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フィジカルは大抵の問題を解決する。異世界でも  作者: やがた おうぎ
1章 幼少期

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顔合わせ

 カイウスとの話に出てから一週間ほど。これからお世話になる小隊に実力を見せる機会は訪れる。

 第1小隊長エルミナとの初対面の挨拶もほどほどに、ロニールは戦闘訓練場に模擬戦用の装備を整えて立っていた。


「ロニールです、よろしくお願いします」

 彼は訓練場に集まる大勢を前にそう言うと、改めて周囲を見渡す。

(とんでもないことになってるな)

 エルミナの第1小隊とカイウスの第2小隊、それぞれのメンバーの大半が訓練場を囲っている。コロッセオに立つグラディエーターはこんな気分だったのだろうか、とロニールは思った。この場をコロッセオと表現するには、そこまで広くはないし、観客は熱に浮かされておらず、あまりに真剣な目をしていたが。


「自己紹介はお互いに済ませているけど、改めて。第1小隊長のエルミナよ」

 20代半ば頃の長身の女性。深い色合いの赤髪を後ろでまとめている。女性らしい言葉遣いで、ハキハキと話す彼女は、自分から見て右側にまとまっている集団に手を向けて言う。

「そして、こっちが第1小隊の隊員。よろしくね」


 ロニールはエルミナと、彼女が紹介した隊員たちに丁寧なお辞儀をした。


「さて、これから一緒にやっていくにあたって、私たちはあなたの実力を知りたい。資料には目を通しているけど、実際に見ることが一番納得できるし、信用できる。だから模擬戦、してもらうわね」

 エルミナが続けた。


「分かりました、全力を尽くします」

 軟弱な子どものお世話をするための戦闘団ではないし、霊域での活動を考えれば、ぽっと出のガキに背中を預けるのは不安でしかないだろう。皆さんが安心できるように、そして自分が心置きなく訓練に参加できるようにしよう、とロニールは思った。


「早速始めましょうか。カミラ」


 はい、と返事をした女性がロニールの前に出てくる。

 身長は160センチを超える程度。20歳前後で、ダークブラウンのショートヘア。

 鈍器としても使えるだろう杖を持っており、魔法メインの戦闘スタイルをする、というあからさまな雰囲気を纏っている。


「見ての通り、彼女は魔法戦闘を得意とする」

 エルミナが言った。

「《身体強化》以外の魔法を使えないあなたが、魔法使い相手にどう戦うのか。まずはそれを見せて」


 エルミナの言葉を聞いても、ギャラリーに反応は無い。ロニールの基本的な情報は共有されているようだ。


「お願いします!」

 カミラは快活に、ロニールに言った。


「お願いします」

 ロニールはカミラに挨拶を返しつつ、緊張感を高める。

 油断はしない。魔法は理不尽なのだ。それはケイルを始めとする先輩たちに散々思い知らされた。


「カミラは《加護》持ちよ。物理ダメージは一定量まで無効化するから、気を使わなくて大丈夫」

 とは言え、ロニールはカミラにまともに攻撃を当てることは出来ないだろう、とエルミナは考えた。カミラの最たる強みは、恵まれた魔力量と魔法センスが織りなす魔法。魔法による対処に優れた者でさえ、近づくことは簡単ではない。まともに魔法を使えないとなれば、戦いになるかどうかも怪しい。


「加護?……分かりました」

 恐らくスキルなのだろう、とロニールは考えた。初めて聞くものであったが、重要なのは遠慮が要らないらしいということだ。


 そんな納得した様子のロニールを見て、カイウスは回復術師を近くに呼ぶ。

「彼女、加減くらい出来るわよ?」

「一応ですよ」

 驚いて言ったエルミナに、カイウスは答えた。

 カイウスとしては、カミラに対する配慮のつもりであった。ロニールの開幕の行動が予想できたから。


「まあいいわ。2人とも、準備は良い?」

 エルミナの問いかけ。


「いけます!」

 杖を前に構えたカミラ。


「準備よし!」

 気合を見せたロニールは、しかし盾と金属バットを《収納》にしまい、手ぶらで脱力して立つ。


 第1小隊の面々は、ロニールの行動に疑問を抱いた。しかし戦闘スタイルは人それぞれ、と疑問は関心に変わる。第2小隊の苦笑いも興味深かった。


「始め!」

 エルミナの号令。


 バリン、と。カミラの《加護》が無効化される。

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