百鬼夜行
「愚か者!! この羽織に身を包みし時は“土方歳三”と呼べ!」
疾風の如く駆け出すゴン太。金髪の身体目掛けて刀を閃かせた。
金髪は声を挙げる暇もなく、悶絶の表情で崩れ落ちる。
「安心せい峰打ちじゃ」
ゴン太が吐き捨てた。
「まさか……倶楽部が動いたのか!?」
ワナワナと震える宝仙。
「そんな筈は、奴らの狙いはシュウだった筈だろ?」
古谷もテンパり気味に辺りを窺った。
辺りから猛烈な覇気が感じられた。酷く不気味でこの世のものとは思えぬ覇気。
「なにがマリアファン倶楽部じゃ! 宅ちゃんならいざ知らず、他の住人は勢いだけの雑魚。しかもゴン太は大怪我を負った怪我人! 怯むことなくぶち殺せ!」
ヘビー級の大男が吠えた。元レスリング部の猛者で、ヤクザ相手に大立ち回りを繰り広げた男だ。
「……だよな。奇抜な格好してるから度肝を抜かれるが所詮はオタク」
「だわ泣かしてやるぜ」
その檄に呼応して、宝仙の仲間達も一斉にゴン太を狙う。
「雑魚じゃと? 言うてくれるのう」
突然低い声が響き渡った。
「ふえっ?」
愕然と攻撃の手を止めるヘビー級の男。
その目の前に由利の姿があった。そしてその頭の上には当然猿飛の姿も。
「ボクは倶楽部は引退した。だけどダメなんだよね、女の子を泣かすような奴らは」
猿飛の瞳が暗闇でらんらんと光る。
「由利、猿飛?」
愕然と言い放つヘビー級。
「黙れ! 叩き潰す!!」
強烈な右フックを繰り出した。
「……なっ?」
しかしその拳は宙を切る。いつの間にか由利と猿飛の姿が消えていた。
「……どこだ」
愕然と辺りを見回すヘビー級。他の面々も困惑気味にその情況を窺っている。
「確保するよ」
上空から響く猿飛の淡々とした台詞。
「なっ!!」
ヘビー級の体躯が赤い縄で絡め獲られ、天井に逆えび状態で釣り上げられた。
「ワイらは鳴神なんぞに義理はないが、助太刀いたす!!」
「そう言うこと」
同時に黒い影が天井から男達を襲い出した。
「マジかよ! 奴らの参戦は計算違いだ!!」
「どこだ見えねーぞ!!」
「ギャー、引っかかれた! ……縛られるーー!!」
由利と猿飛の姿は普通の人間には見切れる筈はない。恐怖と痛み、恥辱の籠もる叫びが辺りに響きだす。
ブァサッ! 低い軌道で別の誰かが突っ込んできた。
「命令なんだな。仕方ないんだな」
「ギャーッ!」
「なんだって!?」
「いてーよ!」
そして次々と男達を襲いだした。
「嘘だろ? ……あのひょろっとした身体。あのカマキリみたいな動き」
「蘇る鬼神!?」
「宅ちゃんだ!」
「学園の主だ!」
「殺される!!」
暗闇にそそり立つ背の高い巨映。そのこの世の者とは思えぬ動き。まさしくオーク学園の主にしてマリアファン倶楽部会長・宅ちゃんだ。
同時に暗闇から幾多の生徒がなだれ込んできた。それは、アイドルマニア・ロボコンマニア・戦争マニア・鉄道マニア・極道マニア・ドラクエマニア・ダンプ松本マニア・なめ猫マニア・エヴァマニア・蟻んこマニア・まいっちんぐマチコ先生マニアと様々だ。
(知らない単語はお父さんお母さんに聞いてね)
その誰も彼もが強烈な個性と攻撃力を携えている。あっという間に大乱闘が開始された。




