第34話 「デートのような」
少し時間が戻って、入港した頃の話になります。
初めて人が一杯いる街にやってきた、この世界に来た時に元は人の集団
の歓迎を受けたがあれは今でも悪夢だと思う。
その後は亜人種に包囲されたし、海の上に出れば半魚人さんの襲撃イベントも
海賊騒ぎもあったかな?。
でもここはどうだ、普通の人に一部ファンタジーな人も混ざってはいるが
男に女子供もいればお年寄りもいる、至ってまっとうな世界じゃないか。
これで、傍にいるのがまともな人ならば・・・。
今俺のそばにいるのは人のなりをしているが実はスライムだったりする。
その内部に取り込まれれば、瞬く間に消化されてしまうんだが。
道行く男どもが皆振り返り、中には舐め回すように全身を眺める奴もいる。
今日のカカオは白いセーラー服にスリムな青い色のパンツ、丈が短めなためか
おへそが見えてる、確かに男心を震わせる出で立ちかもしれない。
俺が彼女の男か護衛のように見えるが実はその逆だったりする。
一見すると彼女は何も持っていない、だって彼女自身が武器だからね。
二人で港町にある雑貨屋や道具屋に武器防具などの店を巡っている。
同業者が多いので適正価格の調査も兼ねているわけで、
随時街の各所にいる他のメンバーと念話で情報交換し最安値で仕入れている。
本来召喚された彼らには必要のない服や防具に武器を揃えている、見せかけの武器に
見てくれだけの防具すべては人目を避けるために。
「よう、兄さんいい女連れてるじゃないか。」
何人目だろうこの手の手合は、人間に獣人にあれはエルフか浅黒い肌のエルフ・・・
ダークエルフさんだな、おや奥にはドワーフのようなおっさんもいる。
ゲスな笑顔を浮かべてる、俺が返事をしないで視線を外すとビビったと思って近寄ってくる。
「ちょっとの間だけでいいんだけどさ、俺達に貸してくれないかなぁ?。」
う~ん、似たような台詞を今日は何回聞いたことか。そしてその度にカカオがこう答える。
「ちょっとこっちに来な。」
そういってゴロツキどもを路地に引き連れていく、
ヘラヘラ笑いながら彼女に付いて行き、そのままこの世界から消えてしまう男ども
路地に入り人の目が届かなくなった途端にか細く聞こえる悲鳴が最後だ。
あんなゴッツい男達が女のようなか細い悲鳴を最後に消えちゃうんだぜ。
どんな最後なのかね?まぁカカオの体内に入ったら骨まで溶けちゃうよなぁ。
少しして、しらっとした顔をして路地から出てくるカカオに着衣の乱れも髪のみだれも
汗すらもない。
「待ったか?。」
そう言うとこっちの返事も聴かずに歩き出す、まぁ厄介事がないのはいいことだな。
潮の香りが漂う港湾都市「ノラーナ」活気あふれる人間たちの街、ゾエルデン王国の
海の入口、王都「ゾールス」もほど近い。
王国海軍基地もあり治安もいい場所だと聞いたんだけれど、まぁどんな街にも闇は有るということかな?。
二人でダウンタウンの酒場に入る、カカオによると先ほどのゴロツキから仕入れた情報によると、この辺りをしきってるボスが奥にいるらしい。
彼らの情報に転生者や転移者に関するものがあればいいのだが・・・
カウンターに一直線に向かい、バーテンダーのいかついゴリラ様な獣人に声をかける。
「ちょ「帰んな、兄ちゃんここは彼女と来るとこじゃねぇ。」」
声掛ける前に追い返されてます、と右横のカカオさんがスッと前に出て腕を伸ばし(文字通り)そのゴリラの胸元の開いたシャツの中の胸毛を掴んでカウンターのこっちに引っ張ります、見た目200キロはありそうなゴリラさんの上半身がカウンターの上まで引きずられて、カウンター上の瓶やらコップやらが床に落ちて派手な音を立ててます。
「誰が、彼女だって~?。」
そこ?そこなの・・・。
派手な音とゴリラバーテンダーの状態に店内が一瞬鎮まりますが、カカオさんがちらっと顔を巡らしますと各々の世界に戻っていきます、威圧ってスキルでしょうか?。
「・・す、すまねぇ、姐さんに言ったわけじゃ・・」
あっ・ゴンって鈍い音がして、今カウンター(無垢の分厚い板じゃないかな)が割れました。ちょっとゴリラヘッドがめり込んでます。
「じゃあ、私の旦那様に言ったわけ~?。」
えっ?、いつから、いつからそうなったのカカオさん?。
でもやることはやってるか、ミントともジーナやパイアともでもまだ誰も両親に合わせてないのに~ってじゃない、まぁその方が話しやすいならそれでもいいですけど・・・。
いつのまにやらゴリラさんの同僚の方が集まってきたし、心なしか他のお客さんが離れていった様な感じだし。
「お客さん、揉め事は困るんだよなぁ~。」
ワニ顔の黒のダークスーツに身を包んだ男が(ん~ここはそういうお店かな)カカオの右後ろに迫った、カカオが右側を振り向いたー右腕を振るようにーゴリラ男は掴まれたままーカウンターから引き抜かれたーワニ男の顔面にぶつかるゴリラ男―吹き飛ぶワニ男。
あっという間の出来事でした止める暇もない。
流石に胸毛が千切れてゴリラ男はカカオから開放されました。
カカオは既に次の行動に移ってます。吹き飛んでない従業員さんを見つけてその耳元に顔を寄せて何か囁いています、盛大に顔を上げに揺らす従業員さんがカカオに背を向けて店の奥に案内します。
ここでカカオさんがこちらに手招きをしています。
ふう、突然の展開に思わず箇条書きになっちまった。展開が早過ぎると他人事のようになるんだなぁ。
二人して案内された場所は店の裏口から外に出てしばらく歩いた先の別の場所にある家だった。
入口を開けて中に入る、変な罠などはなく代わりにそこには風変わりな衣装に身を包む老婆がいた。
でも彼女はお食事中でした、それは海鮮丼ですかねぇ?いくらみたいなオレンジ色の粒々が少し残ってます。物欲しそうな顔してたら「あんたも食べるかい」とか言ってくれますか?。
案内した従業員が老婆に耳打ちしたのち一礼して家から出て行ったあとに残された俺達に
海鮮丼は出てこない、たぶん今の人が持ってきてくれるんだろうと思う。
「それで、何のようだい?派手に暴れたようだけど、ここがどこかわかってやったんだろうね?。」
丼をテーブルに戻して、箸を箸置きに置いてから顔を上げてこちらを見て静かだが
有無を言わせぬ言葉をかけてくる、その声から見た目よりも若いのかも知れないななどと思う。
でもカカオは知っててやったんだと思う~けどこの世界、保険ってあるのかなないのかな~壊した物どうやって弁償するんだろう?。
「旦那様と連れ添って歩く私を手籠めにしようとした街のゴロツキから聞いた。責任と迷惑料は貴方が支払うと、だから店に行ったのに取り次がずとぼけたのはそっち私は悪く無い。」
珍しくカカオが長いセリフを喋ったということに感心していると、これに対してる婆さんも只者ではないようで今の台詞を聞いてなかったのか
「で、カウンターの修理費なんだがね、100Gに負けとくよ。」
ああ全く聞いてないのか、でも相手の言うことを聞かないのはカカオも負けていない。
婆さんの正面に椅子を用意すると俺に座るように促すので仕方なく座り話しかける。
カカオは椅子の後ろに立ち軽く威圧するようなオーラを醸し出す。
「情報が欲しいんだが、転生者とか転移者とか聞いたことはないか?。」
単刀直入に聞く、回りくどく聞いても聞こえてないかもしれないし聞こえないフリされてもわかんないからね。
「いきなりだねぇ、まぁこの婆に聞く程のこととは思えないけどね。」
「そんなにありふれた話なのか?。」
「ふむ、あんたらこの国は初めてかい、それともあんたら自身が転移者かな?」
婆さんは自分の湯呑みに口をつけて、やれやれという風に軽く両肩をすくめると話を続けた。
「まぁいいさね、こんなことは秘密でも何でもないわ。この国の内陸側には古い国があってね、そこでは定期的に異世界から勇者とその御一行を召還するのさ。」
「勇者召還?。」
「ああ、魔王を倒してもらって、世継ぎをもうけるのが習わしだね。」
「それって、種馬じゃないのか?。」
「ははは、上手いこというの。実はなその王室は呪われておってな、女の子しか生まれんのだよ。国中はおろか大陸全土の有識者を集めたり、竜族に魔族まで知恵を求めて試行錯誤の挙句、万策がつきてな100年前くらいからかの勇者を召還して魔王を退治して財宝と領地を拡大するという奇策に走り出したのだよ。」
そう語る婆さんの苦々しそうな顔よ、もしかして何らかの関連があるのかもな。
「奇策?。」
「ああ、異世界から人をさらってきて、暗示をかけて敵対国に送り込む。上手く行けばその強い力を王家の遺伝子に取り込み、失敗すれば知らぬ存ぜぬで無関係を装い次の人材を召還するのだぞ?。」
「それは・・・呼ばれる方はたまったもんじゃないな。」
「そうじゃな、ただ召還は次元を越える魔法故おいそれとはできん、それには大量の魂を消費して行うために時間がかかるーその間20年、お主がそうとはおもえんが。」
「それは何故?。」
「前回の召還からまだ4年しか経ってないからだよ、早すぎるのだ王国が何か新しい魂の収集方法を見つけたりしてない限りな。」
だとすると、俺を呼んだのは別の何かということになるそして聞きたいのは戻る方法。
「転生者は帰還してないのか?。」
「ない!。」
早っ!、答え力強くてめちゃ早いんですけど。
「死んだ後は知らんが、生きてる限りついぞ戻れたという話は聞かん。」
あらここで俺の旅終わってね?ベネットごめんね~。
婆さんのいるところあたりは、チャイナタウンの怪しい感じですかね。




