それでも前へ
「どうしたよ、アッキ。会との別れはすんだのか?」
シュウが訊ねた。
「決別は済んだ。……元々あいつらとは住むべき世界も違ったしな」
サバサバと吐き捨てる大野。
二人はロビー中央で静かに対峙していた。辺りでは傷だらけの男達が、その気配を悟られまいと息を殺して視線を向けてい
相変わらず外は雨と稲光、そして耳をつんざく爆音の世界。窓にぶつかり、滝のように滴る水流が緊迫感を増していた。
「そんなこと、入学当初から知っててたことじゃんか」
覚めたように言い放つシュウ。
「知ってたけど、慕って付いて来てくれたんだ。どうしようもないだろ」
大野が寂しげに返した。
「結局奴らはお前の名声を利用してただけじゃんか」
「利用されてたって良いと思ったのさ。あの頃は若かったから」
「ジジイ臭い台詞だな。あの頃ってまだ一年前じゃんよ」
「ふっ、そうだな。……つくづく思うよ、“時ってのは残酷”だって」
淡々と静かに、それでいて互いの胸の内を吐露するように言葉を交わすシュウと大野。それは輝かしい過去を求めるような、それでも無理だと判り得ている会話だった。
やがてその会話が途切れた。嵐の音だけが響きだす。
「俺はガキじゃない。お前の思いなんか、今更知ろうとは思わない」
静かに投げ掛ける大野。それをシュウは黙って聞き入るのみ。
「だけど進まないんだよ。“あの時”から時間が止まってるっ……」
大野は歯を噛み締め、グッと握り締めた拳に視線を向ける。その表情はなにかの想いを籠め、そしてなにかの決心をつけようとしているようだ。
「……シュウ!!」
その感情を顕わにするように声を荒げた。
「なんだ、アッキ!」
シュウも呼応して声を荒げた。
「悪いが“過去”との決別、付けさせて貰うぜ」
大野が拳を構えた。
暗黒の世界に雨は降り続いていた。全ての悲しみを凝縮したように。風はその悲しみをなぐさめ、そして時には諌めるように吹き続ける。そして時折、その怒りをぶちかますように激しい落雷が叩き落される。
季節の間に訪れる嵐。それは悲しき思い・拭えぬ過去・やるせえぬ出来事、その全てを洗い流してくれる情熱なのかも知れない__




