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バイブル・コード 〜ディストピアの青年が覚醒して神のシステムに叛逆する〜  作者: 中門大良
第6章【潜伏する牙】

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8-4.超越者爆誕

ドガァァァァァンッ!!!!


天地を揺るがす大爆発の火柱が、バグの大軍勢の真後ろから天を突いた。


「な、なんだぁっ!?」

防壁の上で迎撃態勢をとっていたローガンが、思わず目を見張る。

爆炎は、単なる熱量によるものではなかった。それは禍々しいバグのノイズを完全に中和し、一瞬で消滅させる、澄み渡ったコバルトブルーのエネルギーの奔流。

そのたった一撃の余波だけで、大軍勢の後方にいた数十体のバグが、悲鳴を上げる間もなく消し飛んでいた。


『──待たせたな。妙な大移動を検知したから追いかけてみれば、ずいぶんと派手に集まってやがる』


通信システムを介して響いたのは、深く、地響きのように重厚な男の声。ガロングのボス──オッドだ。

煙がサァと風に流され、爆心の向こうから二つの影がゆっくりと歩を進めてくる。

一人は、無数の傷が刻まれた重厚なバトルスーツを完璧に着こなす隻眼の男、オッド。

そしてその隣には、どこか神聖さすら感じさせる深淵な蒼の粒子を、陽炎のように全身から静かに立ち上らせている青年──リュウの姿があった。

かつて左腕だけに集中し、暴走寸前だった青い力。それを1年間の特訓の末に全身へと巡らせ、力の浪費を極限まで抑え込むことに成功した、超越者の立ち姿だった。

「リュウ!オッド! 捜索の方はどうだったんだよ!」

サカキが通信越しにニヤリと笑う。

「収穫なしだ。この世界には、俺たちが追ってる連中の気配は微塵もない」

オッドが肩をすくめ、葉巻を咥えるような気怠さで吐き捨てた。

「それよりサカキ、ちょうど良かった。リュウの『特訓』の付き合いで、少し手を焼いていたところでな。──リュウ、目の前のゴミどもで試してみろ。目標は、街の防壁に被害を出さずに、あのデカい『王』も含めて一網打尽だ」

オッドの言葉に、リュウは無言で頷いた。

自身が生まれ育った世界とは異なる物理法則。移動したばかりのこの世界では、今のリュウは本来の力の「30%程度」までしか引き出すことができない。だが──目の前の敵を蹴散らすには、その制限された力すら、あまりに過剰だった。

「グルァァアアアッ!?」

背後からの奇襲、そして僅か二人から放たれる異常なプレッシャーに気づき、バグの『王』が全軍を振り返らせた。数十のバグが牙を剥き、一斉にリュウへとターゲットを切り替えて殺到する。

大地を埋め尽くす赤黒い波。だが、リュウはただの一歩も引かない。

ゆっくりと右手を前方に突き出し、手のひらを大きく広げた。


(この世界に馴染みきっていない今、引き出せる限界は30%程度……。なら、20%も乗せれば十分か)


全身を巡る蒼い力の奔流を、リュウは脳内で極めて冷静にコントロールする。

今の自分が出せる限界に近い、20%の出力を右手の先に意識した瞬間、リュウは広げた手のひらを、空間ごと何かを掴むようにグッと力強く握り込んだ。

キィィィィン……!

リュウが拳を握った刹那、その手の中に周囲の空間が一度「ギュッ」と歪みながら凝縮され、凄まじい密度の蒼い光球へと圧縮される。

「消えろ」

静かな呟きとともに、握り込んだ拳を前方へと突き出し、一気にその手のひらを開いた。


ドンッッッ!!!!


空間の歪みの反動が、爆発的なエネルギーとなって解放される。リュウの手のひらを起点に、扇状の圧倒的な青い衝撃波が地を這って炸裂した。


閃光。


音すらも消滅したかのような静寂の中、蒼の波動が数百のバグの軍勢を一瞬で透過していく。

それは破壊ですらなかった。空間そのものを歪めて生み出された衝撃波に触れたバグたちは、肉体も、エネルギーも、そしてその胸奥にあるはずの核(コア)すらも、まるで最初からこの世に存在していなかったかのように、サラサラとした光の砂となって大気へ溶けていく。

「ガ、ア……ッ!?」

辛うじて一瞬だけ踏みとどまったバグの『王』も例外ではなかった。自慢の巨体も、知性を持った脳も、蒼い光に包まれた次の瞬間には、完全に概念ごと消滅させられていた。

ほんの数秒。

地平線を埋め尽くしていた数百の大軍勢と、世界を脅かしていた化け物の『王』は、影も形もなく消え去り、そこにはただ、美しい緑の平原だけが取り残されていた。


「……は?」


防壁の上で、狼型の隊長フェンリスは、完全に思考を停止させて顎を落としていた。


自分たちが国を挙げて命がけで戦い、勝つことすら絶望視していた『王』の軍勢が、たった一人のニンゲンの手のひら一つで、文字通り塵一つ残さず全滅したのだ。

「おいおい……」ローガンが引きつった笑いを浮かべる。「まだこの世界に身体が馴染みきってねえってのに、相変化わらず規格外すぎるだろ、リュウ」

「そうか?」

リュウは突き出した手を下ろし、笑った。

サカキが防壁から飛び降り、リュウたちの元へと歩み寄る。

「ま、何はともあれこれで一件落着だ。──おい、フェンリス隊長!」

サカキが防壁の上の獣人を見上げ、親指を立てた。

「お前らの言ってた『化け物の王』、今ので完全討伐完了だ。約束通り、このガロングが、力を貸してやったぜ?」

静まり返る平原に、新生ガロングの足音が響く。


それは、バイブルなき異世界に刻まれた、新たなる伝説の第一歩だった。

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