7-2.青の進撃
地下基地の通路に、無数の火線と肉を穿つ重低音が響き渡る。
しかし、それは数分前までの防衛戦とは完全に攻守が逆転した音だった。
「オラァッ! 道を開けな、エリートども!」
ローガンが肩の傷をものともせず、奪った敵の重機関銃を乱射して突撃する。その背後から、ブラッドが影のように跳躍し、ローガンの銃撃をシールドで防ごうとした特務兵の死角へ回り込んで散弾銃を叩き込んだ。
「アル、次の隔壁のセキュリティはどうなってる!」
サカキがアサルトライフルでハウンドの反撃を牽制しながら、通信機に怒鳴る。サーバー室に残ったアルは、リリスの演算サポートを受けながら、神がかった速度で管理局のメインフレームをハッキングし続けていた。
『――この区画の防衛隔壁、強制解放! ハッキングバックボーンを伝って、スラムの全ゲートを突破しました! 上層に見える管理局の中央タワー、エナのいる最深部中枢までのエレベーターシャフト、すべて青信号です!』
「よくやった! スラムを飛び出すぞ、行くぞ!」
サカキが声を張り上げる。だが、この圧倒的な速度での逆侵攻を可能にしているのは、ガロングの精鋭たちの奮闘だけではなかった。
その中心にいる、リュウだ。
リュウがただ先頭を歩むだけで、彼の左腕から溢れ出る圧倒的な「青い光」が、管理局の迎撃レーザーや自動砲座を次々と「無効化」していく。空間そのものを書き換えるようなその不可思議な力は、ハウンドたちの誇る最新兵器をただの無機質な鉄屑へと変えていた。
「敵影、前方にさらに一小隊! 重シールドを展開して固まってやがる!」
ブラッドが叫ぶと同時、スラムの境界ゲートの向こうから、漆黒の装甲をさらに分厚くした特務兵の壁が現れ、一斉に熱線銃を構えた。
「――俺の後ろに」
リュウが静かに、だが逆らいがたい威厳を持つ声で遮った。
ガロングの3人が反射的に足を止め、リュウの背後へと身を滑り込ませる。
リュウは速度を緩めることすらなく、左腕を正面へと突き出した。
彼の皮膚の下を脈打つ鮮烈な青い光が、奔流となって通路を突き抜ける。特務部隊が放った一斉射撃の光条は、リュウの手前で物理法則を無視して霧散し、それどころか彼らが展開していた電磁シールドそのものが、青い光に侵食されて粒子のように分解されていく。
「な、んだと……シールドが消滅していく……!? 化け物め!」
特務兵の悲鳴が上がる。
リュウは歩みを止めない。完全に力を掌中に収めた男の瞳が、静かに敵を見据える。左腕の輝きがさらに密度を増し、空気そのものが圧搾されるような凄まじい風圧が巻き起こった。
「そこを退け」
ドンッッッ!!!
リュウが軽く手を払った瞬間、不可視の「拒絶」の質量が爆発し、重装甲を誇る特務兵の一小隊が、まるで紙屑のように後方へと吹き飛ばされ、完全に沈黙した。
かつて管理局の犬だった頃の迷いも、力への恐怖もそこにはない。ジンの「守るための力」を完全に手なずけ、戦場を支配する絶対的な主導権が、今のリュウにはあった。
「……すげえな」
サカキが呆気にとられたように呟き、アサルトライフルを肩に担ぎ直した。ローガンとブラッドも顔を見合わせ、頼もしすぎる主人公の背中に獰猛な笑みを浮かべる。
「行くぞ。スラムを見下ろすあのクソ高いタワーに乗り込んで、今度こそエナと決着をつける」
リュウの言葉に、ガロングの精鋭たちが歓声に近い雄叫びを上げて続いた。
彼らはスラムを飛び出し、天を突く管理局の中央タワーへと一気に攻め上っていった。




