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デッドエンドストーリー 〜不死の勇者の死物語〜  作者: ガブ
第四章 「灰哭編」

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第九十五話「町の外での争いその五」

「まいったね……」


 数々の人間や魔族と戦いを繰り広げてきた歴戦の軍人であるジークをもってしても、宙に浮きながら見えない風で攻撃を仕掛けてくるウーは驚異的な存在だった。

 オルドは風の流れで何とか攻撃を見切っているが、共に戦っていたルルは既に意識を絶たれている。

 ジークの軍服も至る所が切り裂かれ、胸につけた勲章も千切れて吹き飛ばされてしまった。



「ウー! やめるんだ! 彼らはパルメとは無関係だ!」

「いまさら僕たちを庇ってくれるのかい? リヴの事は殺そうとしたのに」


 シナムによって気絶させられたパルメを抱きかかえながら上空のウーに叫びかけるアルトラだったが、ジークは冷ややかな態度でそう告げる。


「彼女は魔族だ。だがあんたらは人間……しかも同じ国の軍人だぞ!?」

「ご心配どうも。ならば早いところあの子供を止めてくれるとありがたいんだがな」


 ならず者の町にてアテナの加護を失ったオルドは既に限界を迎えていた。あと何回攻撃を避けられるかも分からず、ウーを地面に引きずり下ろす手段は何も思い浮かばない。


 リヴが居れば。

 そんな考えが二人の脳裏に浮かび、そしてかき消される。


 何のためにリヴとアインを追いかけてきたのか。

 今まで助けられてきた自分たちが今度はリヴを助けるためではないのか。

 それだというのにまたリヴに助けを求めてしまった自分たちを深く恥じる。



「君! 降りてきて話をしないか! 僕たちは君を傷つけるつもりはないんだ!」



 武器を捨てて大声でウーに叫びかけるジークだったが、ウーは一切聞き入れる様子がない。


「傷つける? どうやって!?」


 手を左右に大きく広げながら、目の前で手のひらどうしを叩くウー。そこから発生した強力な風は大砲のようにジークに向かって突き進み、大きな衝撃と共にジークの体を後方に吹き飛ばす。


「かっ……!」


 何度も地面を転がりながら全身を痛めつけられ、ジークの意識はあの世を彷徨う。


「そう言って僕を油断させるつもりなんだろ! だまされないぞ!」

「ジーク! くそっ……!」


 吹き飛ばされたジークに視線を送り、再度辺りを見渡すオルド。アルトラを除けば立っているのは既に自分だけとなってしまった。

 こうなってはアルトラが抱えているパルメを奪取し、盾にするしかないと邪な考えさえ浮かんでくるが、寸前のところで踏みとどまる。

 そんな事をしてしまえば自分たちを人質にし、リヴを連れ去った灰哭隊と同じになってしまう。

 この場を切り抜けたとしてもリヴに顔向けできなくなってしまう。


「大丈夫だよ、オルド……」

「ジーク……お前」


 足の骨が折れたのか、ジークは左足を引きずりながらも再び立ち上がってオルドの隣に並ぶ。


「聞いてくれ! 僕たちは仲間を助けに来ただけなんだ! 君たち姉弟に敵意は無い!」


 そう叫ぶジークだが、決してそんなことは無かった。

 少なくともアルトラに対しては今でも怒りが収まらず、ある意味リヴを見捨てる形になってしまった自分たちにもぐす黒い感情が残る。ルルを痛めつけたウーにも敵意が無いわけでない。


「嘘だ!」

「嘘じゃない!」


 睨み合うウーとジーク。

 納得ができないウーが手を振り下ろすと、既に気絶しているルルの体が吹き飛ばされる。


「これでも!?」


 血管が切れそうなほど怒りが込み上げてくるジークだったが、深呼吸をして必死に気持ちを落ち着かせる。


「嘘じゃ……ない!」


 隣りに居るオルドにもジークの怒りは十分に伝わってくる。オルド自身も今すぐにウーに斬りかかりたいほど怒りに震えるが、ここで自分が怒りに身を任せてしまえばジークの覚悟が無駄になる。

 剣を握りながらも冷静な態度を取るオルドの体が宙を舞う。


「これでも!?」


 手を無茶苦茶に振り下ろすウー。それに連動してオルドの体は四方八方から衝撃が加えられ、意識が絶たれて数秒後にようやく風が収まる。


 最早ジークは言葉を発することができないほどの怒りに支配されていた。今ここで敵意が無いなどと口を開いても誰も信用しないだろう。


 無言で拳を握りしめるジークを、ウーは満足そうに見下ろす。


「ほらね嘘つき! 僕の怒りが分かったか!」


 多少落ち着きを取り戻したウーはそこで初めてパルメを襲った張本人であるシナムの姿が無い事に気が付く。


「あれ、シナムにいちゃんは?」

「ウー!!」


 アルトラの叫び声もようやくウーに届き、アルトラの方を見たウーはその怒りに満ちた表情に顔をしぼませる。


「ア、アルトラにいちゃん……僕……ねぇちゃんのために」

「いいから降りてこい!」


 あれほど怒りに任せて力を振るっていたというのに、アルトラに少し怒鳴られただけでウーは大人しく加護を解いて地面に降りる。


 だがそれではジークは納得しない。

 自分で手放した剣を拾い上げると、アルトラに向かって歩いていくウーを睨みつける。

 それに気がついたアルトラはパルメをウーに預けるとウーを守るようにジークの前に割って入った。


「許せとは言わない。だが怒りをぶつけるなら俺にしろ」


 当然だと言わんばかりにジークはアルトラの胸ぐらを掴み、顔を近づけて怒鳴り声をあげる。


「リヴとアインをどこにやったんだ! 今すぐ二人を連れてこい!」


 バルトーレの町で二人の目撃情報があったことなどすっかり忘れるほどジークは頭に血を上らせ、力任せにアルトラを突き飛ばす。

 その衝撃でアルトラの胸の柊は外れ、粉々に砕け散った。まるで彼の心を映しているかのように。




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