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幻想


「ダメだ。……こんなバケモノ相手に勝てる訳がない」

 恐怖に後退る古谷。外に向かって脱兎の如く逃げ出す__


「えっ?」

 しかしそこに広がる光景に、我が目を疑った。信じられず戸惑った。

 雨はやんでいた。延々と続く暗黒の雲を円状に切り取ったように鮮やかに広がる夜空。

 その真ん中に浮かぶ満天の月明かりに照らされ、青白い世界が広がっている。草木から滴る水滴が幻想的に輝きを放ちだしていた。

「……嘘だろ。まだ暴風圏の筈。……台風の目って奴か?」

 呆然と見据える古谷。しかし今は考える余裕はない。

 右手方向大通りに続く小道では、数人の男達が乱闘を繰り広げている。

「くっそっ。仕方ねーな」

 こうして濡れそぼった草むらを一心不乱に逃げ続ける。

 だがその行く手にひとりの男の姿があった。空に向かってため息をついていた。

「はぁー、損な役割ですね。どうして私がこのようなことを」

 つぎはぎだらけの黒い詰襟に身を包み酷く貧相に見える。その赤い髪の毛が月明かりに照らされて燃えるように輝いていた。


「お前は確か赤城?」

「仕方ないんですよ。我々はルカ様の下僕しもべ

 古谷が言い放つがグレンは答えない。やるせないように呟く。

「その意志に従うしか術を知らない!!」

 突き刺すような眼光が古谷を捕らえた。

「なにが下僕だ! 消えやがれ!」

 恐怖を振り払うように鉄パイプを振り放つ古谷。

 バサッ! 草むらが弾かれ水滴が宙に舞った。だがそれはグレンには掠りもしない。流れるように避けられる。


「ちょこまかとムカつくんだよ!」

 渾身の力でグレンの首筋目掛け鉄パイプを振り払う古谷。

「……えっ?」

 だがいつの間にかグレンの姿が消えていた。

「ど、どこだよ?」

「終わりにしましょう」

 背後から囁かれる静かな声……

「…………」

 無言で膝を折る古谷。ガックリと草むらに倒れこんだ。

 その様子を後ろから見下ろすグレン。ゆっくりとその場を後にした。




「ギャーァ!!」

「殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す・殺す………」

「止めてくれぇーっ!!」

「グフ、ザク、ドム、ゲルググ………」

「何故だぁ!? 何故ファン倶楽部が?」

 倉庫内は阿鼻叫喚の様相を呈していた。宝仙の仲間はマリアファン倶楽部の前に成す術なく討ち果てていく。まさに地獄絵図だ。


 愕然とその様子を見つめる宝仙。

「ダメだ、敵う訳がない」

 後退りながら入り口へと足を進めだす。

「……大将たるものが戦場から逃げ出すのか?」

 突然、後方から声が響いた。

「……」

 凄まじい気配に気付く宝仙。背筋に冷たい汗が吹き出た。ガクガクと震え顔面蒼白で振り返る。

 そこには何者かが佇んでいた。

「俺様は貴様らのような下衆の闘いなどには興味などなかった。クソ共がアナグラの中で争そおうが関係ないからな」

 逆光でその姿かたちは覚束ないが、凄まじい覇気が感じられる。

 月明かりに照らされて透き通る肌がキラキラと輝きを増す。一陣の風が吹き込む。銀の髪が妖しくうねる。

「パンドラの箱が開いて最後に現れたのは希望だと言うが、実際は違うさ……」

 そして天空が再び暗雲に包まれる。

 ガラガラガラ…… 稲妻がざわめく。辺りは一瞬で元の暴風圏に成り代わった。

「最後に現れるのは“無”だ。この世の全て一切は次元の狭間に掻き消えるのだ」



 ズダーーーン!! 全ての世界を輝きに染めて一際巨大な雷が落下した。


「か弱き女を泣かすクソ野郎は、この俺様がぶち殺してくれようぞ!!」

 幾多の眩い光に包まれてルカが吠えた__

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