宮司 説法 なんの話
「あの、女将さん」
丼を運んできた女将に、思い切って声をかけた。
「最近、変な夢の話って聞いたことありますか。みんな同じ夢を見てるとか、そういう話なんですけど」
女将は箸立てを拭く手を止め、少し考える顔をした。
「変な夢ねえ……。あたしはそういうのは聞いたことないけど」
やっぱりか、と肩の力が抜けかけたところで、女将が続けた。
「ただね、その話聞いて思い出したんだけど。ここの宮司さんがさ、今年に入ってから、なんか説法みたいなの始めたのよ」
「説法、ですか」
「そう。前はそんなことしなかったのにね。何の話をしてるのか、あたしもちゃんと聞いたことないんだけどさ。なんとなく、今の話と繋がりそうな気がしてね」
蕎麦をすすりながら、続きを促す。
「宮司さん、普段は忙しくてなかなか捕まらないんだけどね。お祓い申し込むと、その時にちょっとした説法もしてくれるのよ。せっかくだから、申し込んでみたら?」
「お祓い、ですか」
「ちょうど厄年でもないの? まあ、なんでもいいのよ、そういうのは。気になるなら、聞いてみるのが早いんじゃない」
女将はそう言って、また厨房の方へ戻っていった。
丼の中の鴨南蛮は、湯気を立てながら少しずつ冷めていく。手を付けるのも忘れて、しばらく考え込んでいた。
宮司の説法。今年に入ってから始まったという話。夢が広がり始めたのも、そう遠くない時期のはずだった。
繋がっているかどうかは分からない。だが、他に手がかりらしい手がかりもない。
蕎麦を食べ終えたら、社務所に寄ってみることにした。




