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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第五章 「追憶編」

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第百十一話「リーベの怒り」

「もうすぐ着く。いつまでも笑ってないで準備をしろ」


 先程まで自分も笑っていたことは棚に上げて、エーデルが馬車内に声をかける。いつの間にか南の都市は目と鼻の先まで迫っており、景色は草原から町へと変わっていく。


「こりゃ大きな町だな。バルトーレや俺の故郷とは大違いだ」


 馬車の窓から身を乗り出し、グロモスは行き交う人々に手を振りながらその巨大な町に建つ建物を見上げる。


「あれがたぶん灰哭隊の施設なんだろうね」

「帝都の帝国軍本部と比べても遜色ないですね」


 軍人であるジークとルルは自分たちと同じ組織に属しながらも全く異なる灰哭隊の施設を前にして自然と身が引き締まる。


「せっかくだしちょっと寄ってみないかい? アルトラが居るかもしれないし」


 嬉々とした様子でアインに話しかけるジークだったが、アインは気が乗らないようで横目でその建物を見るだけで首を縦に振ろうとはしない。


「俺は興味がない。それにどうせアルトラは居ないだろう。あいつはもう軍を辞めたんだ」


 海岸の墓の前で見せたアルトラの吹っ切れた表情。アインはとてもアルトラが軍の施設に残っているとは思えなかった。


「そうかも知れませんがリヴを少し外に出してあげませんか? こんな狭いところにずっと押し込めているのは可哀想です」


 眠り続けるリヴを気遣ったルルの言葉に、アインの眉が僅かに動く。


「いいじゃねぇか。俺も軍の施設ってやつには興味あるしよ」

「そうだな。あのウーとかいう小僧とシナムについて詰問してやらないとな」


 グロモスとエーデルも乗り気だ。


「……わかった。だがリヴは俺が背負う」


 真剣な眼差しでそう告げるアインに対し、ルルは「誰もリヴを取ったりしませんよ」とツッコミを我慢するのに必死だった。



 それから数十分後、彼らは灰哭隊施設内でアルトラの副官であるリーベと対峙する。


 リーベの鋭い軍刀を間一髪でルルが受け止める。


「いきなり何をするんですか! 私たちは帝国軍……うっ!」


 灰哭隊の黒い制服を確認したルルはこれ以上戦闘にならないように自らの身分を明かそうとするが、リーベは聞く耳を持たずにルルの腹を蹴り上げる。バランスを崩したルルの剣は力を無くし、リーベはその剣をはじき飛ばす。


「やるね」


 ルルにとどめを刺そうと首に向けられた軍刀を今度はジークが薙ぎ払う。ティアベルの玉のおかげかジークの足はほぼ完治しており、いかにリーベの剣筋が鋭くともジークを上回ることは無かった。


「くっ!」


 床を滑る軍刀を取り戻そうと手を伸ばすリーベだったが、その行く手を阻むようにエーデルが立ちふさがり、立ち上がろうとしたその身体は軽々とグロモスによって取り押さえられて足が宙に浮く。

 

 武器を封じられ、体の自由を封じられ、それでも敵意は全く失われていない。その鋭い視線は今にもアインとその背中のリヴを亡き者にしようと真っすぐ向けられている。


「お前が……お前たちがアルトラ様を!」

「こいつ、暴れるなっ!」


 子どものように手足をバタつかせて暴れるリーベ。彼女を持ち上げていたグロモスに何度も手足が命中し、たまらずグロモスはリーベの頚動脈を打つ。


「ぎゃっ!」


 小さく悲鳴を漏らしたあとリーベは気を失い、グロモスの腕の中でダランと脱力する。


「……やりすぎだ」

「しかたねぇだろ!」


 苦言を呈すエーデルに言い返しながら、グロモスはリーベを肩に担ぐ。


「彼女をどうするつもりだい?」


 倒れたルルに手を貸しながらジークが尋ねる。


「そりゃ軍に突き出して……ってここが軍か。にしても他に全然人が居ねぇな」


 灰哭隊の施設に入り込んで少し経つがその間にリーベ以外の人物と会うことはなく、これだけ大騒ぎしても誰も駆けつけてこない。


「やはりアルトラは居なかったな。おそらく他の連中も去ったあとだろう」


 命を狙われたばかりだというのに至って冷静な表情で分析し、アインは引き返そうとする。


「来るべきじゃなかった。そもそもアルトラの部下たちはリヴに殺されかけている。歓迎されるわけもない」


 気を失ったリーベの目尻には涙が浮かんでいる。よく見たら顔も腫れており、何度も涙を流したことは容易に想像できた。その涙が何に対して流されたのかも。


「すまない……僕が軽率だったよ。リヴの事情まで考慮していなかった」


 リヴが意識を失う前に何があったかは知らないジークだが、そんなことは言い訳にしかならないとアインに頭を下げる。


「私も謝罪します。でもリヴがそんな事を……」

「おそらく事実だろう。現にコロシアムで見た彼女はとてつもなく恐ろしい存在だった」


 信じられないといった表情を浮かべるルルとは逆に、エーデルから見たリヴはスネイルを焼き殺した化け物でしかない。アインやジークやルルがそうまでして彼女を取り戻そうとする気持ちが全く分からなかった。


「それで、こいつどうするよ」


 沈んだ空気の中、気まずそうにグロモスが気絶したリーベの首根っこを掴んでそう言った。


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