体が軽い なぜ
社務所を出たあと、そのまま本殿へと足を向けた。せっかくここまで来たのだからと、賽銭を投げ、二礼二拍手一礼をする。
手を合わせた瞬間、ふっと、体が軽くなるのを感じた。
肩にのしかかっていた何かが、すっと抜けていくような感覚だった。同時に、それと入れ替わるように、何かが胸の内側にすっと入り込んでくるような、そんな感覚もあった。両方が同時に起きているのに、不快さはなかった。むしろ、心地よいとさえ感じた。
目を開けて、境内を見渡す。木々のざわめきも、参道の砂利の音も、いつもと変わらない。ただ、自分の内側だけが、何かひとつ違う状態になった気がした。
帰りの電車に乗り込む。参拝の疲れと、あの不思議な感覚の余韻とで、座席に腰を下ろすなり、まぶたが重くなっていった。
抗う気にもならず、目を閉じた。
見覚えのある場所だった。今度は、神社でも蕎麦屋でもなかった。
自分の部屋だ。
見慣れた壁紙、いつもの位置にあるベッド、机の上に置きっぱなしのマグカップ。細部まで、間違いなく自分の家だった。それなのに、どこかが違う。空気の密度のようなものが、いつもと少し違っていた。
誰かと一緒にいる感覚があった。姿は見えない。それでも、安心できる相手だという確信だけがあった。何をすべきかも、分かっていた。焦りはなかった。ただ、静かに、当然のこととして、やるべきことをやっている。
「次は――駅、次は――駅」
車内アナウンスで、目が覚めた。
窓の外を見る。見慣れた景色が流れていた。もう降りる駅の一つ手前だった。
夢の余韻が、まだ体のどこかに残っていた。今回は、はっきりと分かった。あれは自分の部屋だった。
夢が、少しずつ、こちらに近づいてきている。




