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脅威を分断しろ


「な、なんてこった……」

 茫然自失で見据える湯田。その場に居合わせる仲間の数は既に半数を切っている。有り得ないシュウの強さと、葛城のタフネスぶりに恐怖を覚え始めていた。

「どうすんだよ湯田、あいつら討ち取れるのか? 葛城はともかくシュウは計算外だ」

「これじゃ宝仙達に加勢を求めても間に合わなくなるぞ?」

 数人の男達も戸惑うように囁く。

「ああ、分かってる。だけどあまり早く奴らに応援を求めては、奴らにナメられちまう……」

 その様子を大野は冷めたように見据えている。

「だったらあの二人を分断させればいいだろう?」

 そして意味深に言い放った。

「はあ?」

 訳が分からず視線を向ける湯田。

「俺達の狙う獲物は“葛城”。……“シュウ”じゃない。あいつは思わぬアクシデントだ」

 おもむろにシュウを睨む大野。

「頭を使えよ。まずはシュウに時間稼ぎの兵隊を送るんだ。そして葛城の気を俺達に集中させる。そしてここを離れて、防火シャッターを下ろせばシュウを分断出来るだろ?」

 ハッとなる湯田。

「成る程。手負いの獣だけならこの人数でも充分勝つ見込みはある。流石は朝陽ちゃん」

 卑下たような笑みを浮かべた。


 ズバーン! 葛城が目の前の男を弾き飛ばした。

 バキーッ! 同じくシュウもアフロの男に拳を突き込んだ。

「さあ湯田、大野。いい加減決着を付けるぜ」

「まったく、やっとエンジンが掛かってきたよ」

 そして二人、ユラユラと歩き出す。


 いつの間にか大野達はフロントの奥へと続く廊下付近で立ち構えていた。

 大野は一番手前で腕を組み壁に背を預けている。湯田の方は小柄な男になにやらヒソヒソと耳打ちしていた。

 小柄な男は出川でかわ。オーク学園の三年生にして志士の会でも熱血漢を誇る男。

「へっへへ、そうかここで真打登場って場面なんだ。それこそがボクちゃんの使命って奴だな」

 その出川の瞳が輝いた。

「頼みましたよ出川先輩。あんたならやれる」

 その背中に湯田が投げかけた。

「これで手柄を取れば、幹部の椅子も夢じゃない」

 益々意気込む出川。意気揚々とシュウ目掛け歩き出す。その態度は揺るがない。鼻歌を口ずさみ葛城など眼中にないようにスルーして歩き続ける。


「……どうする気だ湯田。まさか逃げようって魂胆じゃあるまいな?」

 だが対する葛城は出川などには興味を示さない。湯田に向かって訝しげに問い質した。

 その問い掛けに湯田の口元から笑みが零れた。

「そうさせて貰いたいが、そうは出来ないじゃん。ただシュウが邪魔者だってことさ」

 同時に葛城と湯田達の間を遮断するように防火シャッターが下りだし始めた。

「チッ、姑息な真似を」

 サッと走り出す葛城。

「あっ! 俺様を置いてくつもりか?」

 その事態にシュウも気付く。

「ムダだぜシュウ。お前の首、ボクちゃんがいただく」

 出川がその眼前で堂々と言い放つ。

 しかしシュウは眼中にない。無視して走り出す。

「おい、シュウ! ボクちゃんをナメるなよ!! ボクちゃんは湯田を高みに押し上げ、てっぺんをもぎ取る男なんだぞ!!」

 声を荒げシュウの肩を掴む出川。

 オーク学園三年生出川、こう見えても義に篤く、崇高なる理想を求める男なのだ。

「覚えておきな、シュウ! ボクちゃんの名前は出川てつ……」

「うるせーんだ! 俺様の肩を触るんじゃねーーっ!!」

 シュウが手で押し払った。

「ギャフーン!」

 オーバーアクションで吹き飛ぶ出川。

 ……オーク学園三年生出川。求める理想は高いが、なにせ弱い。…そのうえ騙され易い残念な男だ……

「な、あの馬鹿、一撃で吹き飛ばされやがった! 足止めにもなりやしねー」

 その様子を愕然と見据える湯田。


 まだシャッターは閉まり切ってはいない。その間に葛城は悠々と入り込む。

 そして大野共々、覚めたようにシュウを見据えている。

「閉まんじゃねーぞ!」

 怒号と共に走りこむシュウ。

 ……ズルッ……… 突然一回転して頭からコケた。

「はっ?」

「へっ?」

「嘘!?」

「ギャグか?」

 愕然とした空気が辺りを包み込む。

 シュウはバナナの皮に足を取られてコケたのだ。

「ウッキー?」

「ギャハハハ! 流石はシュウ!」

「そのセンスは昭和だな!」

「有り得ねーって、最近のギャグでもやらねーよ」

 大爆笑が巻き起こる。

 その間にもシャッターは下がっていく。最早滑り込める距離ではなかった。

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