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ムカつきの魔王



 キキーッ! 目的のホテルは小高い丘の頂上に建てられていた。

 その坂道の入り口にカブが横付けされた。

「サンキューな!」

 素早く降車し、ホテル目掛けて坂道を駆け上りだすシュウ。

「……あ、安全運転の神が、天候の神とタッグを組んだのか?」

 呆然と見送る一弥。

 カラカラカラ…… 外れたタイヤが無情に転がっていく。

 折角キメ込んだリーゼントは雨でグチャグチャだ。お気に入りのアロハシャツもビリビリに裂けている。

「……西口の戦争。……俺はどうやって帰れば……」

 既にカブはスクラップ寸前だった……




 葛城と大野のバトルは白熱を帯びていた。


「すげーぜ大野。こうなりゃ俺達の出番はなしじゃねぇ?」

「へへっ、葛城の方も普段の力出せないみてーだな。片方の拳が使えねーんじゃしょうがねーか」

「例え朝陽が負けても、俺らが始末出来るしな」

 その様子を湯田達が余裕の表情で見守っている。ソファーに深々と座り込みふてぶてしい態度だ。

 葛城と大野が同時に胸ぐらを奪い顔を合わせ睨み合った。

「どうした葛城? それがお前の力か?」

 静かに囁く大野。

「へっ、てめえこそ真剣に喧嘩してるツラじゃねーよな。……誰かを待ってるってツラだ」

 呼応して葛城も低い声で囁いた。

 やがて二人、互いを弾き出すように後方に飛び退く。

「まったく、タフ過ぎる男だよな」

「じゃかーしーんじゃ! てめぇこそ早く吹き飛べ!」

 そしてまたぶつかり合った。




「おっかしーな。どうして開かねーんだ?」

 一方その頃、シュウが正面入り口の前で立ち尽くしていた。

 ホテルの入り口は自動ドアな筈なのだが一向に開かない。それもその筈だ、湯田達が部外者の侵入を阻止する為にセンサーを切っていたのだから。

 横殴りの雨が容赦なく彼に降り注ぐ。

 ズバーン! 風に飛ばされた広告看板がぶつかった。……しかもエロ系。

「痛てーんだよ! なにが“オネーさんといっしょ”だ!」

 ムカつき気味にそれを叩き壊す。

 ズドーーン! 近くの立木に雷が落雷した。真っ二つになりシュウの頭頂部を直撃した。

「ア……アホかぁー! クソ雷!」

 叫んで倒木を蹴り上げた。

「グッダラー! 開けろよクソ共!!」

 そして自動ドアをガンガン叩き出す。

 その見える範囲では、大勢の男達が背を向けてロビー奥側に集中している。雨音と滴る水滴でシュウの姿には全く気付かないようだ。

「仕方ねー。弁償しろって言われねーべな」

 グッと拳を握り締めた。

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