第28話 「入港。」
寒暖の差が激しいですね、風邪に気をつけましょう。
船室のドアを少女が開けてくれたと同時に、少女は中に声をかけている。
「お嬢様、王国中佐がお越しです。」
中から一拍置いて、美しいソプラノの声が聞こえてきた。
その声は彼が想像したものよりも心地良く彼の耳に染みこんでいったー魔法のように。
「ようこそ、ダガンス中佐。この度はお世話になります。」
部屋の中には香が焚かれ、家具は見たこともないデザインだが高級感に溢れたもので
足元の床にも毛足の長い敷物が敷き詰められていた。そして部屋にある衝立の向こうから聞こえてくるあの音はなんだろう、何かを引きずるような異様な音。
「いかがされました?。こちらに来て顔を見せてくださいな。」
なぜだろう足が体のどこか奥底の方で拒絶するような感覚が一瞬起きて消える。
見えない相手に一礼すると、足は自然に前に出た。
ドアを閉めて、通路を歩き階段を登って上甲板に出る。
僕達が一斉にこちらを向くなか一人の男が近寄ってくる。
その男は先程ジーナのもとに案内したダカンス中佐だった。
「カカオか?上手く化けたな。」
スライムであるカカオやミントは最近人型に変形することができるようになった。
通常は二人共、身長170センチ位の女性型をとっている。
カカオは褐色の肌にプラチナブロンドのエレガントショートボブにエメラルドグリーンの瞳を持つのに対してミントは白い肌にエメラルドグリーンの髪をポニーテールにし、ルビーのような赤い瞳をしている。
その特性を利用して今回は王国のクラム・ダカンス中佐になってもらった。
「マスター、これでいいんですか?。」
「ああ、向こうの船から見てそれらしければいいんだ、この船にいる男性は船長のライオネルと執事のヴァリアスの二人だからな。そこにもう一人男がいればそれは彼らの仲間ということになるだろう?。」
「確かに、そうですがなんらかの符丁でも使われるとバレませんか?。」
「ふむ、そうならないように他のメンバーで巧みに相手からの視線を隠すのだよ。
ジーラが情報を引き出したら教えてくれるさ、それまでは偽物の中佐は自分の船の仲間のほうを見れないという状況を作る。あと適当にミントと入れ替わってお前もあっちの船から見えるように振る舞え。」
「了解しました、ではローラィのそばに向かいます。」
「ああ指示をしてるようにみせろ、何あの船に付いて行けばいいだけだ。」
しばらく並んで歩いていたが、さりげない仕草でカカオが舵輪を握るローラィの方に向かう。
艦尾から出た私は前の船室に向かう、船長室でライオネルが待っていた。
テーブルの上に拡げた紙をしげしげと見ている。
「海図読めるのか?。」
「まさか?なぜ書いてある時が読めるのかが不思議なくらいだ。」
「ああ、言葉が話せるのもご都合主義・・じゃなく転移ミラクルだからな気にするな。」
「いや、普通に気にするとこだが・・・でもこの展開で大丈夫かな?。」
「ん?まぁ大丈夫だろう。ジーナが引き出す情報は一応全員で共有するようにしてるからな、まぁ君の場合は口頭で聞くしか無いのだけれど。」
そうじゃないんだが・・・と言いたそうなライオネル(蘭人)を無視して話を続ける
まぁこうなってしまったら仕方ないじゃないか、いまさらなんて言うんだよ?。
特にお前なんてゲームしてたらこの世界に来ましたって言うのか?それで10歳の女の子に助けてもらって、衣食住(今は船か)面倒見てもらってますってか。
「それより、地図に王国以外の国は書いてあったか?。」
「あるぞ、すぐ近くに2つだな、ひとつは「ナーモニィ共和国」とあるな、こちらも海に面しているな、もう一つは内陸だな「ムーラン大王国」これは2つの国を足したのよりデカイな。」
ふむ、海図だけにその国がどの程度内陸に広がっているかまではわからない。
海がどれぐらいの割合を占めるのかはわからないけど、次元を超える手がかりはどちらに有るのだろう?。人知れず深海に眠る廃墟にある可能性もあるが海を流離っていてその情報が手に入るとは思えないからここは上陸してみるべきだろう。
この世界にも図書館とかあればそこに何か情報があるがそのレベルの情報があるという場所にどこの誰ともわからないものが入れるはずもないはず、だからこの展開でいいはずだ。
「まずは、このままゾエルデン王国に向かおう。我々はスレイブン公国の人間を演じ続ける。そして何らかの証明書みたいなものを手に入れて、情報を手に入れるんだー地球にもどる方法のな。」
一瞬固まるライオネル、その顔の表情の変化が初々しい。
「た・・たしかに帰れるなら、その方法があるなら知りたい。」
今までに見たことのないような明るい表情をしている、そういうところは10代の子供だなって私がいうことじゃない~よな?。
「わかりやすいな、おまえ。」
「そうか帰れると思うとな、色々やり残したこともあるし・・・。」
「いない間にえっちい画像とか、肌色の多い本とか見られたりしてたりして・・・。」
一気に顔が不安に曇る、まじわかり易すぎるぞ?。あまり難しい役振りはしないほうがいいだろうな、何が元でボロを出すかわからんし一人にさせないほうがいいか?見張りをつけとくほうがいいな。
う~ん、隠密性ではゴースト系がいいんだが、物理的に止めるとなると不安があるなぁ
まさか攻撃魔法を当てる訳にはいかないだろうし、適当な魔物が召喚できるまではパイアでいいか?いやミントの方が収納できるか・・・。
「まぁそれはしかたない、というかどうしようもないから。」
「それもそうだな、ところで船が港についてからだが・・・。」
船が港についたのは2日後の夕暮れだった。
熱烈歓迎~の準備がしてあるわけもなく、とりあえず港湾管理局に入港の届け出をして
船にライオネルがダカンス中佐と共に戻ってくる。
「流石に今日は船にいて頂きたい、明日の朝には迎えの馬車を回しますとのことでした。」
ライオネルが公女ジーナに報告している、それを横で聞いていたダカンス中佐が思いついたように引き継ぎ話し始める。
「それでしたら、是非今宵は我が海軍の・・・。」
誘いに乗ってもいいんだが、こっちにも都合が有るんだよダカンス君。
これからの役柄の確認とか立ち位置とかのすり合わせなんかがね、
だから一度この船から降りとくれ、必要な情報もある程度頂いたことだし。
「お嬢様は慣れぬ異国への上陸で緊張されておられるご様子、今宵はこのまま港の沖で停泊し体調を整えることとします。」
そう言って船室のドアを開けて、退室を無言で促す。
皆の視線の中、名残惜しそうに公女の方を見るダカンス中佐に。
「クラム殿、お気遣い有難く思いますされど、これの言う通り明日からの事に思いを馳せると少し苦しゅう感じます、ここまでの案内ご苦労様でした。あなたも報告とかの業務がお有りでしょう?一度お戻りになられた方がよろしいのではありませぬか。」
そして、また明日お会いしましょうとジーナが言うと彼は一礼して部屋を出て行った。
さくさく、書いていきたいのに襲いかかるトラブルw。




