5-1.鋼鉄の残響
火花が、暗闇を鋭く切り裂いた。
リュウの放った漆黒の雷光を、カインの振動ブレードが真正面から受け止める。超高周波の金属音が、鼓膜を執拗に突き刺した。
「……速いな、リュウ。だが、それだけだ」
カインの声には、一切の揺らぎがない。彼は最小限の動きで雷光をいなし、カウンターの回し蹴りをリュウの脇腹に叩き込んだ。
強化外骨格の無慈悲な重圧。リュウは吹き飛ばされ、背後のタンクの脚部に激突して激しく咳き込んだ。
『警告、防護フィールドに致命的な亀裂。……リュウ、重電磁砲の充填率が90%に達しました。発射まで残りわずかです!』
リリスの警告が、死へのカウントダウンを刻む。
リュウは立ち上がろうとするが、痣から走る激痛が全身を縛り、膝が崩れた。脳内では、ジンの苦悶に満ちた拍動が、まるで自分自身の心臓のように激しく、脆く響いている。
「……終わりだ、リュウ。お前の『ノイズ』は、ここで消去される」
カインが冷徹にブレードを振り上げた。
その刹那だった。
ドォォォォン!!
頭上の排熱ダクトが、凄まじい衝撃波とともに内側から爆散した。
降り注ぐ瓦礫と鉄屑がカインを襲う。彼は反射的に後方へ飛び退き、銃を構える執行官たちも一斉に上空へ銃口を向けた。
「……相変わらず、土壇場で詰めが甘いようだな。リュウ」
土煙を切り裂いて着地したのは、管理局の意匠を無造作に削り取った重装甲を纏う男。
サカキだ。
その手には、管理局の最新シールドをも粉砕する、非正規の「大口径破砕砲」が握られていた。
「サカキ……お前、なぜここに……っ」
「おしゃべりは後だ。……野郎ども、ぶちかませ!」
サカキの合図とともに、ダクトから無数の閃光弾が投げ込まれた。最深部のホールが真っ白な光に包まれ、執行官たちの視界とセンサーを強引に焼き払う。
「……撤収だ! 一旦引くぞ!」
サカキがリュウの襟首を掴み上げ、強引に肩に担ぎ直す。
混乱する管理局の包囲網を、サカキが連れてきた武装集団――泥臭くも精密な連携を見せる兵士たちが、銃撃で切り裂いていく。
「サカキ、待て!まだやることが……!」
「死にたくなきゃ前を見ろ! 命が繋がってりゃ、チャンスはまた来る!」
背後でカインの怒号とレールガンの発射音が響き、衝撃波が通路を揺らす。だが、サカキたちは迷うことなく、あらかじめ用意されていた隠し通路へと滑り込んだ。
管理局の支配が及ばない、暗いスラムのさらに底へ。




