とっくに
そしてその状況にある者達が他にもいた。
「でさ、ウチの隣結構な被害だったんだぜ」
既に遅刻寸前で人影疎らな校門を櫻井が通り過ぎた。
「凄かったもんな昨日の台風」
その傍らには稲葉の姿もある。
ヘラヘラと話し込む二人。遅刻ギリギリの状況などお構い無しだ。
「……櫻井あれ?」
「ああ」
そして校門付近に立ち尽くす男の存在に気が付いた。
「なんだよ珍しいな。お前が待っててくれるなんて」
櫻井が覚めたように吐き捨てた。
そこに立ち尽くすのは大野。酷い怪我の痕を覆うように、包帯や絆創膏が貼られていた。
「朝陽、酷い怪我じゃん」
その痛々しい状態に戸惑い投げ掛ける稲葉。
しかし大野は冷静だ。
「……シュウとも志士の会とも決別してきた」
呆れるほど大胆に通達した。
「そうか」
静かに返す櫻井。
そして櫻井と大野、相手の表情を探るように睨み合う。重苦しい空気が場を包み込んだ。
俯く大野。
「……だから」
なにか言いたげな、はにかんだ表情だ。
「……だから、なんだよ?」
櫻井がグッと睨みを利かす。焦れったい空気が包み込んだ。
その空気に嫌気を覚える稲葉。
「な、なんなんだよ! はっきりと言葉にしろよ!」
堪らず問い質した。
そしてその一言が膠着状況を打開した。
「俺はこのガッコーで生きる決心をしたんだ」
大野が話し出した。櫻井はその表情を清々く見つめている。
「今更だけど仲間にしてくれ!」
大野の声が夏の空に響いた。
稲葉の表情が煌く。
「えっ? そりゃあもちろんだけどさ。……えっ、意味が分かんねーよ」
それでも戸惑い櫻井の表情を見つめる。
フッと息を吐き俯く櫻井。
「当たり前だろ? とっくに俺達は仲間なんだ」
やがて視線を向け直すと、感極まったように大野の肩に腕を回した。
その様子を教室の窓から相馬と里見も窺っていた。
「大野の奴、最初からその気だったのか」
呆れたように言い放つ里見。それでもその表情はまんざらではない表情だ。
「あいつはあいつなりに仲間って意味を感じていたんだろな」
しみじみと呟く相馬。冷静な彼にしては珍しく口元がほころんでいる。
その表情を見つめる里見。
「馬鹿、嬉しいなら嬉しいって言っちゃえよ」
おどけて伝えた。
「うるさいんだよ。俺はな……」
「あらぁ? クールな相馬が照れてるよ」
「……照れてねーよ」
「おっしゃー! この勢いで葛城とでも合流して、てっぺん目指すか?」
「……馬鹿。調子に乗り過ぎだって……」




