第96話 ステラのステータス……そしてダンジョンへ
――チュンチュン
小鳥の鳴き声が起きたばかりの頭に耳を通して入ってくる。
鶏のうるさい鳴き声とも、目覚ましの音とも違う爽やかな目覚め――ができたら良かったのにな~。
「……襲撃を警戒していたのに普通に朝を迎えてしまった件」
現在の場所は宿屋の一室。
同室のステラとリルはベッドで熟睡中だ。途中まではがんばって起きていたけど、やはり眠気には勝てなかったよう。
ちなみに私は一睡もしていない。
もちろん、新スキルの効果によるものだけど。
『〈睡眠無効化〉……一定時間事に魔力消費(微弱)することで睡眠を必要としなくなり、睡眠不足によるデメリットを無くす。ON/OFFの切り替え可能』
顔の仮面の件もあって、口封じに襲撃してくるとすれば今夜だろうな~と警戒し、わざわざ10SP消費して新しく取ったのに無駄になってしまった。
全く眠気が来ず、寝なくても頭はさえたまま活動できるけど……やっぱ普通に寝たいわ。新しい1日が来たって感じがしない。体の疲れは無いのに、数時間ずっと警戒していたんで精神的な疲れはある。あとで疲労回復に良いポーション飲もう。
昔、誰かが言った――睡眠の重要性!!
今になって思いだしたよ。何の作品のセリフだっけ?
「にしても、本当に来ないなんて……どうなってんだか」
魔王教団幹部の中でも重要人物じゃないの? あの時見た顔が素顔じゃなかったとしても、帝国の首都にいたって確定情報だけでアイツらにとって困った事態なるはずなのに……
(あの時の変な行動が理由……なのか?)
あの時――顔の仮面が水たまりに映った自分を見て急に逃げ出すという謎行動。どうにも、あれから引っ掛かるものがある。
理由をヘルプで知りたくても、案の定と言いますか魔王教団関連だったせいで『顔の仮面はzaaaaaaaaaa!!』となってしまった。
む~ん……もどかしい。
ミサイル(この場合、魔王教団のこと)がいつ自分たちに向かってくるか分からない状態というのは、ずっと続くと気が滅入っちゃう。
いっそのこと夜中に襲撃してくれれば、1人だけ生け捕りにして、そいつから情報を無理矢理にでも聞き出すなり何なりできたのに。
その日の夜が明けるまでに仕掛けてこなかったってことは、次の日の夜に来るって可能性も無いだろう。こういうのは時間との勝負だし。
(プランAは失敗した。じゃあ次はプランBか……)
プランA――『困ったことは早めに対処しましょう作戦』がダメなら、もう1つの考えていた案を実行するべきだな。
ギルドの対応次第だけどプランBは、
「ふぁあ……あ、おはようございますユキナ様」
「ん? あぁ、おはようステラ」
ステラが起きた。
眠そうに目をこすりながらあくびをする姿のカワイイこと。
「……襲撃は、なかったのですね?」
「うん。拍子抜けだよ。数時間損した」
「では、朝食を取ったあとは……」
「ステラの冒険者身分証を受け取って、2人は帝都の情報収集。そして私は――ダンジョンに行く」
プランB――それは『ダンジョンへ1人で潜って囮になろう作戦』。
不幸中の幸いと言うべきか、顔の仮面と戦ったのは私1人だ。
アイツがどこまで詳しく状況判断していたかは不明だけど、ほぼ間違いなく「赤目の白い女と戦った」という印象は刻んでいるはず。運が良ければ、ステラとリルは余り認識していないかもしれない。
なら、狙ってくるとしたら1番の対象となるのは私のはずで、その日のうちに襲って来なかったなら別の機会に襲ってくる可能性があるわけで――ダンジョンという半ば閉鎖された空間は襲うのに丁度良い環境のはずだ。
“浅瀬”とか“上層”とか呼ばれている場所では難しいだろうから、襲う可能性があるとすると人が少なくなるそれ以降になる。
だから、そこで叩く。
元々強くなるためにダンジョンへ潜るつもりだったんだ。
経験を積んで、ついでにSPも溜めれば、幹部相手でも戦闘は楽になるはず。狩人の仮面の時みたく予想外のスキルで負けそうになることだけは避けたい。1人で相手取れるぐらいの強さを手に入れなきゃ。
「無茶だけはしないで下さい……と言っても、ユキナ様が無茶をするのは確定事項でしょうし、代わりに言います。ちゃんと帰ってきて下さいね?」
「分かった。その間、ステラはリルのことをお願い」
「はい!」
よし! この話終わり! 折見て宿屋の朝食を食べましょう!
てなわけで、
「おーい、リルさんやーい! はよ起きんかーい!」
未だにお腹を出して――というか、ようやく履いてくれたパンツ一丁でぐーすかと眠っているリルを起こす。尚、次の目標はせめて肌着を着させること。野生児の世話って大変だぁ!
「にゅふふ~~、もっと肉ぅ持ってきてぇ~~~♪」
「なんちゅう寝言を言ってんのこの子は!? 昨日あんだけ食べてまだ食べ足りないって言うのか!?」
昨日の夕飯は有言実行で焼き肉をお店で食べた。
正確には焼いた肉料理が売りのお店だったんだけど……えぇ、どんどん肉が消えていきましたね。リルの腹に。お店の人が途中で「お金の方大丈夫か?」って聞いてくるぐらいにはバクバク食べてましたね。会計の時にシクシクしましたよ。
リルには自重を覚えてもらいたいなぁ……
野生児幼女に理解させんのは至難の業だろうけどな!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おはようございまーす」
「昨日の方ですね。お待ちしていました」
宿屋から出たら冒険者ギルドへ直行。
ギルドの中へ入れば昨日の表情筋の死んだ兄ちゃんがいる受付へ。
「報告は来ていませんが、何かありましたか?」
「うんにゃ。チンピラ三兄弟から特に接触はなかったよ」
昨日の冒険者ギルド内で起こったリルVSチンピラ三兄弟の一方的なバトルだけど、結果としてこちらはおとがめなしで済んだ。
他の国の冒険者ギルドとかだと事情聴取ぐらいはするけど、ちょっとマナーの悪い奴が比率的に多い帝国だとケンカはいつも起こっていることなので、“先に手を出した方が悪い”とチンピラ三兄弟は放置され、私たちは“大変だったな”で終わってしまった。
一応の注意として、報復としてチンピラ三兄弟が再度手を出してくるようなこともあるので注意することと、その場合はギルドも規定に則ってチンピラ三兄弟を厳罰に処す旨が伝えられた。
帝国のギルドとしては一々介入していたら切りが無いので、昨日のことぐらいなら被害者側(私たち3人のこと)に被害が出ず逆に加害者側が痛い目に遭ったなら、それで終わりとしたいらしい。まぁ、要注意人物としてチンピラ三兄弟はギルドのブラックリストに載ったので、次はないとのことだが。
閑話休題。
「それでは、こちらがステラ様の冒険者身分証になります。お確かめを」
「は、はい!」
ステラが冒険者身分証となる魔道具を受け取る。
これでステラも冒険者の仲間入りだ。
「これがユキナ様も持っている冒険者身分証なのですね」
「これが、まどーぐってやつか? リルも欲しいなー」
「リルは推薦が無ければ2年後じゃないとダメだから。……ステラ、その魔石の部分に触れてみな。ステラのステータス――現在のステラが持ってる称号やスキルが表示されるから」
「ここの部分ですね。そういえば、事前にユキナ様から聞いた話だと許可した人にも私のステータスを見ることができるのですよね? よろしければユキナ様も見てくれませんか?」
「いいの? じゃあ遠慮無く。リルは……あー」
「? なんだ?」
キョトンとした顔をしているリル。
ダメだこりゃ。見せても意味ねーや。
つーことで、見せて貰ったステラのステータスがこちら!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◦ステラ ◦13歳
◦発行:ガザルゾア帝国 ◦Fランク冒険者
〔称号〕
救世の聖女、生還者、白の加護を受けし者、英雄の仲間、森の守護者
〔スキル〕
【魔法スキル】
光系魔法LV.6、水系魔法LV.1、風系魔法LV.1、土系魔法LV.2
【ユニークスキル】
魂魄干渉、慈愛の加護、浄化の舞、リジェネ、恵みの雨、豊穣たる大地、友好
【スキル】
集中、祈り、精神安定、魔力制御、回復量上昇(中)、料理人、観察、速度上昇LV.1
〔装備〕
聖女の衣(1式)、祝福の十字架、女神のグリモア
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何この私より聖女らしい称号とスキル構成?
ステラも把握できていたスキル以外に把握できていなかったスキルもあるけど……これだけ見てもめっちゃ聖女やん。
称号とか『救世の聖女』だぞ? どこぞの『爆走聖女』と大違いだ。
(あ、そういえば最近私のステータスって見てないや)
大体のモノは把握しているんで必要なかったんだけど、この機会に見ておこう。
で、表示されたのが――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◦ユキナ=ナガセ(永瀬雪菜) ◦14歳?
◦発行:レーヴァテイン王国 ◦Dランク冒険者
〔称号〕
異世界転移者・神の加護を持つ者・永遠たる白の少女・幸運が仕事しない哀れな少女、真・聖女、白の殺戮者、メメリス喰らい、無自覚の英雄、討伐(雷の仮面)、限界を超えし者、絆の救世主、神々に気に入れられた者、爆走聖女、ヤケクソ聖女、天空を駆ける者、真の英雄、森林破壊者、森の守護者、討伐(狩人の仮面)、
〔スキル〕
【EXスキル】
ヘルプ、SPマスター、SP取得、不老
【固有スキル】
生存本能、逃げ足、幸運(大)、白の加護
【魔法スキル】
炎系魔法LV.6、水系魔法LV.3、風系魔法LV.6、土系魔法LV.4、光系魔法LV.7(限界)、時空系魔法LV.2
【ユニークスキル】
常時防御力アップ(極大)、状態異常完全耐性、闇系魔法無効、地味な嫌がらせ呪い、アンロック、バリアー、魔力最大値増加(フェイズ3)、限定・超思考速度上昇、幻影想造、マルチプル
【戦技スキル】
紅蓮装甲激突(小)、旋風斬(小)、閃光槍(小)、闘気重撃(小)
【スキル】
アイテムボックス(大)、遠見(中)、探知(大)、精神耐性(中)、耳栓(大)、風系魔法耐性(大)、聴覚強化、内臓強化、心拍安定、精神安定、精神破壊耐性、睡眠無効化、思考加速、演算処理、危機察知、直感、魔力制御、想像反映(小)、隠密(大)、気配遮断、跳躍、無音、防御貫通、威圧(小)、装着、力場発生、根性、マップ、激怒、行動速度上昇(小)、テレパシー、罠作成、呼吸法、操り人形、黄金料理人、攻撃力上昇LV.4、速度上昇LV.5、聖獣言語理解
〔装備〕
賢者のローブ、魔力感知ペンダント、神鳥ヴァルクスの長杖、炎獄のハルバード、???
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
いや、めっさ多いな!?
スキルが増えすぎてゴチャゴチャしてきた。明らかに異常な量だよな。信頼できる人以外には見せられないよ……
――って、アレ? 称号に見覚えのないのが……?
『〈称号:ヤケクソ聖女〉……聖女でありながら四面楚歌に陥り、どうしようもなくなってしまった者に贈られた称号。ネガティブな思考になりやすい状況の時、ポジティブになる。強く生きて下さい』
「クソがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
持っていた自分の冒険者身分証を床に叩き付ける。
破壊する気持ちで踏みつけようとする私。
必死で羽交い締めにして止めるステラ。
何がどうなってるのか理解していないリル。
相変わらず無表情の受付の兄ちゃん。
場は一瞬で混沌(カオス)と化した。
また地雷称号が増えたよ!! 神は死んだ!!
それから1時間後。
ようやく落ち着いた私はガザルゾア帝国内にあるダンジョンの1つ『帝都ダンジョン』へと向かった。
次回、ついにダンジョンへ!
主人公初のダンジョン探索――雪菜の視点で書くか、敢えて第3者の視点で書くか悩んでいます。前者と後者で内面がかなり違ってきますから。




