第22話 「海は広いな」
海に出て何時間経っただろう・・・甲板ではライオネルがパイア相手に剣戟の練習をしている。彼はこの世界で生き抜く為に努力中である。
午前中は魔法を午後は剣に弓、槍に体術を学ぶというスケジュールを組んだようだ。
船は基本帆走だが、凪いだ場合は大ちゃんが漕ぐ手はずになっている。
操船はローラィが担当する、船の先導は彼女の姉妹達とその下僕たる海獣達だ。
私はデッキで本を読んでいる、とにかく読み進みバリエーションを増やしておかなければ。
魔物たちの召喚は古の契約と、私自身の魔法力に関連するらしいから下手をすると制御不能の者を呼び出す可能性もある。その可能性があるのがパイアだ、
今はコントロール下にあるがこれからもそうであるとは言い難い。
この世界での魔法は個人の魔力量ではなく、この世界に満ちる魔法元素の制御力に起因すると考えられる。
そして、今世でのこの躰の能力は高くさらに、今までの経験と記憶が必要なときに
引き出せる都合のいい能力が備わっている。
ならば、新しい召喚という技術を磨くべく知識を吸収するのが今の仕事になる。
な~んてね、そこまで難しく考えなくても今できることはこれぐらいしかないし。
召喚してコントロールできる数がローラィの時に増えたが、常用5体最大6体でしかない。
せめて後2~3体は召喚できるようにしときたい、大陸に着くまでに10体は同時召喚できるくらいにならないとな。
この本が初級だというのだ、大きな大陸に行けば上級を極めた召喚師もいるだろうからね。
[だから、あんたがイレギュラーなんで、他にそんな初心者いませんって。]
本が何かいってる。
「けど、おまえ入門用だろ?。」
[・・・まあね。]
「読み終わったらどうなる?ポシェットに戻したら、次の本と交代するのか?。」
[さぁ、読み終わられたことがないから理解らない。]
「そうなのか?それは本としては気の毒なことだな。」
[まぁね、ここまで読んでくれたのは君で二人目だな。]
「一人はいるわけだ、そいつは読み終わったのか?。」
[・・・・]
次の文章が浮かび上がってきてるし、都合が悪いことは喋らないのか。
まぁいいさ、読み終わればわかることだし。
浮かび上がるのは、新しい召喚の呪文。
すかさず詠唱を始める、さて何が出てくるのか。
これは何かな?女性の上半身と翼を持ち下半身が蛇・・・
[メリュジーヌ]
それが種族名か長いなぁ、お前の名前は・・そうねぇ
「メリュ、リュージュ、ジーヌ、メリサ、ヴイーヴル、ジャン?。」
「え~と、ジーナにしましょう。」
[な・ま・え・ジーナ・・]
「喋れるかな?。」
「貴方様の名前は何とお呼びすれば?。」
「あら~これは初めてのパターンだわ、う~ん私はベネッタだけれど。」
「ベネッタ様、ご命令を。」
「ジーナ、その翼で空をとべるのかしら?。」
「もちろんです、ハーピーよりもセイレーンなどよりも早く高く飛べます。」
「ならば、上空にて我が船を警護せよ。」
「仰せのままに。」
答えるやいなや、その姿が消えて天を飛翔するイメージが伝わってくる。
「天井を壊さない配慮ができるのね、頭の良い娘は好きよ。」
さて本を読み続けても良いが、召喚後はしばらく制御に専念した方が良かろう。
高空からのイメージが頭の中で広がる、どこまでも青い空に輝く大海原、
そして天に輝く太陽から舞い降りる黒い影・・・影?!。
[ジーナ回避せよ!。]
直後リンクが切れる。私はリクライニングした椅子から立ち上がり、伝声管に叫ぶ。
「敵襲!対空戦闘。」
ミントがマストの最上部から船の天蓋範囲を防護する為に展開する。
ローラィが転舵する最も効率よく風を受けれる方向にと、
大ちゃんはローラィの傍でシールド化している。
パイアが武装化して翼を展開し飛翔する。
ライオネルが自動小銃を手に取り構える。
私も船室のドアに走り、開けざまに叫ぶ。
「敵影は現状2他にもいると心得よ。」
いつの間にか前方甲板にて対空射撃の姿勢をとって構え、
射撃を初めたライオル。迫り来る魔獣ワイバーンに向けて、7.62ミリAPIとFMJが交互に仕込まれた弾が放たれる。




