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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第四章 「灰哭編」

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第七十七話「衝撃」

「ま、まじか」


 観客席から試合を見ているチルッタは、アインの姿を見て言葉を漏らす。

 普通の人間ではないと薄々感づいてはいたものの、毒の影響である血反吐を吐きながらシナムを一方的に殴りつけるアインの姿に、チルッタは顔を歪ませる。


「く、来るなよ!」


 顔を恐怖でいっぱいにしたシナムは必死にアインから逃げ惑う。その間も懐から小さなメスのような刃物を無数にアインに向かって投げつけているが、アインは避ける素振りすら見せずにシナムとの距離を詰めていく。メスにも毒が染み込んでいるようで、刺さるたびにアインの体は痙攣するが、少しすると収まる。

 不死であるアインにとって、致死量の毒など存在しない。



 ローブの人物の衝撃から心が落ち着かない控室の選手達も、新たなる衝撃に体が追いつかない。


「アイン……と申したか。あの男、毒に対する耐性が相当強いと見える」


 シナムに対して敵意を覚えていたティアベルは、少し興奮した様子でアインの姿をモニター越しに見つめる。



「先ほどのローブにこの男……私はこんな奴らと戦わねばならないのか」


 この先の対戦相手を考え、エーデルは血の気が引く。


「こりゃいよいよ棄権したほうが良さそうだな」


 いざとなればエーデルを連れて逃げ出そうと算段するグロモス。


「ひ、ひぃ〜!」


 ようやく目を覚ましたヒンターの情けない叫びが控室に響いた。




 本戦は八人によるトーナメントにて行われ、観客は優勝者を予想する。

 一回戦の第三試合に突入したタイミングで仮のオッズが発表されたが、アインの活躍を受けてオッズが一気に跳ね上がる。


ローブの人物 1.1倍

エーデル   2.0倍

アイン    2.2倍

ティアベル  3.7倍

シナム    7.0倍

ヒンター   8.0倍


 観客の殆どはローブの人物に賭けるが、耐性に期待してアインに賭けるものもちらほら現れる。逆にシナムのオッズはどんどん下がっていき、予選で全く活躍の無かったヒンターに届きそうな勢いだ。


 賭けが盛り上がるのは大いに結構なことだが、ギーリの表情は芳しくない。少し考えた後無線に向かって何かを告げると、名残惜しそうにアインから視線を逸らして上に登っていく。




「棄権しろ。でなければ殺す」


 いい加減シナムを追いかけるのにもうんざりしたアインが最後通告をする。いつまでもこんなところで時間を無駄にしているわけにはいかない。


「ふ、ふざけるな! なんなんだよお前!」


 泣きべそをかきながらも、シナムは攻撃の手を止めない。毒が効かないと分かると狙いをアインの義足に定めていく。

 だがその攻撃もアインは予測していたと言わんばかりに簡単に回避し、とどめを刺そうと腰に差した剣に手を伸ばす。



 その時だった。

 観客もシナムも選手たちも、そしてアインでさえも予想すらしていなかったことが起きる。


 カチッ。



 突如アインが爆発する。

 正確には彼の付けた義足が大爆発を起こし、アインの体はボロ雑巾のように吹き飛ばされた。

 爆風に巻き込まれたシナムもただではすまず、壁際まで吹き飛ばされて意識を失う。



「何が起きた!」


 爆音の後、砂嵐だけを映すモニターにかじりつくグロモス。エーデルもティアベルも顔を見合わせるばかりで不安が控室を支配する。

 

 対戦相手が両者ともいきなり戦闘不能になり、大いに混乱する観客たちだったがその中で一人だけが神妙な顔つきでギーリを見上げていた。



「ようし。これでいい。このままあの小僧に勝ち進められたら面倒になりそうだからな」


 満足げな様子でワインを口に運ぶギーリだったが、砂ぼこりが明けた闘技場に両足で立つアインの姿を目撃するとそのすべてを口から噴き出した。


「は、はぁぁぁ!? あの小僧、なんで生きて……それに足まで生え変わってやがる!」


 高台から落ちそうなほど身を乗り出したギーリを必死で押さえるギーリコレクションたちも、そのアインの姿を目に焼き付けている。



「……」


 アインは再び手にした右足を触り、そして吹き飛ばされた義足の破片に目を移す。そのまま目が飛び出しそうなほど驚愕しているギーリを睨みつけ、最後に観客席に視線を移す。



「な、なんで……」


 逃げ惑う観客たちの中でただ一人その場で動かずに震えているチルッタ。その手には起爆装置のようなものが握られている。


「……それは俺のセリフだ」


 視線が合い、チルッタの手から音を立てて起爆装置が地面に落ちる。アインの目には怒りと哀しみの感情が、チルッタの目には恐怖と混乱が現れる。


 様々な感情が渦巻くコロシアム。

 その中でただ一人、控室の中で人知れずヒンターが笑顔を浮かべていた。


 


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