魔王登場
ガシャーーン!! 煌きと共に自動ドアが叩き割られる。横殴りの雨が、堰を切ったように一気にロビーに吹き込んだ。
「なんだぁ?」
「入り口のガラスが吹き飛んだぞ」
「なんちゅう風だ。なにかが飛んできたのか?」
目を細め入り口を窺う男達。
「……ったく、こっちは雨で散々だっつーの」
そこにグダグダと呟きながらシュウが進入してきた。額から滴る一筋の血を舌なめずりして、端から見れば危険極まりない表情だ。
「……シュウ!?」
「シュウの奴だ!」
愕然と視線を向ける男達。
「貴様はシュウ? なんでここに?」
立ち上がる湯田。ようやくシュウの登場に気付いた。
しかしシュウはそんな状況はお構いなしだ。
「はっ、街にたむろするクソ共がゴロゴロいるな」
怪訝そうに辺りを見回す。
「シュウだと?」
そのシュウの出現を察し大野が横目を向けた。
だが葛城は冷静だ。
「喧嘩の最中に余所見か!」
大野の頬をその拳が掠めた。
視線を葛城に直す大野。
「……悪いな、つい気を取られた」
呼応するように拳を繰り出した。
その二人のやり取りを冷ややかに見据えるシュウ。
「はん、狂犬。マジで来てたんか。オークのてっぺんの野望、遠退いたな」
やがて呆れたように吐き捨てた。
しかし葛城は答えない。黙々と大野とのバトルに打ち込んでいた。
戦闘服を着込んだ巨大なスキンヘッドが、木刀片手にシュウに歩み寄る。
「シュウだかなんだか知らんが、ここは貸切だぜ。それに扉の修理代、幾らかかるか分かってんだろうな?」
その台詞から察するにどうやらシュウの顔を知らない様子だ。
その台詞に戸惑いを覚えるシュウ。
「ちょ……ちょっと待ってくれ。金はないんだ。……寒さと苦痛に堪えきれずつい壊しちまったんで、ひとつ穏便に」
慌てて答えた。
「理由になるか、馬鹿たれ! 状況を理解してねーらしいな。ここは貴神会の持ち物なんだぜ!」
勝ち誇ったように堂々と通達する戦闘服。
「……貴神会? ……ヤクザの持ちモンなのかこのホテル」
その台詞にピクリと眉をひそめるシュウ。
「そうさ、ビビったのか? けつの毛までむしり取られるぞ」
戦闘服が敢然と言い放った。
しかしシュウの対応は違った。
「アハハハ! ……ヤクザのもちもんか」
声高々に笑い出した。その意外な展開に呆気にとられる戦闘服。
「ヤクザのもちモンならカンケーねーな! どうりで辛気臭いと思ったんだよ!」
戦闘服の額に青筋が走る。
「ヤクザモン、ナメてんのか!!」
勢いのままに木刀を振り出した。
シュウの口元に笑みが浮かぶ。間髪入れずその懐に飛び込んだ。
「ナメてねーよ!! どうせてめーは、ヤクザになれないチンピラだべ!!!」
そして渾身のアッパーパンチを戦闘服の顎に叩き込む。
「グハーーッ!」
唾液を滴らせ身体を宙に舞わせる戦闘服。
数メートル吹き飛び、観賞植物を薙ぎ倒し倒れ込んだ。
湯田達はその呆れた展開に声を失う。
シュウが立ち塞がるソファーを足で押し払った。
「俺様はよヤクザは嫌いだ。だけどよそのヤクザの名前語ったり、それに媚びへつらう奴らはもっと嫌いなんだ。義理はねーけどよ、ヤクザの息子の加勢してやんよ!!」
そして堂々と通達した。
その台詞に湯田の顔色が恐怖で青ざめる。
「だからなんだ。こうなればついでだ。てめーの首もぎ取って、俺の名声一気に広めてやるよ!!」
それでも気を奮い立たせ言い放った。
「遊びは終わりだ! 狂犬葛城、及び魔王シュウ、一気に叩き潰せ!!」
その号令に男達が駆け出した。




