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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第三章 「滅都編」

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第四十三話「ボス」

 裏路地の倉庫前。

 服屋の孫は使ったことなどない拳銃を両手で抱えながら震えていた。

 どこをどう扱えば弾が発射されるかは分からないが、発射されればどうなるかは先刻の一件でよく分かる。


「ううっ」


 いっそこのまま自分のこめかみを撃ち抜いてしまえば楽になれるかもしれないが、もちろんそんな勇気はない。

 

 コツ、コツと暗闇に足音が響いてくる。


「ふ、ふ、ふぅ……」

「落ち着け俺だ」


 暗闇に銃を向けていると、現れたのはルルを連れ込んだ男だった。


「町の連中の話によると帝国の軍人が女を探しているらしい」


 男は震える孫から拳銃を奪うと、ルルが捕らえられている倉庫の扉に手を掛ける。


「女を移動する。お前は見張って……」


 扉を開けながら孫の方を見ながら指示を出す男だったが、顔面に受けた拳の衝撃によって言葉が途切れる。


「ってぇな……誰だお前」







 数十分前。

 

 アインとリヴはオルドに呼ばれてこの裏路地に到着した。到着した瞬間にルルの姿を見たリヴはその体に抱きつき、全力で謝罪する。


「ルル!よかった……ケガありませんか?酷いことされてませんか?本当にごめんなさい」

「だ、大丈夫ですから。みんな見てますので……」


 先程までジークに抱きついていたというのに、リヴに抱きつかれるのを見られるのは恥ずかしいようで、ルルは顔を赤くしている。


「それで、このガキは……」


 アインはオルドによって拘束され、泡をふいて気を失っている孫を見おろしながらため息をつく。


「いやぁ、切羽詰まっていたし銃を持っていたものだから手加減できなくてね」


 恥ずかしそうに頭をかくジーク。倉庫侵入の際に孫と交戦し、本気の拳が鳩尾に命中したらしい。


「こいつがさっき話した服屋の孫だ。悪いがこいつは俺が預かる」

「待ってください」


 孫を縛るロープを引っ張っているアインに、ようやくリヴの手から解放されたルルが待ったをかける。


「なんだ、納得いかないか?」

「そうではなくて……」


 ルルはならず者たちに襲われた事を事細かに説明する。


「なるほどね。ルルほどの実力者がこんなのに負けるとは思えなかったけど、そういうことか」


 納得した様子で孫を見ながら頷くジーク。


「アインの言っていた良くない連中か。いったいどれほどの規模なのか」

「わかりません。ですが、いずれまたここに戻ってくるはずです」


 オルドの質問に首を振りながら答えるルル。

 ルルが何を考えているのかを察するリヴはさらに大きく首を振りながらルルの考えを否定する。


「駄目です、危険すぎます!」

「まだ何も言っていないですが、まあ、そういうことです。私は捕まったふりをしてここに残ります。大佐たちは男の気を引くために今までどおり私を探してください」


 そう言って再び倉庫に入ろうとするルルをジークとオルドも止めるが、アインだけは止めようとしない。そのかわり、別の提案をする。


「俺が代わりに捕まろう」





「で、誰なんだ?」


 顔を押さえながら再び質問する男には何も答えず、アインはすかさず連撃の拳を浴びせる。


「話聞けや!」


 後ずさりながらも男は銃をアインの顔面に突きつけるが、それでもアインが止まらないと分かると、躊躇せずに男はアインの太ももを撃ち抜く。


「なんで女が男に変わってんだ?あぁ?」

「し、知らない!俺は何も……!」


 アインを制圧したと思い込んだ男はすかさず孫を責めるが、言葉の通り孫は何も知らない。

 謎の男に攻撃されたと思ったら目が覚めたら何事もなかったように再び倉庫の前にいた。 

 だが口が裂けても気を失っていたなんて言えない。そんな事を言えば何をされるか分からない。


「いいかげんに……」

「するのはお前だ」


 後ろを振り返ると、先程自分が足を撃ち抜いたはずの男が平然と立っている。


「ちっ、やり直しだ」


 めんどくさそうな顔をしたあと、男はアインの眉間を撃ち抜く。アインの体が力なく地面に倒れ、死亡したのを確かに確認した男はそのまま銃口を孫に向ける。

 服屋の孫はまた目の前で人が殺され、そしてこのあと自分も殺されると思うと嗚咽が止まらない。


「殺す前に一つだけ仕事をしてもらう。この死体をアジトに運べ。まだ売れる臓器があるかもしれねぇからな」


 ガチガチと歯を震わせることしかできない孫だが、たとえ殺されるとしても断る選択肢は無かった。生き残れる可能性が少しでもあるならそれにすがるしかない。


 硬直して動かなくなったアインの死体を男の持ってきた麻袋に詰め、地面を引きずりながら運んでいく。

 流れ出る血が麻袋を貫通し、地面に赤い線が出来ているのが恐ろしくて後ろを振り向けない。前を歩く男についていくしかなかった。


「お前、名前は何だったか?」

「え、あ、ラヴィ……です」


 突如名前を聞かれたことに動揺し、体が跳ねる。それと同時に引きずる麻袋も動いたような気がしたが、そんなことは気にしていられない。自分の名前が墓石に刻まれないようにすることで頭がいっぱいだ。


「着いたぞラヴィ。お前は初めてだったな」


 男はある扉の前で立ち止まる。何処にでもありそうなありふれた建物だったが、その中から漂う異質な雰囲気はラヴィが今まで感じたことがないものだった。

 男が扉を開け、中に居たものを目の当たりにすると、ラヴィの全身の毛穴から汗が噴き出す。


「紹介しよう。俺たちのボスだ」


 

 獣のようなたてがみ。

 頭から突き出た角。

 人間のような手足をくわえた口からは牙がのぞいている。

 知性の欠片もないような瞳に、自分の怯えた表情が映し出されている。

 

「ま、魔族……」


 思わず漏れ出た言葉に男は激怒し、ラヴィを殴りつける。


「魔族じゃねぇ、魔族様だ!」


 魔族の足元に吹き飛ばされたラヴィの顔面に、血の混じった粘り気のあるよだれが垂れてくる。


「ひぃ……」

「魔族様がお前をご所望だ」


 腰が抜けて一歩も動けないラヴィに、魔族の大きな口が近づいてくる。同じ生物とは思えないほど発達したあごの奥から人々の嘆きが聞こえてきそうだ。


「なるほどな」


 麻袋から聞こえてくる声に魔族が反応し、噛みつく対象をラヴィから変更して突進する。

 麻袋を引き裂いて姿を現したアインは魔族の突進を間一髪でかわし、魔族はそのまま壁に激突してしまう。


「馬鹿な、確かに殺したはず……」

「わ、わ、わわわっ」


 男は再び銃を構え、ラヴィは腰を抜かしたままあごも外れてしまう。


「来い、寝起きの準備運動だ」


 アインはラヴィはもちろん銃を構える男の事も完全に無視し、ヨダレを撒き散らす怒りの表情の魔族に対して剣を構える。



 


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