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台風一過


『……昨日関東地方に膨大な被害をもたらした台風15号はその後急激に勢力を弱め、太平洋沿岸で消滅しました。同時に上空に居座っていた梅雨前線を押し上げ、待ちに待った梅雨明けです。本日の気温は……』


 真っ青な空が輝いていた。モクモクとそそり立つ入道雲。ジリジリと鳴き誇るセミの声。そして天空を支配する灼熱の太陽。

 それは台風一過の朝の爽やかな光景。オーク学園にはいつものように多くの生徒達が登校していた。

「はぁー暑いなぁー」

 ぶつくさと呟きながらシュウも登校してくる。その数メートル後方からはマリアがついてくる。

「お早うシュウ、マリアちゃん」

 そこに真優が挨拶をかわしてきた。

「よお」

「お早うございます」

 シュウとマリアも挨拶を返した。

「なんか、酷いシップだね?」

「ああこれか。大袈裟なんだよ病院の医者」

「……シュウだからね」

 こうして三人、並んで歩き出す。

「それにしても今日は爽やかな天気ですね」

 マリアが言った。

「ホントだぜ。昨日の天気はヤバかったけどな」

 シュウが返す。

 その台詞にうんうんと頷く真優。

「本当凄かったよね。方向転換して来たと思ったらあっさり消滅するなんて、誰かを狙って来たみたいだったよね」

 そして笑った。

『……まさかな』やや青ざめるシュウだった。


「オウコラ、シュウ!」

 その時突然、後方から誰かの呼び止める声が聞こえた。

「はぁ? 誰だよ」

 ムカつき加減に振り返るシュウ。そこに立っていたのは詰め襟を羽織った玉木だ。まだ怪我は癒えてはおらず松葉杖に身を預けている。

「なんだよナンパ師、退院したのか」

「夏だかんな。いつまでもあんなシケたとこにいれねーよ」

「……つまり脱走してきたってことか。相変わらず訳分かんねー奴だな」

「お互いさまだ」

 サバサバと会話する二人。

 不意に玉木が顔を寄せる。

「聞いたぜお前、琴音にフラれたらしいな」

 そしてシュウの耳元に囁いた。

 厳密に言えば、シュウは付き合っていた覚えはないしフラれた覚えもない。だがあれから一度も琴音とのやり取りがなかったのは確かだ。

「まぁ。どうやらそうらしい」

 困惑気味に頬を掻いた。

「ま、お前と琴音じゃ釣り合いが合わなかったのさ。流石は琴音だよ分かってるぜ」

 そのシュウの思いを知ってか知らずか玉木が満面の笑みで言い放った。


「玉木せんぱーい!」

 そこにサトルが現れた。車椅子に乗って、慌てふためいたように必死で玉木の元へと急いでいる。

 その意外な登場に困惑する玉木。

「なんだよサトル? まだ退院は先だって聞いてたぞ?」

 心配そうに投げかけた。

「ボク、葛城先輩がヤバイって聞いて。……まさかそんなことになってるなんて知らなかったから、慌てて抜け出して来たっす」

 テンぱり気味に答えるサトル。自分の仲間が次々と襲撃に遇い、葛城ひとりが志士の会と闘うはめに陥っていたことを知らなかった。

 粗方の仲間に訊ねてみたが詳しいことは解らずじまい。一晩眠れず慌てて登校してきたのだ。

 因みに昨晩玉木は勝手気ままに病院を抜け出すことによる病院の報復措置で、誰とも連絡出来ぬよう軟禁されていた。


「そうかサトル。全て聞いちまったんだ」

 穏やかな笑顔を向ける玉木。

「大丈夫だって、あいつは不死身だぞ」

 咄嗟にサトルの頭を抱きかかえ拳でグリグリしだした。

「痛い! ……痛いっす玉木先輩」

 堪らず悲鳴を漏らすサトル。

 そして玉木。真っ直ぐにシュウを見つめた。

「あいつはひとりなんかじゃなかったさ。……“魔王”みたく強くて、それでいて大馬鹿野郎が加勢してくれたから」

 意味深に伝えた。

 その台詞にサトルがシュウを見据える。目の前のシュウは幾多のシップや絆創膏が貼られていた。……まるでさっきまで凄まじい争いを繰り広げてきたようだ。

 うっすらとだが昨夜のことに気付き、ペコリと頭を下げた。

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