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フィジカルは大抵の問題を解決する。異世界でも  作者: やがた おうぎ
1章 幼少期

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32/41

力の対価

(戦団長に直接の報告とは。……しかし、相変わらず無機質な人だったな)

 指令所での報告を終え、フロンタを歩くロニール。

 こういうのは伝言ゲームのように報告が回され、最終的にトップに届くものではないのか、と彼は思った。それも組織によりそれぞれか。……それはそうと。

「戦団長がおっしゃっていたスキルって、何だったんですか?」

 彼は隣を歩くヘルマンに尋ねた。


「ソシトラス王家が有するスキルだね。血筋によって先天的に、例外なく授かるものだ。簡単に言うと強力なバフ効果に加えて、意識を共有できるというものだ。適性によって効果に差は出るけどね」


「バフはともかく、意識の共有ですか?」

 ぶっ飛んだスキルだな、とロニールは思った。


「そうだ。スキルの効果を付与する術者と、その効果を受けた被術者が、相互に意思を通じたり意識を共有できる。とは言っても、相互的にやり取り出来るのは高適性者同士と術者である戦団長の間だけだ。でも、高適性者は一方的に他の被術者に意志を伝えたり、意識を覗き見ることができる。もちろん、戦団長もね。……ははっ、嫌に感じるかい?」

 一瞬顔をしかめたロニールに、ヘルマンは言った。

「でも本当に便利で助かっているんだよ。スキルを受けるのは前線での活動時のみ。それも、プライベートには配慮されている」


「……ヘルマンさんの適性はどの程度なんですか?」


「私の場合、適性値は5と言われた。平均の域を出ないくらいだね。バフの強化率は1.25倍らしい。体感的にも正しい数字だと思う。最大強化率は、適性値10の1.5倍ね」


 絶句するロニール。

 とんでもない数字ではないか、と彼は思った。

「……意識の共有については?」


「私は意識の共有は出来ない。でも、500メートルくらいまでなら味方の位置も把握できるし、フロンタからの戦団長の意思は、深層を突破しても受け取れる」


「ははっ」

 衝撃のあまり、呆れた笑いを漏らすロニール。

 探索に出る戦闘員50人以上への強力なバフ。リアルタイムに全戦闘員の状況を把握、管理できるであろう伝心効果。そして、広大な効果範囲。

 考えたことはあった。高難易度の魔棲界域である霊域で活動を続けているにも関わらず、戦闘団から死者が出ないのはなぜなのか、と。

 皆さん全然死にませんよね、どうしてなんですか?などとは聞けるはずもなかったが、その謎はようやく解けた。戦団長アルシェナ・ソシトラスが持つスキルによるものだ。

「ぶっ壊れスキルじゃないですか」


「その通りだよ、本当に。ありがたいことさ」


「……つまり、その適性が全くない、と言われたわけですか。自分は」


「……そうだね」

 ヘルマンは苦笑いをこぼす。

「まあ、気にすることはないよ。そもそも適性値には差があるものだから、分隊としての行動にこのスキルを介することはない。要は司令部からの意思を受け取れる人員がいればいいんだ。バフはまあ、あるに越したことはないけどね、君なら大丈夫。さて」

 目の前には宿舎。

「まずは自室の案内からだ。安心して、個室だよ。広くはないけどね」


 自室に荷物をおいたロニールはその後ヘルマンと再集合し、フロンタを案内してもらった。久しぶりに顔を合わせる第2小隊の面々と挨拶を交わしつつ、鍛冶工房で用事を済ませた。



 〇



 夜。


 荷物の整理もひと段落したフロンタの自室で、ロニールは思い出していた。

「強大なスキルには制限や代償がある」

 天恵の儀の時だったか、父が言っていたことだ。


 そして今日知ることとなった戦団長アルシェナ・ソシトラスのスキル。まさに強大なスキルだ。

 その制限や代償とは何なのだろうか。


 スキル自体の詳細な制限は本人のみが知るところだろうが、傍から見ていて思い当たる代償は明確に存在する。決定的に人間味の欠けた、あの異質な在り方だ。

 抑揚のない声音。

 滅多に変化しない表情。

 あらゆる事象に優劣をつけず、特別な個人的価値を見出すことがないであろう精神性。しかし無関心とは違う。物事をどこまでも平坦に、客観的に捉えているのだろう。


 感情の欠如という表現では物足りない。それは恐らく『個』の欠如。

 多数の他者の能力を強化し、意識の共有すら可能にする力の代償としては、然るべきものなのかも知れなかった。

※2話更新 2/2

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