から漁ができなくなると渋い顔をしている。
ただ、後日こっそりどうやるのかを聞きに来る漁師が大勢いたのは内緒だが
王様もなんか苦い顔をしている、通常の魚だけでなく一部魔物のたぐいも混ざっているのはご愛嬌かな。
けれど一応の成果もあったので、王様からの紹介状を受け取り旅立ちの準備に入る。
成果を上げてからだという大臣たちもいたのだが、そこまで付き合えないと突っぱねたら意外と簡単に折れた~何かありそうな気がするが・・・。
あと勇者について王様に聞いてみたら、意外なことを語りだした。
「・・・勇者の召喚は確かに10年毎に行われていますが、毎回王国が召喚してるわけではありません。」
「どういうことだ?。」
「大量の死者が出る時に起こる生に焦がれる力、死ぬことに対する恐れや抗おうとする力を糧に次元を超えて勇者を召喚する事ができるのです。それ故に毎回同じ国がそれをできるわけもなく・・・。」
「まさかの持ち回り制?。」
「と・・・いうか早い者勝ちなのですよ、犠牲者を用意出来た国が儀式を始める事ができます。しかも同時に始めた場合は犠牲者の数が多いほうが勝ち取ることが出来る事になります。」
なにそれまるで悪魔の儀式じゃないか、数が多いほうが勝ち取るだって?。
異世界から自分たちの世界を救う勇者を召喚するのに自分たちの仲間を犠牲にするだなんてな狂気すぎる普通に考えておかしいとは思わないのかそれとも・・・
それともそこまで追いつめられることなのか?。
世界の滅亡とか魔王の降臨とか何かか?市場の婆さんの話じゃ・・・。
「さらに勇者からみると、召喚した国以外は悪魔の集団に見えて話も通じないところです。」
「えっ、どういうこと?。」
「この大陸ではそうやって幾つもの国が興り滅亡し歴史が刻まれてきています。」
さて、少し勇者の様子を見に行きますか




